住民税非課税世帯への5万円給付は体系的な問題を隠蔽 日本人専門家の見解

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住民税非課税世帯への5万円給付 は体系的な問題を隠蔽 日本人専門家の見解 - Sputnik 日本, 1920, 20.09.2022
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現在、進行中の物価高騰で多くの日本人の生活は逼迫している。これに対する対策として、日本政府は低所得者である住民税非課税世帯への5万円給付を決定したが、国民の多くはこの決定に不満を訴えている。なぜこの措置が国民に受け入れられないのだろうか。スプートニクはこの問題について、 一橋大学大学院経済学研究科の佐藤 主光教授にお話を伺った。
佐藤 主光教授は、給付の対象者が本当の意味で所得の低い人とは決して言い切ることができない点が今回の措置の一番の問題だと考えている。
佐藤教授:「所得税の非課税世帯は所得が低いから非課税になっています。だから今回の給付は低所得者が対象になる、というのは事実ですが、ここで注意すべきなのは、非課税なのは『住民税』であって『所得税』ではないことです。住民税は、家族がいれば非課税の対象になりえる。でも、若者で単身だと、年収200万程度であまり稼ぎながくても、扶養者がいないために住民税を払っており、これで非課税世帯にはならないため、今回の給付は受けられない。住民税は大した額ではなくても、1円でも払っていれば今回、給付の対象にはならない。このため、本当に所得の低い人が含まれているかというと、疑問符がつきます」
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もう一つの問題は高齢者絡み

佐藤教授:「非課税世帯の半分以上は高齢者です。理由は簡単で、高齢者は基本的には年金しか収入がなく、年金額はたかが知れているので、大体が非課税世帯になってしまう。ただ、今、高齢者65歳以上は平均で2000万円以上の現金預金があるといわれおり、資産はかなり持っている。どんなに高額資産を持っていても普通の年金収入だけで暮らしていれば、非課税対象になる。こんな人たちは果たして本当に困っているのかと言われると、どうなんだ?ということになるんですね。」
このことから、「住民税の非課税世帯」が果たして本当に今、生活に困っている人と、困っていない人の線引きになっているかは曖昧になってしまう。
佐藤教授:「本当は、高齢者の場合は金融機関の資産額も考慮に入れて給付をする、しないを判断すればいいんですが、日本はマイナンバーによる金融資産の把握ができていないので、すごく難しい。さらに、所得の低い人達もの中にもいろんな人がいるのに、政府は納税しているか、否かの判断しかできず、なぜ所得が低いのかはちゃんとわからない。このため結果としては、「住民税の非課税世帯かどうか」という、非常に大雑把な基準しか使うことができない。」
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スプートニク:「より明確な基準はないんですか?」
佐藤教授:「ありません。だから、2年前の給付の際は、みんなが文句を言うので一律10万円を配ってしまいましたよね。今は、非常に極端なことしかできなくて、10万円をみんなに配るか、それとも、非課税世帯という大雑把な基準で配るかという方法しかないんです。児童を抱える世帯に5万円配ったことがありましたが、あれが実現したのは児童手当は把握されているので、それに上乗せしたわけです。実際にはなくなりましたが、一度政府が5000円を年金生活者に配ろうとしたことがあって、これもやろうと思えばできる。だって年金は実際、政府が配っているんですから。
今ある仕組み、ないしは、今ある非課税世帯か否かという情報を使って給付の基準を決めることはできるけれど、これはおそらく経済の実態には適合していない。本当はコロナが始まって、もう3年がたっているわけだから、政府はこの間に国民の所得の把握とか、金融資産にすべてマイナンバーを付して、実態把握をすべきだったわけです。今回は間に合いません。でもこれをやらないと同じことの繰り返しになってしまう。これ、欧米では事情が違って、彼らは国民の所得は完全に、また金融資産、金融所得はある程度まで把握しているので、それに基づいて満額支給、上限を設けるなどができる。日本の場合は極端で、物品税で1円でも払うと5万円もらえなくなってしまう。例えば、課税世帯であっても所得が低い場合は少しずつ減らしていくという措置もありうるんですが、日本はそれもできていない。所得の低い人の所得情報がちゃんとつかめていないわけです」
スプートニク:「もともとのシステムを変える問題になりますか?」
佐藤教授:「そうですね。今回は他に基準がないから仕方ないといわれればそれまでなんですが、これを機会に改善し、しかるべきシステムを作っていかねばなりません。」
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