https://sputniknews.jp/20221213/14218735.html
【解説】コソボでの新たな挑発行為と緊張激化 今、現地で何が起きているのか?
【解説】コソボでの新たな挑発行為と緊張激化 今、現地で何が起きているのか?
Sputnik 日本
2008年にアルバニア当局がセルビアからの独立を一方的に宣言したコソボで、先週末、また新たな緊張事態が発生した。セルビアとアルバニア両政府は互いに挑発を非難し、国際社会からの支援を求めている。セルビア国防省はコソボに軍事部隊を派遣する用意があるという。この地域の現状について、スプートニクの記事をお読みください。 2022年12月13日, Sputnik 日本
2022-12-13T07:00+0900
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一連の挑発行為12月8日、自称コソボ共和国の税関は、南西部のヴェリカ・ホチャ村にあるセルビアで最も古いワイン生産者の1つが醸造した4万2000リットル分のワインを没収した。税関側は、新型コロナウイルスのパンデミックの期間中に、生産者の法人活動が凍結されたためだと説明している。12月8日の朝、コソボ警察の特別部隊「ROSU」の戦闘員がヴェリカ・ホチャ村に到着した。現場のワイナリーの前には地元のセルビア人が集まり、ワイナリーオーナーの息子ミラン氏は、特別部隊がワインを押収したら自殺すると発言して脅した。オーナーのスルジャン・ペトロヴィッチ氏は、集まったセルビア人は警察に対して受動的な抵抗を行うと述べた。数時間後、「税関」の職員がタンクをワインセラーに運びこんだ。そして、ワインがオーナーの元に返却されても消費できないように、あらゆる種類のすべてのワインをタンクに注ぎ込み、ペトロヴィッチ氏が製造したワインを実質的にダメにしたという。その前日の7日、KFOR(コソボ治安維持部隊のこと。コソボの安全保障を担当する北大西洋条約機構「NATO」主導の国際軍)のオフロード車2台、コソボ北部のレポサビッチ村にあるセルビア人向けの幼稚園の中庭に「たまたま」駐車する出来事が発生し、子どもたちと保護者を不安にさせた。そして8日には、特別部隊「ROSU」の装甲車がその場所で駐車する事態となった。緊張高まる一週間12月10日、コソボ・アルバニア治安部隊が元セルビア人警察官デヤン・パンチッチ氏(56)をテロの疑いでコソボで拘束し、セルビア人らはコソボと中央セルビアの行政線上の道路や検問所を封鎖する事態が発生した。この封鎖は、コソボのセルビア人らが、パンチッチ氏が自称コソボ共和国の司法当局があるプリシュティナへ連行されるのを阻止するために行なった。この後、EULEX(欧州連合「EU」によってコソボに派遣された支援ミッション)とKFORが封鎖エリアに配備された。メディアは、インターネットや携帯電話の通信が中断していると報じた。パンチッチ氏が拘束されたのは、ヤリネ検問所。セルビア中部から入国する際に拘束されたという。これよりも前の11月、パンチッチ氏は、セルビア人警察の同僚とともにコソボ北部(セルビア)のコソボ・アルバニア人内務省事務所を辞職している。セルビア当局は、この拘束は政治的な動機によるものだと主張している。セルビアは軍隊派遣を望むその後、セルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領は、セルビア政府がコソボにいる自国の住民を保護するため、「国連安保理決議1244」で認められているコソボとメトヒヤ(コソボ南西部)へのセルビア警察と軍隊の派遣をNATO派遣団司令部に正式に要請すると発表した。セルビア政府は1999年に自国南部の自治権を失って以降、こういった承認を要求することを義務づけている。このブチッチ大統領の計画に対して、ドイツのベアボック外相から国際的な反応が示された。ベルボック外相は10日、セルビアの「最近のレトリック」を非難し、セルビア軍をコソボに派遣する提案は「全く受け入れられない」と述べたのだった。これに対し、セルビアのアナ・ブルナビッチ首相は、コソボ北部の状況に対するドイツの立場、特にベアボック外相の発言内容は不条理だと述べた。また、ブルナビッチ首相は、主要7カ国(G7)の外相らが5月の共同声明で「世界(リビア、シリア、イエメン、ソマリアなど)のあらゆる問題や危機」に対処する際に国連安保理決議を遵守するよう求めたことを指摘している。水力発電所への襲撃とセルビアの国家安全保障会議の会合この間にもう1つの事件が発生した。なお、これはパンチチ元警官の拘束とは直接関係はない。11日、ROSUはガジボダ水力発電所の貯水湖の最も重要なダムの施設へ侵入し、占領した。ROSUは装甲車両でダムの施設に侵入、建物からセルビア国旗を撤去して引き裂いた。また水位を測定していた警備員を見つけて施設から追い出した。ベオグラードにおける緊張の高まりを受け、ヴチッチ大統領は11日、国家安全保障会議の会合を開いた。同会合は、自称コソボ共和国のクルティ首相がコソボ北部の道路からコソボのセルビア人のバリケードを撤去するようKFORに指示し、NATO司令部が要請を拒否した場合にはコソボの治安部隊が自ら作戦を実施する用意があると脅した後、招集された。会合後にヴチッチ氏は、地域における緊張の高まりの責任はコソボのセルビア人にあるのではないと指摘し、11日は国家元首として最も大変な日となったと表明した。同氏は、平和と平静を維持し、挑発に屈しないよう同胞に呼びかけ、コソボのアルバニア人がセルビア人を非難するために国際ミッションの職員を標的とした襲撃を準備していると警告した。不可解な爆発、封鎖の継続12日現在、地域の状況は平和が保たれているものの、緊迫している。12日にかけての深夜には、ルダラ町で発砲音が聞こえたが、依然として状況は不明。コソヴスカ・ミトロヴィツァ町では爆発音が2 回聞こえ、未明にはその近郊で別の爆発音が聞こえたが、これらが爆発装置だったのか、それとも火工品だったのかどうかはわかっていない。クルティ首相は12日にかけての深夜、ROSUが使用している内務省のベルヴェデーレ基地を訪れた。セルビアの学校は12日から休校となっている。現在、コソボのサーバーはコソボ警察によってブロックされている。セルビアのミロシュ・ヴチェヴィッチ国防相は12日、同国南部における緊張の高まりを背景に、セルビアはコソボに兵士を派遣する用意があるが、まずは平和や対話を支持しており、政治的合意に達するためにあらゆる努力をすると表明した。
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【解説】コソボでの新たな挑発行為と緊張激化 今、現地で何が起きているのか?
2022年12月13日, 07:00 (更新: 2022年12月13日, 16:57) 2008年にアルバニア当局がセルビアからの独立を一方的に宣言したコソボで、先週末、また新たな緊張事態が発生した。セルビアとアルバニア両政府は互いに挑発を非難し、国際社会からの支援を求めている。セルビア国防省はコソボに軍事部隊を派遣する用意があるという。この地域の現状について、スプートニクの記事をお読みください。
12月8日、自称コソボ共和国の税関は、南西部のヴェリカ・ホチャ村にあるセルビアで最も古いワイン生産者の1つが醸造した4万2000リットル分のワインを没収した。税関側は、新型コロナウイルスのパンデミックの期間中に、生産者の法人活動が凍結されたためだと説明している。
12月8日の朝、コソボ警察の特別部隊「ROSU」の戦闘員がヴェリカ・ホチャ村に到着した。現場のワイナリーの前には地元のセルビア人が集まり、ワイナリーオーナーの息子ミラン氏は、特別部隊がワインを押収したら自殺すると発言して脅した。オーナーのスルジャン・ペトロヴィッチ氏は、集まったセルビア人は警察に対して受動的な抵抗を行うと述べた。数時間後、「税関」の職員がタンクをワインセラーに運びこんだ。そして、ワインがオーナーの元に返却されても消費できないように、あらゆる種類のすべてのワインをタンクに注ぎ込み、ペトロヴィッチ氏が製造したワインを実質的にダメにしたという。
その前日の7日、KFOR(コソボ治安維持部隊のこと。コソボの安全保障を担当する北大西洋条約機構「NATO」主導の国際軍)のオフロード車2台、コソボ北部のレポサビッチ村にあるセルビア人向けの幼稚園の中庭に「たまたま」駐車する出来事が発生し、子どもたちと保護者を不安にさせた。そして8日には、特別部隊「ROSU」の装甲車がその場所で駐車する事態となった。
12月10日、コソボ・アルバニア治安部隊が元セルビア人警察官デヤン・パンチッチ氏(56)をテロの疑いでコソボで拘束し、セルビア人らはコソボと中央セルビアの行政線上の道路や検問所を封鎖する事態が発生した。この封鎖は、コソボのセルビア人らが、パンチッチ氏が自称コソボ共和国の司法当局があるプリシュティナへ連行されるのを阻止するために行なった。
この後、EULEX(欧州連合「EU」によってコソボに派遣された支援ミッション)とKFORが封鎖エリアに配備された。メディアは、インターネットや携帯電話の通信が中断していると報じた。
パンチッチ氏が拘束されたのは、ヤリネ検問所。セルビア中部から入国する際に拘束されたという。これよりも前の11月、パンチッチ氏は、セルビア人警察の同僚とともにコソボ北部(セルビア)のコソボ・アルバニア人内務省事務所を辞職している。
セルビア当局は、この拘束は政治的な動機によるものだと主張している。
その後、セルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領は、セルビア政府がコソボにいる自国の住民を保護するため、「国連安保理決議1244」で認められているコソボとメトヒヤ(コソボ南西部)へのセルビア警察と軍隊の派遣をNATO派遣団司令部に正式に要請すると発表した。セルビア政府は1999年に自国南部の自治権を失って以降、こういった承認を要求することを義務づけている。
このブチッチ大統領の計画に対して、ドイツのベアボック外相から国際的な反応が示された。ベルボック外相は10日、セルビアの「最近のレトリック」を非難し、セルビア軍をコソボに派遣する提案は「全く受け入れられない」と述べたのだった。
これに対し、セルビアのアナ・ブルナビッチ首相は、コソボ北部の状況に対するドイツの立場、特にベアボック外相の発言内容は不条理だと述べた。
また、ブルナビッチ首相は、主要7カ国(G7)の外相らが5月の共同声明で「世界(リビア、シリア、イエメン、ソマリアなど)のあらゆる問題や危機」に対処する際に国連安保理決議を遵守するよう求めたことを指摘している。
水力発電所への襲撃とセルビアの国家安全保障会議の会合
この間にもう1つの事件が発生した。なお、これはパンチチ元警官の拘束とは直接関係はない。11日、ROSUはガジボダ水力発電所の貯水湖の最も重要なダムの施設へ侵入し、占領した。ROSUは装甲車両でダムの施設に侵入、建物からセルビア国旗を撤去して引き裂いた。また水位を測定していた警備員を見つけて施設から追い出した。
ベオグラードにおける緊張の高まりを受け、ヴチッチ大統領は11日、国家安全保障会議の会合を開いた。同会合は、自称コソボ共和国のクルティ首相がコソボ北部の道路からコソボのセルビア人のバリケードを撤去するようKFORに指示し、NATO司令部が要請を拒否した場合にはコソボの治安部隊が自ら作戦を実施する用意があると脅した後、招集された。
会合後にヴチッチ氏は、地域における緊張の高まりの責任はコソボのセルビア人にあるのではないと指摘し、11日は国家元首として最も大変な日となったと表明した。同氏は、平和と平静を維持し、挑発に屈しないよう同胞に呼びかけ、コソボのアルバニア人がセルビア人を非難するために国際ミッションの職員を標的とした襲撃を準備していると警告した。
12日現在、地域の状況は平和が保たれているものの、緊迫している。12日にかけての深夜には、ルダラ町で発砲音が聞こえたが、依然として状況は不明。コソヴスカ・ミトロヴィツァ町では爆発音が2 回聞こえ、未明にはその近郊で別の爆発音が聞こえたが、これらが爆発装置だったのか、それとも火工品だったのかどうかはわかっていない。
クルティ首相は12日にかけての深夜、ROSUが使用している内務省のベルヴェデーレ基地を訪れた。
セルビアの学校は12日から休校となっている。現在、コソボのサーバーはコソボ警察によってブロックされている。
セルビアのミロシュ・ヴチェヴィッチ国防相は12日、同国南部における緊張の高まりを背景に、セルビアはコソボに兵士を派遣する用意があるが、まずは平和や対話を支持しており、政治的合意に達するためにあらゆる努力をすると表明した。