https://sputniknews.jp/20230310/ai-15227194.html
【解説】軍司令官の養成にAIを活用する中国
【解説】軍司令官の養成にAIを活用する中国
Sputnik 日本
中国科学院自動化研究所のファン・カイツィ教授率いる研究者グループによって開発されたAI(人工知能)AlphaWarがチューリング・テストに合格した。AlphaWarの開発者らが発表した。 2023年3月10日, Sputnik 日本
2023-03-10T18:00+0900
2023-03-10T18:00+0900
2023-03-10T18:00+0900
人工知能
軍事
中国
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/85/01/850169_0:144:2803:1721_1920x0_80_0_0_5c0b6525dd9a802c6a9e62d3341f75ad.jpg
このチューリング・テストは、人間がコンピュータと人間の両方と会話を行い、その会話の相手がどちらであるのかを特定するというものである。もしもこのテストで、コンピュータが人間だと判別された場合、コンピュータは人間の知的活動と同じように意識し、思考していると見なされる。ここで指摘しておかなければならないのは、チューリング・テストにはいろいろな種類があり、またさまざまな批判も受けているものの、現在このチューリング・テストは、AIが人間と同様に思考することができるかどうかを確かめるための主な手段となっていることである。中国の開発者らがAlphaWarを開発するにあたっては、具体的な課題があった。それは戦闘のシミュレーションである。このAIを活用したウォーゲームの中で、AlphaWarは学習能力があることを示し、またそれは中国人民解放軍司令部の優秀な軍事戦略家よりもすぐれていることが明らかになった。多くのウォーゲームの中で、コンピュータを相手に対戦した将官たちは、自分が戦っているのが人間ではなく、AIであるとはまったく気が付かなかった。このニュースはそれほど長い間、話題にはならなかった。しかし、これは米国とその同盟国、とりわけ日本にとってはよくない知らせである。ウォーゲームの欠点実はウォーゲームは200年以上にわたって活用されてきたものである。最初のウォーゲームは1812年に、プロイセンのゲオルク・レオポルト・フォン・ライスヴィッツ将校とその息子で陸軍軍人だったゲオルク・ハインリヒ・ルドルフ・フォン・ライスヴィッツが作ったクリークスシュピールである。このゲームは、後にドイツ帝国の皇帝となるヴィルヘルム王子にも報告され、まもなく、プロイセン軍の将校らに戦略や戦法を教えるために活用されるようになった。現代のさまざまなウォーゲームは兵棋演習である。演習では、参謀本部や将校のグループが地図の上で戦闘行為を行う。この兵棋演習は、司令官に戦闘の新たな方法論を学ばせたり、最高司令部の戦略的準備状況やそのレベルを評価するために行われている。ドイツ軍司令部は、1940年11月から12月にかけて、ソ連への侵攻を前に大々的な兵棋演習を実施した。そしてその結果は、「バルバロッサ作戦」の最終案でも考慮された。赤軍の司令部も1940年12月と1941年1月に、大規模な兵棋演習を行った。しかし、これらの演習は大々的な攻撃作戦の実施に向けた赤軍司令部の養成には不十分であることが判明した。これは、大祖国戦争の序盤、赤軍が大敗を喫し、退却することになった原因の一つとなった。兵棋演習は非常に有益なものである。しかし、そこには欠点がある。まず、想定される条件が実際の戦略的状況と合致していないということが多々あるということ。次に、双方の行動は往々にして激しい戦闘の展開により決定づけられるということ。3つ目に、地図上での戦闘の結果を出すにあたり、ゲームの考案者は恣意的にどちらかの側に優位性を与えているということ。そして4つ目に、兵棋演習の実施に際しては、敵の戦法を考慮に入れないことが少なからずあるということである。双方が完全に自由に行動できるという条件での、将校の訓練のためのもっとも貴重な兵棋演習が行われることは稀であった。この欠点については、ソ連の軍事理論家で元上級大将のマフムート・ガレーエフも指摘している。米国とその同盟国のウォー・シミュレーション中国の軍事用AIの開発者たちは、何より、ウォーゲームにおけるこのような欠点を取り除く必要がある。中国人民解放軍の司令部はおそらく、リアルタイムで、双方が自由に行動ができるという条件下で、米国、NATO諸国とその同盟国である日本、韓国、豪州の戦略、戦法、そして兵器を使用した強い敵に対抗することを想定したゲームを作るという課題を据えたと思われる。戦法を学ぶためには、強い敵を想定し、起こりうる戦争に最大限に近い条件で演習する必要があり、そのためには、人間と同じように、あるいは人間よりもうまく戦うことができるようなAIを作り出す必要がある。しかし、この課題はまだ遂行されていないと思われる。今後、中国人民解放軍の司令部は、知っている限りの米国の戦略や戦法、そして米国がこれまでに行った戦いについての情報、兵器や設備に関するすべてをAIに学ばせていくことになる。そして米国および日本を含むその同盟国の軍司令部の素晴らしいシミュレーターになるのである。AIはすべての戦闘地域について、その特徴を掴みながら、詳細に学習する。このようにして、AlphaWarは陸上でも、海上でも、上空でも、米国とその同盟国が行ったのと同様の戦いを行うことができるようになる。その後、中国人民解放軍司令部は、AIを活用した自国の将官らとの戦いを重ね、将官らは、実際の戦況とほとんど変わらない条件下で、敵と戦う可能性を手にするのである。これは、中国の大将らが疲労困憊で倒れてしまうような、かなり長期的で消耗させるコンピュータの戦いになるかもしれない。戦争というのは、極限の緊張を強いられるものである。このような演習で中国人民解放軍の司令部は何を得ることができるのか。それはまず、将官の中から、もっとも優れた才能のある人物が選び、司令官に抜擢することができるということ。敗北をもたらすような将官は必要ないのである。次に、中国の将官たちは、ウォーゲームを通して、戦闘の進め方を改善し、勝利のための新たな手法を編み出すことができるということ。戦闘の結果を見て、どのような戦法が効果的で、どのような戦法が効果的でないのかが分かるのである。第3に、米国やその同盟国との戦争に関するあらゆる方法を試してみることができるということ。敗北につながるような戦い方は除外し、勝利に導くようなやり方を取捨選択し、それをより良いものにすることができる。そして4つ目に、AIというのは、自らの失敗から学習することができるため、インプットされた米国の戦略や戦法の情報をさらに改良し、発展させることもできるということ。AIは、配備されたばかりの新しい兵器とも戦うことができる。言い換えれば、未来の戦争を想定して戦い、自らの手法を練り上げ、この未来の戦争にどのような兵器が必要なのかを理解することができるのである。つまり、このプログラムは、中国軍司令部が、想定される敵よりも質的に優勢に立つことを目的にしたものであることは明らかである。もし中国の将官らがコンピュータ上の戦いで最強の敵に勝利することを学べば、米国、日本、韓国、そしてこのようなシミュレーションを経験していないすべての将官をより容易に打ち負かすことになるだろう。
https://sputniknews.jp/20170717/3891889.html
https://sputniknews.jp/20230306/15184456.html
中国
Sputnik 日本
feedback.jp@sputniknews.com
+74956456601
MIA „Rossiya Segodnya“
2023
ドミトリー ヴェルホトゥロフ
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/298/37/2983710_0:0:539:540_100x100_80_0_0_4dac0fd790c5bc207c1346d607e1989d.jpg
ドミトリー ヴェルホトゥロフ
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/298/37/2983710_0:0:539:540_100x100_80_0_0_4dac0fd790c5bc207c1346d607e1989d.jpg
ニュース
jp_JP
Sputnik 日本
feedback.jp@sputniknews.com
+74956456601
MIA „Rossiya Segodnya“
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/85/01/850169_158:0:2646:1866_1920x0_80_0_0_e34e0572554e0d7576d60b4fb08029ec.jpgSputnik 日本
feedback.jp@sputniknews.com
+74956456601
MIA „Rossiya Segodnya“
ドミトリー ヴェルホトゥロフ
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/298/37/2983710_0:0:539:540_100x100_80_0_0_4dac0fd790c5bc207c1346d607e1989d.jpg
人工知能, 軍事, 中国
【解説】軍司令官の養成にAIを活用する中国
中国科学院自動化研究所のファン・カイツィ教授率いる研究者グループによって開発されたAI(人工知能)AlphaWarがチューリング・テストに合格した。AlphaWarの開発者らが発表した。
このチューリング・テストは、人間がコンピュータと人間の両方と会話を行い、その会話の相手がどちらであるのかを特定するというものである。もしもこのテストで、コンピュータが人間だと判別された場合、コンピュータは人間の知的活動と同じように意識し、思考していると見なされる。ここで指摘しておかなければならないのは、チューリング・テストにはいろいろな種類があり、またさまざまな批判も受けているものの、現在このチューリング・テストは、AIが人間と同様に思考することができるかどうかを確かめるための主な手段となっていることである。
中国の開発者らが
AlphaWarを開発するにあたっては、具体的な課題があった。それは戦闘のシミュレーションである。このAIを活用したウォーゲームの中で、AlphaWarは学習能力があることを示し、またそれは中国人民解放軍司令部の優秀な軍事戦略家よりもすぐれていることが明らかになった。多くのウォーゲームの中で、コンピュータを相手に対戦した将官たちは、自分が戦っているのが人間ではなく、AIであるとはまったく気が付かなかった。
このニュースはそれほど長い間、話題にはならなかった。しかし、これは米国とその同盟国、とりわけ日本にとってはよくない知らせである。
実はウォーゲームは200年以上にわたって活用されてきたものである。
最初のウォーゲームは1812年に、プロイセンのゲオルク・レオポルト・フォン・ライスヴィッツ将校とその息子で陸軍軍人だったゲオルク・ハインリヒ・ルドルフ・フォン・ライスヴィッツが作ったクリークスシュピールである。このゲームは、後にドイツ帝国の皇帝となるヴィルヘルム王子にも報告され、まもなく、プロイセン軍の将校らに戦略や戦法を教えるために活用されるようになった。
現代のさまざまなウォーゲームは兵棋演習である。演習では、参謀本部や将校のグループが地図の上で戦闘行為を行う。この兵棋演習は、司令官に戦闘の新たな方法論を学ばせたり、最高司令部の戦略的準備状況やそのレベルを評価するために行われている。
ドイツ軍司令部は、1940年11月から12月にかけて、ソ連への侵攻を前に大々的な兵棋演習を実施した。
そしてその結果は、「
バルバロッサ作戦」の最終案でも考慮された。
赤軍の司令部も1940年12月と1941年1月に、大規模な兵棋演習を行った。しかし、これらの演習は大々的な攻撃作戦の実施に向けた赤軍司令部の養成には不十分であることが判明した。これは、大祖国戦争の序盤、赤軍が大敗を喫し、退却することになった原因の一つとなった。
兵棋演習は非常に有益なものである。しかし、そこには欠点がある。
まず、想定される条件が実際の戦略的状況と合致していないということが多々あるということ。
次に、双方の行動は往々にして激しい戦闘の展開により決定づけられるということ。
3つ目に、地図上での戦闘の結果を出すにあたり、ゲームの考案者は恣意的にどちらかの側に優位性を与えているということ。
そして4つ目に、兵棋演習の実施に際しては、敵の戦法を考慮に入れないことが少なからずあるということである。
双方が完全に自由に行動できるという条件での、将校の訓練のためのもっとも貴重な兵棋演習が行われることは稀であった。この欠点については、ソ連の軍事理論家で元上級大将のマフムート・ガレーエフも指摘している。
中国の軍事用AIの開発者たちは、何より、ウォーゲームにおけるこのような欠点を取り除く必要がある。中国人民解放軍の司令部はおそらく、リアルタイムで、双方が自由に行動ができるという条件下で、米国、NATO諸国とその同盟国である日本、韓国、豪州の戦略、戦法、そして兵器を使用した強い敵に対抗することを想定したゲームを作るという課題を据えたと思われる。戦法を学ぶためには、強い敵を想定し、起こりうる戦争に最大限に近い条件で演習する必要があり、
そのためには、人間と同じように、あるいは人間よりもうまく戦うことができるようなAIを作り出す必要がある。しかし、この課題はまだ遂行されていないと思われる。
今後、中国人民解放軍の司令部は、知っている限りの米国の戦略や戦法、そして米国がこれまでに行った戦いについての情報、兵器や設備に関するすべてをAIに学ばせていくことになる。
そして米国および日本を含むその同盟国の軍司令部の素晴らしいシミュレーターになるのである。AIはすべての戦闘地域について、その特徴を掴みながら、詳細に学習する。このようにして、AlphaWarは陸上でも、海上でも、上空でも、米国とその同盟国が行ったのと同様の戦いを行うことができるようになる。その後、中国人民解放軍司令部は、AIを活用した自国の将官らとの戦いを重ね、将官らは、実際の戦況とほとんど変わらない条件下で、敵と戦う可能性を手にするのである。これは、中国の大将らが疲労困憊で倒れてしまうような、かなり長期的で消耗させるコンピュータの戦いになるかもしれない。
戦争というのは、極限の緊張を強いられるものである。
このような演習で中国人民解放軍の司令部は何を得ることができるのか。
それはまず、将官の中から、もっとも優れた才能のある人物が選び、司令官に抜擢することができるということ。敗北をもたらすような将官は必要ないのである。
次に、中国の将官たちは、ウォーゲームを通して、戦闘の進め方を改善し、勝利のための新たな手法を編み出すことができるということ。戦闘の結果を見て、どのような戦法が効果的で、どのような戦法が効果的でないのかが分かるのである。
第3に、米国やその同盟国との戦争に関するあらゆる方法を試してみることができるということ。敗北につながるような戦い方は除外し、勝利に導くようなやり方を取捨選択し、それをより良いものにすることができる。
そして4つ目に、AIというのは、自らの失敗から学習することができるため、インプットされた米国の戦略や戦法の情報をさらに改良し、発展させることもできるということ。
AIは、配備されたばかりの新しい兵器とも戦うことができる。言い換えれば、未来の戦争を想定して戦い、自らの手法を練り上げ、この未来の戦争にどのような兵器が必要なのかを理解することができるのである。つまり、このプログラムは、中国軍司令部が、想定される敵よりも質的に優勢に立つことを目的にしたものであることは明らかである。もし中国の将官らがコンピュータ上の戦いで最強の敵に勝利することを学べば、米国、日本、韓国、そしてこのようなシミュレーションを経験していないすべての将官をより容易に打ち負かすことになるだろう。