【視点】野望は控え、慎重な態度を 習近平国家主席の外交における成功を受け、失策を恐れる日本

© AFP 2023 / Kazuhiro Nogi日本と中国の旗
日本と中国の旗 - Sputnik 日本, 1920, 31.03.2023
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日本の林芳正外相が今週、中国を訪問する可能性がある。実現すれば2019年以来の訪中となる。会談では、日本企業の駐在員がスパイ容疑で中国当局に拘束された問題について話し合われる可能性がある。2014年以降、これまでに、少なくとも16人の日本人が同様の容疑で拘束され、その中には懲役12年の実刑判決を受けた者もいる。なぜ、この「スパイ容疑」問題が、日中関係において、外相の訪中を必要とするほど「熱い」ものになったのか、また今回の会談では、この問題以外にどのような問題が取り上げられるのか、「スプートニク」が取材した。

スパイ問題は単なる口実か

現在、日本政府は中国側に対し、身柄を拘束されている日本人の早期解放を求めている。これに関し、政治学者で東洋学研究者で、歴史学博士でアカデミー会員でもあるアナトーリー・コーシキン氏は、林外相の中国訪問は、今回の駐在員らの拘束だけを理由とするものではないと指摘する。
「総じて、日本政府は何より、中国政府と直接交渉を行うことが重要だと考えています。とりわけ、最近、就任した秦剛新外相との会談は重要です。それは何より、習近平国家主席が最近行ったモスクワ訪問の成果がどのようなものだったのかということを理解するためです。日本政府は、度重なる日本人の身柄拘束よりも、そのことに大きな関心を寄せています。もちろん、会談では、スパイ問題についても取り上げられるでしょう。つまり、このスパイ事件は中国訪問のための口実と説明することができます。というのも、日中間の政府高官レベルの交渉は最近、少なくなっているからです」。

中国の成功を追って

一方、ロシア科学アカデミー東洋学研究所のドミトリー・モシャコフ教授も、コーシキン氏の見解に同意し、日本政府にとって、スパイ問題は緊急会談を実施するための口実に過ぎないと述べている。モシャコフ氏は、とりわけこれは、習近平国家主席がプーチン大統領と直接会談を行い、その後、世界の主要メディアがこれをトップニュースとして取り上げたことを受けてのものだと指摘する。

「つまり、日本の外相と中国の新外相との緊急会談は、二国関係のさまざまな問題について、速やかに意見を交わすためのチャンスなのです。とくに、習近平国家主席が最近モスクワを訪問し、プーチン大統領と会談を行った後にその機会を持つことができるというのは千載一遇のチャンスです。習近平国家主席は一気に世界の政治の表舞台に躍り出ました。ですから、習近平国家主席の訪露後に行われた岸田首相のウクライナへの電撃訪問も、ここにきて岸田首相が急いでウクライナに行くことを余儀なくされたような形に見えました。おそらく、米国は、岸田首相の今回のウクライナ訪問で、習近平国家主席のモスクワ訪問によって米国が被った政治的損害を最小限に抑えることができると考えたのでしょう」。

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台湾問題をめぐる妥協は可能か?

日本は実際、現時点では、日本が懸念するあらゆる問題について慎重に注視していきたい考えである。アナトーリー・コーシキン氏は、これについて、そうした問題には、台湾問題を含め、東アジア、アジア太平洋地域全体の状況にとっての主要な問題も含まれると述べている。
「日本に対しては、間違いなく、中国共産党の党大会で述べられた立場を確認するような説明が行われるでしょう。それは、ご承知のように、台湾は中国の一部であり、これからもそうあり続けるというものです。そして早かれ遅かれ、台湾は中国の一部となるでしょう。しかも、その目的を達成するために、軍事的手段が用いられる可能性も否定できません。一方、中国側にも日本に対して提起すべき問題があります。それは何より、日本で積極的に進められている軍事化に関する問題―つまり、日本が防衛力を強化し、さまざまな種類の攻撃兵器を獲得しようとしていることについてです。日本が米国からおよそ400発の最新型「トマホーク」を調達するという事実だけを見ても、日本はもうすでにかなり前からいわゆる自衛の国という境界線を超えていることは明らかです」。
このように中国の外相が、林外相との会談を望んでいるのは、日本に対し、意見を述べる必要があると考えているからである。
「とはいえ、今回の林外相の訪中で日中関係を根本的に改善するだろうという結論を出すことはできないと思います。ただ、日本は今回の訪問で、日本外務省は、以前(2020年)、新型コロナの影響もあって実現されなかった習近平国家主席の日本訪問について、再び、話し合うことができるようになります」。
一方、両国外相は、会談で経済問題についても取り上げる可能性がある。

日本が制裁をちらつかせることはない

アナトーリー・コーシキン氏は、現在、これらの問題が取り上げられるとすれば、一定の条件下に限るとして、次のように述べている。
「もし日本側が、ロシアに対して行ったように、中国に対し、軽率に、何らかの制裁を発動した場合です。このような状況になる可能性は十分にあります。というのも、日本の外交は親米路線に基づくものだからです。そうなった場合、中国政府は制裁という言葉を用いることは許されないということを日本に理解させることになるでしょう。しかし、今回の訪中に対する日本外交の利益を考えれば、日本政府が今回の会談で度を超えた厳しい問題を取り上げることはないと思われます。なぜなら、両国の経済関係に深刻な問題を引き起こしかねないからです」。

露中の軍事協力は日本にとっての「頭痛の種」

一方、日本側には、今回の会談でどうしても取り上げざるを得ないいくつかの深刻な問題がある。

「日本は中国とロシアによる大規模な共同軍事演習に抱く深い懸念を隠そうとしていません。第一に、日本政府は中国とロシアの艦艇が日本列島周辺を航行していることを問題視しています。また中国とロシアの戦略爆撃機が、中立的な空域といえども、日本に近い場所を飛行していることから、これに懸念を示しています。この問題は日本にとってはきわめてセンシティブなものであり、今回の中国訪問で日本側がこの事実について懸念を示す可能性は十分にあります。しかし、このことを伝えたところで、中国側からは、我が身を振り返るべきだという答えが返ってくる可能性が高いでしょう。つまり、日本が最近、米国と合同でどのような軍事演習を行なっているのか思い出すべきだということです」。

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しかもコーシキン氏は、日米の軍事演習は、潜在的な同盟国を引き込んで行われているとも指摘している。
たとえば2022年11月に太平洋上で実施された「マラバール」演習には、日本と米国だけでなく、豪州とインドも参加した。
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