【人物】ロシア演劇界の巨匠フォーキン氏、舞台芸術で最も重要なことと、日本との関係について語る

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Фокин  - Sputnik 日本, 1920, 04.04.2023
サイン
サンクトペテルブルクにある国立アレクサンドリンスキー劇場の芸術監督ワレリー・フォーキン氏は、4月1日から8日まで開催されるイベント「アレクサンドリンスキー・シアター・デイズ・イン・モスクワ」のためモスクワを訪れている。フォーキン氏はロシア演劇界を代表する演出家で、2019年に日露共催で行われた「シアターオリンピックス」ではロシア側の芸術総監督として来日した。日露関係が複雑化する中、日本の演劇界についてどう思うか、話を聞いた。
日露共催のシアターオリンピックスで日本側の芸術総監督を務めたのは演出家の鈴木忠志氏だ。鈴木氏は富山県南砺市利賀村を拠点とし、劇団「SCOT」を主宰している。ロシアとの縁も深く、鈴木氏の演出による「リア王」や「エレクトラ」はロシアの劇場のレパートリーとなっている。
当時、鈴木氏はスプートニクへのインタビューの中で、自身の演劇スタイルについて「社会の変化に合わせる、というのではなく、少し予見的・予言的というか、もっと先を見据え、『こういう問題が起きるのではないか』と問題提起をしています。私は、大勢の人に支持されたいとか、利益を追求しようと思って演劇をやっているわけではなく、社会の中の問題を提供し、みんなで考えたい」と話していた。
鈴木忠志さん - Sputnik 日本, 1920, 10.06.2019
舞台芸術の祭典シアター・オリンピックス、初の日露共催!演出家・鈴木忠志さんに聞く創作の源とは
フォーキン氏もまた、近い未来の諸問題を予言するひとりだ。フォーキン氏がおよそ20年ぶりにメガホンを取り、昨年公開された映画「ペトロポリス」は、大国の利害が対立する近未来を表したとして驚きを呼んだ。フォーキン氏は、鈴木氏と自身との共通性について次のように話している。

「鈴木さんの問題提起は演劇人として非常に正しいし、全面的に賛成です。鈴木さんとはこれからハンガリー・ブタペストでお会いする予定で、それが問題なくうまくいくことを願っています。4月10日から15日にかけてシアター・オリンピックスのオープニングが行われます。鈴木さんは17日に、2本の上演作品とともにハンガリーを訪れるはずです。私の演劇もその日上演されます。以前に会ってからだいぶ経ってしまいましたから、そこで皆で一堂に会すことを楽しみにしています。

私は、鈴木さんがいつも自身の作品創造の中で、非常に重要なこと、私たちの人生や社会、生活上の問題について問いかけようとしているのを見ています。それはロシアや日本だけでなくて世界的に起こっている共通の諸問題です。私は、これは正しいアプローチであると思いますし、いつもそれについて考えるよう努めています。演劇を上演すると、それが結果的に予言になったり、現実の事象に先駆けることがたまにあります。私が思うに最も重要なのは、ドラマ劇場、舞台芸術というのは、社会がどんな状態にあったとしても、人について語ることです。つまりは、人の成り立ち、人が良い方へ変わろうとすること、人格の形成といったことです。これらは常にドラマ劇場のテーマであり続けました。鈴木さんは、例えばリア王など古典的な作品を扱う時でも、この点を重視していますし、私もそうあろうと努力しています」

フォーキン氏
アレクサンドリンスキー劇場の芸術監督
2021年11月、フォーキン氏は舞台芸術を通じた日本・ロシア間の交流の促進に寄与した功績で、旭日中綬章を受章した。時期的にはその直後から、ウクライナ危機により日露関係が急速に冷え込んだ。しかし、舞台芸術の祭典に向けた国際協力は続けることができた。

「鈴木さんはシアター・オリンピックスの創設者の一人ですし、私も委員会のメンバーです。このイベントがブタペストで開催できるように共に尽力しました。私はこれを、我々の共同プロジェクトであり、協力関係だと考えています。ただ会うだけではなくて、他にも委員会の座長であるギリシャの演劇人や、アメリカの演出家など、他国のメンバーも一緒に、劇場が国際関係の中で今後も存在していけるように力を合わせています」

フォーキン氏
アレクサンドリンスキー劇場の芸術監督
フォーキン氏は現在77歳で、後進の育成にも力を入れている。利賀村で作品を上演したニコライ・ロシン氏(アレクサンドリンスキー劇場メイン監督・劇作家)をはじめ、より若い演劇人も日本との協力を惜しまない。

「後継者のことは問題だと思っていません。若い人たちも、喜んで日本の皆さんと協力し、一緒に働くでしょう。状況が変われば、全てはうまくいくと思います」

フォーキン氏
アレクサンドリンスキー劇場の芸術監督
2023年のモスクワにおけるアレクサンドリンスキー・シアター・デイズは、2段階に分けて開催される。4月にはチェーホフ記念モスクワ芸術劇場の舞台で、創作経験も特徴も全く異なる3人の演出家の新作が上演される。ツアー中の公演と並行して、演劇芸術の普及とプロの俳優のスキルアップを目的とした教育プログラム、クリエイティブミーティング、マスタークラスなどが行われる。6月にはボリショイ劇場の舞台で、ロシアにおける歴史の転換点となったわずか1年の出来事を取り上げた大規模プロジェクト「1881」が上演される。
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