【解説】日本人の南クリル諸島ビザなし訪問の終焉 訪問成立までの経緯と政治の日露交流への影響

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日本とロシア - Sputnik 日本, 1920, 12.04.2023
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日露の間では長期にわたり、南クリル諸島と日本の住民のビザなし交流が行われてきた。こうした交流プログラムのおかげで日本人はビザを申請せずに南クリル諸島を訪問し、イトゥルップ(択捉)、クナシル(国後)、シコタン(色丹)諸島の住民たちも日本に来ることができた。ところが欧米の始めた対露制裁に日本も迎合した後、ロシアはビザなし交流プログラムの効力を停止する決定を下した。ビザなし交流プログラムが形成された経緯や現状について、スプートニクがまとめた。

ビザなし交流はどう始まったのか

南クリル諸島(北方四島)との交流は1991年、ハボマイ(歯舞)、イトゥルップ、クナシル、シコタンの各島に住むロシア人と日本人の交流を実現しようソ連側からの提案で開始。翌1992年からは、パスポート不要、ビザなし体制での交流が開始された。
この交流は、北方領土問題の解決をはじめとする、日露平和条約の締結に絡む条件整備を目的としていた。交流開始から20年以上の間に日本人は約1万4000人がクリル諸島を訪問し、ロシアからは約1万人が日本での受け入れプログラムに参加した。
スプートニクは、ロシア連邦クリル諸島と日本との間にビザなし交流プログラムが成立するまでの経過を年表で表した。
1989年  日本人のクリル諸島の訪問にソ連はビザを要求している現状を受け、日本政府は9月に「日本人の千島列島(クリル諸島)への入国手続きの変更手続きを実施する」との声明を発表し、そのビザ申請が必要である間はソ連の入国ビザで島に渡航しないよう国民に呼びかけた。
1991 年  ソ連のゴルバチョフ大統領が4月に来日し、ビザなし訪問プログラムの拡大を提案。これによりクリル諸島を訪問する日本人には入国手続きの簡略化が採用された。10月10日、ビザ申請を行わず、身分証明書を携帯するのみで相互訪問ができる計画が採択された。
1998年 ビザなし訪問の対象者リストを地震学や環境学のモニタリング、日本の戦前の建造物の調査などを目的とする文化人、科学者などにも拡大。
1999年 9月11日、モスクワ宣言の採択により、訪問対象者のリストが日本人の元島民とその家族にも拡大。
2017年9月、日本からクリル諸島へのチャーター便が就航。
ウクライナでの特殊軍事作戦が始まる前の2年間はコロナウイルスのパンデミックのために交流は行われなかった。
2022年は、日露間の関係や政治コンタクトには困難な年となった。2月24日、ロシアがウクライナで特殊軍事作戦を始めると、欧米諸国は対露制裁を開始し、日本もそれに加わった。ロシア政府はこれに対処し、3月7日、政府が承認の非友好国リストに日本も追加された。
過去のビザなし交流出迎えの様子 - Sputnik 日本, 1920, 12.04.2023
【視点】ビザなし再開は日露関係最優先事項の一つ? 根室在住・民間外交の担い手に聞く、四島交流への想い
2022年3月21日、ロシア外務省は、ウクライナでの特殊作戦に関連して日本が一方的な制裁を発動したことを理由に日本との平和条約締結交渉の中止を発表。
報復として、ロシアは南クリル諸島への日本人のビザなし渡航を停止し、同諸島での日本との共同経済活動に関する対話から離脱した他、さらに日本が求めていた黒海経済協力機構(BSEC)の分野別対話パートナーとしての地位の延長を阻止した。
2022年3月31日、日本政府は今年度の外交青書で、2003年以来初めて「北方領土」をロシアによる「不法占拠」と公式に明記。これに対し、ロシア側は日本京のこうした行動は、すでに緊張状態にある両国関係を悪化させると指摘した。
2022年 9月5日、ロシア政府は日本と締結していた相互訪問および日本人の元島民とその家族のクナシル島、イトゥルプ島、小クリル海嶺への訪問促進に関する協定の失効を決定。この文書は1999年から発効していた。
翌9月6日、日本はクリル諸島への訪問促進に関する協定からの離脱に抗議した。松野博一官房長官は、日本側はこれを極めて不当な行為とみなしていると批判した。

現在の状況

2023年3月14日、日本の林外相は、ロシアとのビザなし交流プログラム再開の問題を提起し、「北方四島への墓参は今後の日露関係の中でも最優先事項のひとつ」と指摘した。

「北方墓参をはじめとする四島交流事業等の再開は今後の日露関係の中でも最優先事項のひとつです。一日も早く再開できるような状況となることを強く期待しておりまして、北方墓参をはじめとした事業について、相互の大使館等を通じて、外交上のやり取りを行っています」

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