【視点】金の価格が上昇 世界危機は繰り返されるのか

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金 - Sputnik 日本, 1920, 14.04.2023
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世界市場における金の価格は、ここ2年間で1オンスあたり1800ドル(約23万8400円)前後で推移してきた。しかし、日本では現在、3日連続で金の価格は過去最高を更新し、3月以降力強い伸びを続けている。スプートニクは今回、金価格の上昇は、日本と世界の両方の金融市場の安定性に対する投資家の懸念と関係があるのかどうか、米国での銀行破綻や原油価格の上昇が、現在の金価格上昇にどのような役割を果たしているのかについて専門家に尋ねた。
これに対してロシアの専門家は、比較的楽観的な予想と、より憂慮すべき予測の両方を示している。
投資企業「Instant Invest」の金融市場・マクロ経済分析担当ディレクターであるアレクサンドル・ティモフェエフ氏によれば、現在致命的なことは起きていないが、深刻な懸念はまだ残っている。

「金は最も独立した信頼できる金融商品の一つです。金の強みは、市場が下落し、世界のすべてがうまくいかないと予想されるときに、投資家を守る資産であるということです。そして今が、まさにその時なのです。世界経済は減速し、景気後退の兆しがあり、さらに軍事紛争も起きています。これに関連して、経済の急成長が期待できない『失われた10年』の到来が予測されています。こうした懸念を背景に、金の価格は上昇しているのです。そして、銀行破綻や原油価格の高騰は、世界情勢を反映したものです。原油価格が100ドル(約1万3250円)を超える場合、通常は経済成長が見込まれることを意味します。そして、人々が積極的に金を買うということは、世界経済の一般的な状態に対する懸念が高まっていることを示しています。しかし、それは崩壊の事実でも、最も悲観的な展開の兆候でもありません。世界経済には、成長と後退のサイクルがあるだけです。金価格の上昇は、現在は停滞期にあることを示しているにすぎません。しかし、これを根拠に破滅的な予測をするのは明らかに時期尚早です」

アレクサンドル・ティモフェエフ
投資企業「Instant Invest」の金融市場・マクロ経済分析担当ディレクター
しかし、これは投資家が真に懸念していることであり、近い将来にポジティブなことが起こるとは思っていないことを明確に示している、とティモフェエフ氏は指摘している。
いずれにせよ、デンマークのサクソバンクの予想によれば、2023年に金の価値が1トロイオンスあたり3000ドル(約39万7600円)に達する可能性がある。 今日では、「金の潜在能力を抑える鍵は、インフレが一時的なものになるという市場の誤ったコンセンサスの賭けだった」という指摘があるためだ。つまり、2023年とは、インフレが今後続いていくことを市場が発見する年なのだ。
金の延べ棒 - Sputnik 日本, 1920, 12.04.2023
日本の金価格、2日連続で過去最高更新 1グラム=9535円 背景には何が
しかし、多くのアナリストは、このようなシナリオ(金価格の急上昇)は、予期せぬショックが発生した場合にのみ実現するとみている。つまり、「ブラックスワン」と呼ばれる、世界経済や株式市場の制御不能な崩壊、大規模な軍事衝突など、市場や社会に極めて大きな衝撃が起きた場合だという。
ならば、サクソバンクが予測するように、2023年に金価格の上昇を引き起こす可能性のある兆候というのは目に見えたものなのだろうか?
この質問に対し、ティモフェエフ氏は次のように述べている。
「全世界の取引に基づいた予測もあれば、先見性のある予測もあります。つまり、起こりうるトレンドを予想しながらも、それが実現する保証はありません。したがって、サクソバンクの分析は、そのようなシナリオがあり得るということを表しているに過ぎません」
アレクサンドル・ティモフェエフ
投資企業「Instant Invest」の金融市場・マクロ経済分析担当ディレクター
これはサクソバンク自体が描く今後1年間の「とんでもない」予測の1つであり、同行は政策当局が完全な防衛態勢に移行することになるとの見方を示している。ブルームバークのコラムニストであるメリン・サマセット・ウェブ氏がポッドキャスト(Merryn Talks Money)で最近語ったところによると、サクソバンクのスティーン・ヤコブソン最高投資責任者は、突飛ではない予測もあると主張している。また、ヤコブソン氏は、中国とインドがドルや国際通貨基金(IMF)を見捨てることはないと見ている一方で、「根本的なミクロのトレンドは実際に起こっている」と述べている。
しかし、2023年には、米国の20の大手銀行の1つで、テクノロジー企業へのサービスを専門に行っていたシリコンバレー銀行(SVB)があっという間に破綻した。そして、この出来事は、世界が2008年に直面した新たな世界危機に対する恐怖を呼び起こした。しかし、ティモフェエフ氏は、新たな銀行危機の規模は、2008年の危機と全く比較にならないとみている。

ウクライナ紛争の規模も局地的です。つまり、そういったことは起こりうるリスクにのみ関係しており、世界経済における実際の大きな損失にはなりません。したがって、この軍事紛争が深刻な世界経済危機を誘発することはありません。また、世界経済はパンデミックの影響にうまく対処しています。日本で金価格の上昇傾向が起きていることについては、日銀の保守主義によるものであり、金は良好な保護準備金なのです」

アレクサンドル・ティモフェエフ
投資企業「Instant Invest」の金融市場・マクロ経済分析担当ディレクター
経済危機 - Sputnik 日本, 1920, 10.04.2023
【視点】世界経済危機はいつまで続く? ロシア人専門家の見解
ロシア誌「エキスパート」の金融アナリストであるアンナ・カラリョワ氏も、状況を誇張する気はないものの、どんな展開も起こり得ると指摘している。
「金1オンスの価格が3000ドル(約39万7650円)というのは衝撃的な予測なので、この実現は起こり得ないでしょう。これが実現するには、膨大なインフレから現物の金に対する爆発的な需要まで、あまりにも多くの要因が重なり合わなければなりません。遠い将来のことを考えればあり得ますが」
アンナ・カラリョワ
ロシア誌「エキスパート」の金融アナリスト
金の価格は2008年の世界金融危機を脱する際に3倍近く上昇し、今後数年間のうちに、このシナリオが繰り返される可能性を確実に排除することはできないという。
カラリョワ氏は、銀行危機の影響については、日本経済の状況はさらに憂慮すべきものだと指摘している。

米国の銀行危機は、日本の銀行システムに対するリスクを増大させました。なぜなら、この2つのシステムは非常に相互関係が強く、日本の銀行は米国で大きな利益を持っているためです。これとは別に、事実上すべての通貨において、金の価値は最大レベルではないものの、非常に高い水準にあります。しかし、成長傾向は10年チャートではっきりと見て取れます。これは、米ドルと金に対する、通貨の切り下げが長引いていることを反映しています。現在の金融システムは、米国が国境を越えてインフレを広げるだけではなく、自国のドルの切り下げも同時にゆっくりと行われるようになっています。そしてこのプロセスは、ユーロ・ドルの金融システム危機の再熱を背景に、再び加速しています。特に日本では、日銀の大規模緩和政策の継続により、対米ドルの円安が急激に進んでいます。これは、今日10年ぶりの高値をつけた円建ての金の価格にも反映されています」

アンナ・カラリョワ
ロシア誌「エキスパート」の金融アナリスト
全体として、世界情勢は不安定な状況だ。 そして、銀行の場合と同様、この状況が日本経済にも影響を与えないわけにはいかない。 日本は世界第3位の経済大国として、その重要な一翼を担っているためだ。
そして、金は金融市場で問題が発生した際の「安全な避難所」となるため、金の価格は当然ながら上昇することになる。したがって、金の需要も増加の一途をたどるだろうと、カラリョワ氏は結論づけている。
サクソバンクは、緩やかな不況が到来した際の債務市場での崩壊を避けるため、2023年に最も堅実な通貨が追加支援を受けると予測している。金の価格は、2075ドル(約27万5040円)付近のダブルトップがまるでなかったかのように突破し、2024年には少なくとも3000ドルまで急伸すると可能性がある。
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