【視点】炎上する「レオパルト」

© 写真 : Krauss-Maffei Wegmann戦車「レオパルト2」
戦車「レオパルト2」 - Sputnik 日本, 1920, 14.06.2023
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ウクライナ軍の反転攻勢に向けた戦車「レオパルト2」のウクライナへの供与については2023年初頭から活発に議論されていた。ウクライナ軍司令部はこの欧米の戦車でロシア軍を粉砕することができると考えていたのである。この「レオパルト2」は、2023年6月初旬に戦闘に投入されたが、最初の戦いにおいて、この戦車は簡単に炎上することが判明した。ロシア国防省の公式発表によれば、ロシアはレオパルト2を8両、非公式データでは11〜12両、撃破した。戦闘は今も続いており、より正確な情報はのちに明らかになるだろう。

プロホロフカ近郊の戦いにおける鋼鉄のカオス

そもそも、ドイツ製の戦車でロシアを威嚇するというのはまったく解せない考えである。どうやらウクライナは、戦車や戦車戦というものがロシアの国の誇りであり、国の歴史の一部であることを忘れてしまったようだ。というのも、我々はすでに戦場でドイツの戦車と対峙するという経験を過去に有しているのである。
1943年7月12日、クールスクの戦いの中、ベルゴロド近くのプロホロフカ近郊で戦車戦が起きた。参加したのは、ソ連第5親衛戦車軍とドイツの第2SS装甲軍団で、戦場ではソ連の戦車760両とドイツの戦車413両が激突した。ドイツ軍の最高の戦車隊であるSS軍団は、猛攻撃をしかけ、クールスクの防衛線を突破する計画であった。これに対し、ソ連の戦車隊は反撃し、ドイツ軍の攻撃を阻止しようとした。そして大戦車戦が起こったのである。
その朝、埃と煙の中、太陽が昇った。双方が激しい砲撃を行い、ソ連の多くの戦車が一気に前進した。ドイツ軍が有していたのは強力な大砲と厚い装甲を備えた重戦車「ティーガー」である。この戦車を撃破するには短距離から攻撃しなければならなかった。モーター音が響き、キャタピラが軋み、爆発音が轟き、金属の擦れる音が鳴り渡った。その爆音は凄まじいもので、戦車隊員の耳から血が出てくるほどであった。戦車につけられたトランシーバーからは数えきれないほどの叫び声が飛び交った。薄闇の中、砲撃の光と爆発の火が上がり、戦車は炎上した。「ティーガー」はソ連の戦車を次々と砲撃した。ドイツの装甲車からは、火花を散らした徹甲弾が撃ち放たれた。しかし、まもなくT34が「ティーガー」に接近し、砲撃を開始した。損傷を受け、炎を上げる戦車から、ソ連とドイツの戦車隊員が降りてくる。鉄鋼のカオスの中、彼らは互いに銃撃し、剣や素手で揉み合った。
155ミリ砲弾の製造 - Sputnik 日本, 1920, 08.06.2023
西側諸国によるウクライナへの兵器供与
【視点】日本によるウクライナへのTNT調達は参戦である
この戦闘はきわめて多くの損害を出した。ソ連の戦車194両が炎上、146両が大破した。ドイツ軍は108両の戦車を失い、そのうち14両が炎上、残りは深刻な損傷を被った。この結果、ドイツ軍は攻撃を諦めざるを得なかった。1943年7月末、第2SS装甲軍団は前線から退き、イタリアへと移動した。クールスクの戦いはソ連が勝利し、その後、ドイツ軍は戦争そのものに敗北した。
これはこの戦争で唯一の大戦車戦ではないが、もっとも重要で、もっとも有名なものである。我々はあらゆる戦いで、ドイツの最高レベルの戦車隊員と戦車に大勝した。我々はこの戦いを誇りとしており、「レオパルト2」を恐れたりしない。

古い戦車vs最新ミサイル

「レオパルト2」はかなり古い戦車である。「レオパルト2」は1982年3月に初めて製造され、1992年3月まで作られたものである。その後、改良がなされ、砲塔、砲身が交換され、動的防御、新たな照準器、設備が設置された。ウクライナに供与されたこの改良型2A6は、より古い型式のものを改良したものである。
当初ドイツとその他のNATO加盟国はウクライナに112両の戦車を供与する計画であったが、2023年3月の時点では14両しか送られていない。ウクライナが伝えているところによれば、欧米諸国はこれらの戦車から最新の電子機器、照準器、動的防御、新型砲身などすべてを除外した。また戦場からの非公式の情報によれば、損害を受けた「レオパルト」を分析した結果、照準器は冷戦時代の古いものであったという。言い換えれば、欧米の戦車はロシアの改良型戦車Т-72В3よりも劣っていることになる。
一方、ロシア軍には、装甲車に対抗する対戦車ミサイルという新型兵器が現れている。その中には、汎用装軌装甲車両MT–LBに搭載されたミサイル「シュトゥルムS」も含まれる。このミサイルは6〜8キロの距離の目標物を撃破する。これは「レオパルト」の戦車砲の射程を超えている。このミサイルは950ミリの装甲を動的防御、つまり砲弾やミサイルを発射する装甲上の爆薬を超えて、撃破することができる。さらに2022年の末にはレーザー誘導システムを備えた対戦車ミサイルシステム「コルネットD1」の試験射撃が行われた。これらのミサイルシステムは装甲車または四輪車両に搭載される。このミサイルは3.5〜5.5キロの距離の目標物を、戦車砲の射程を超えて、撃破できる。ミサイルは動的防御のある1200ミリの装甲を打破し、また戦車が飛翔するミサイルを特殊砲弾で砲撃する能動的防御をも克服することができる。ミサイルシステム「コルネットD1」は2023年春に軍に配備された。つまり、ロシアは改良された防御を備えた欧米の最新型戦車との戦闘に備えてきたのである。
しかし、今、戦場で使われている敵の戦車には、最新の装甲も防御システムも備わっていないことが判明した。そこで、前評判の高かった「レオパルト2」は標的と化したのである。熱線暗視装置を使えば、緑の背景に黄色の輪郭がはっきりと浮かび上がる。一発命中すれば、「レオパルト2」は炎上する。こうしたすべてから、大きな疑問が湧き起こる。欧米が約束した最新の兵器は一体どこにあるのかということである。
Терминатор - Sputnik 日本, 1920, 02.02.2023
【視点】実戦に使われるロシアの最新戦車支援戦闘車「テルミナートル」
伝えられているところによれば、ウクライナ軍は、供与された「レオパルト2」の半数ほどをすでに失ったという。もしかするとこの数は半分以上かもしれないが、現在これを確認するのは困難である。しかしもしこれが真実であるとすれば、ウクライナ軍は攻撃を行うための主力兵器を失いつつあるということである。
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