【特集】東京の路面電車は、過去の遺物か、それとも実用的な交通手段か?

© ドミトリー ガヴリーロフ東急世田谷線の路面電車
東急世田谷線の路面電車 - Sputnik 日本, 1920, 07.10.2023
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東京では、鉄道、地下鉄、バスが交通網の大半を占めているが、路面電車も見かけることがある。北海道から九州までの地方都市では路面電車はごく一般的な交通手段だが、首都東京では目立たない存在だ。 東京で路面電車はまだ意味があるのだろうか、それともかつての都市交通の発達における古き時代を思い出させるだけなのであろうか?スプートニクの特派員は、東京に残る二つの路面電車にのり、管理団体に話を聞いた。

過去をふりかえって

東京の路面電車の歴史は19世紀後半にさかのぼる。1882年、新橋と日本橋を結ぶ最初の馬車鉄道が東京に登場した。その後、東京の路面電車は電力に切り替わり、20世紀の第1四半期には、41路線、総延長200キロメートル以上、1日の乗客数約150万人という世界最大級の交通網へと変貌を遂げた。
しかし、都市が近代化し、より効率的な交通機関へのニーズが高まるにつれ、路面電車路線の大部分は解体され、地下鉄やバスなど、より高速な新しい移動手段に取って代わられた。現在、東京に残る路面電車は、東京さくらトラムとして有名な都電荒川線と東急世田谷線の2路線のみである。

厳しい現在 課題と競争

その魅力にもかかわらず、路面電車は、スピード、効率、利便性を特徴とする東京において、その存在を維持するために多くの課題に直面している。日本の首都の住民は、この3つの要素を必要としており、近代的な地下鉄やバスのシステムは、ハイスピードな都会のリズムへの要求を満たしている。一方、路面電車はスピードが遅く、交通網全体への統合度は低い。
東京では、新しい交通手段(ライドシェアサービス、都市型自転車、電動スクーターなど)が従来の公共交通機関に代わってフレキシブルな選択肢を提供しているため、競争が激しい。さらに、東京の鉄道と地下鉄は広範囲にわたって配備されており(総延長5000km以上、駅数約2500)、多くの利用者にとって便利でアクセスしやすい。
© ドミトリー ガヴリーロフ

都電荒川線(さくらトラム)の路線図

都電荒川線(さくらトラム)の路線図 - Sputnik 日本
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都電荒川線(さくらトラム)の路線図

© ドミトリー ガヴリーロフ

都電荒川線エリアの古い看板

都電荒川線エリアの古い看板 - Sputnik 日本
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都電荒川線エリアの古い看板

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都電荒川線(さくらトラム)の路線図

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都電荒川線エリアの古い看板

首都住民のニーズとの関連性

この二つの路線は、とても重要な交通機能を果たしている。 東京さくらトラムは早稲田駅から三ノ輪駅まで約1時間で、東京北部のほとんどの地域を路線で結んでいる。また東急世田谷線は、三軒茶屋から下高井戸までの全域を路面電車のみが走る、世田谷区において重要な軌道線である。
スプートニクの特派員の経験から、東京ではこのような路線の需要が確かにあることがわかっている。どちらの路線も時間帯によって車内が乗客で非常に混雑し、空いた席はなく、ラッシュ時には満席になる。時には狭い駅のプラットフォームに、乗車待ち客の長蛇の列ができる(特に東京さくらトラム線)。
どちらの路面電車も、乗車賃が170円以下と安いのが大きな特徴だ。日本では通常、乗車ごとに料金を支払うのではなく、距離ごとに料金を支払う決まりがあるにもかかわらずである。おそらくこの事実は、路面電車での移動を支持する側の補足の論拠となるだろう。ちなみに、支払いはSuicaやPasmoなどの交通カードでも可能だ。
@sputnikjapan 東京の交通機関といえば鉄道、地下鉄、バスが主流だが、路面電車もある。スプートニク特派員は東京に残るノスタルジックな魅力を持つ2つの路面電車、東京さくらトラムと東急世田谷線に乗車した。 #fyp #路面電車 #電車 #鉄道 ♬ Exciting and refreshing piano main for corporate VP(823699) - NakayamaNorikazu(BGM)

忘れられない乗車体験

東京の路面電車は、地元の人々や観光客に20世紀前半の東京の生活を垣間見せてくれる。路面電車は絵にかいたような趣ある景観のなかを走る。バスや地下鉄では見過ごされがちな東京の静かな一角を見ることができる。
1923年の関東大震災や第二次世界大戦時の首都東京への米軍による絨毯爆撃により、東京の歴史的な街の大部分が焼失してしまったことは重要である。このことを背景に、路線設計者は路面電車に歴史的でレトロな魅力を持たせようとした。例えば、三ノ輪駅は昭和初期の装飾が施され、車両内には出発を知らせる古い銀色のベルが残されている。東急世田谷線の沿線には、旅の途中で立ち寄りたい観光スポットがある。例えば、宮の坂駅の隣には大きな世田谷八幡宮の伽藍があり、1969年まで渋谷から二子玉川まで走っていた年代物の客車が展示されているスポットがある。
© ドミトリー ガヴリーロフ

東急世田谷線の路線図

東急世田谷線の路線図 - Sputnik 日本
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東急世田谷線の路線図

© ドミトリー ガヴリーロフ

東急世田谷線の路面電車

東急世田谷線の路面電車 - Sputnik 日本
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東急世田谷線の路面電車

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東急世田谷線の路線図

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東急世田谷線の路面電車

統計と将来の目標

スプートニク特派員は、東京の路面電車について、東京さくらトラムに関しては東京都交通局へ、 東急世田谷線に関しては東急株式会社へ問い合わせた。そして乗客輸送データ、コロナウイルス流行の影響、今後の展望について詳しくきいた。
2022年度のデータによると、東京都電の利用者数は9万8824人で、東京さくらトラムが4万6541人、東急世田谷線が5万2283人だった。新型コロナウイルス感染症は両路線に深刻な影響を与えたが、回復の兆しを見せているという。

「コロナ渦初年度の20年度数値で4万2102名(19年より-27.4%減)です。22年度数値5万2283名と比べると、コロナ前の19年度までにはまだ戻っていません」

東急株式会社
「2020年からはコロナによる外出制限等により乗客数は激減しましたが、現在は回復傾向にあります。理由は感染症5類移行後の外出制限がなくなったことによるものだと推察します」
東京都交通局
東京都は、都電のユニークさ、そして都電は東京北部で欠かせない存在であると発言している。
「東京に残った唯一の都電として、今後も多くの人に愛される路面電車であり続けられるよう、地域の身近な交通機関としての役割を果たしていきます。東京さくらトラムは他の路線と競合する場所を走っていないため競争という関係性はあまりありません」
東京都交通局
今後の計画については、東急株式会社は次のように語っている。
「今後も地域の足として、沿線の皆様と歩んでいきたいと考えております」
東急株式会社
同じ質問に対する東京都交通局の回答は以下。
「東京に昔あった都電の最後の路線ではありますが、今の段階での延長等の計画はありません。一層の経費削減や乗車人員増加による収入の増加、外国人旅行者にも安全、安心、快適にご利用いただけるような情報発信等、様々な観点から経営改善を図ることで、安定的な事業運営に努めます。運行については、線路や停留場、電気設備など通常の鉄道と同様の設備が不可欠だと考えています」
東京都交通局
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まとめ

東京都電はもはや都民の主要な交通手段としての地位を取り戻すことはできないかもしれないが、それでも東京の交通システムのなかでその位置をしっかりと確立している。都電はこれらの地域で必要不可欠なものであり、さらにそのノスタルジックな魅力、歴史的な意義、観光的なアピールは、利用者を惹きつけてやまない。 路面電車が歴史の彼方に追いやられることなく、東京の人々や日本を訪れる人々を楽しませ続けることを願うばかりである。
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