【視点】中国とフィリピンの争いに日本が介入?

© AP Photo / Mark Schiefelbein日米比3カ国首脳会談
日米比3カ国首脳会談 - Sputnik 日本, 1920, 17.04.2024
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フィリピンのホセ・マヌエル・ロムアリデス駐米大使は、日比間でローテーション体制による自衛隊のフィリピン派遣についての交渉が行われていると明らかにした。大使はこの協定について、両国間の安全保障協力を同盟国レベルまで引き上げることを想定したものと述べている。
比大使のこの発言の数日後、4月6、7日にフィリピン、米国、豪州の各海軍および日本の海上自衛隊は合同演習を実施。海上自衛隊からは76ミリ砲、SSM-1B艦対艦誘導弾8発、魚雷、マルチミサイル発射システム32基、哨戒ヘリコプターを搭載した駆逐艦「あけぼの」(DD-108)が参加した。艦船はフィリピンの経済水域をパトロールした。
締結の可能性のある本協定において、どの部隊がフィリピンに派遣されうるのかはまだ分かっていない。フィリピン駐留が陸海空のいずれになるのかさえ、わかっていない。今のところ推測できるのは、1隻か2隻の駆逐艦と潜水艦のような海自の部隊ではないかということだけだが、艦船が関係する場合、フィリピン側は母港を提供しなければならない。

日本国憲法に真っ向から違反

声明からは、こうした交渉が長期にわたって続けられてきたことがわかる。最初に言及がなされたのは2015年に遡る。日本国憲法に真っ向から違反する行為であるため、慎重になるのは当然のことだ。
憲法9条には、日本国民は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永 久にこれを放棄する」と明記されている。
一方で報道では、部隊や艦船の派遣に関する合意を含む日本とフィリピンの軍事協力の進展の背景には、南シナ海の諸島をめぐるフィリピンと中国の領有権争いがあると強調されている。
自衛隊、戦闘機、艦艇の派遣は、明らかに軍事力を背景にした脅しである。自衛隊による兵器の使用は十分に可能であるだけでなく、一定の条件のもとで起こる得る。こうすることで日本は、この場合、中国側に軍事力を使うぞと威嚇することで中比のいざこざに介入している。

日本を守るのは憲法

もうひとつ留意すべき点は、日本は米中戦争に巻き込まれる事態が生じても、日本国憲法第9条があるおかげで、それからいつでも撤退することができ、国が守られているということだ。
日本に駐留する米軍が直ちに敗北した場合、日本政府に残された道はまず、日本はやむを得ず、紛争参加を強いられたのだと宣言し、その後で防衛の目的で国内に残る米軍部隊を武装解除し抑留するために、自衛隊を派遣することとなる。もし米軍がいるために日本へ攻撃がかけられたのであれば、米軍の武装解除は十分に自衛行為として言い訳がたつ。
在日米軍が無力化されれば、中国、北朝鮮などの仮想敵国にはこれ以上日本と戦争をする理由がなくなる。これこそが戦争から抜け出す道なのだ。この論理はもちろんシニカルだが、十分ありうる。
しかし、一部の急進派が望むように日本が憲法9条を破棄したり、組織的に違反した場合はこうした策略はもはや通用しない。敵は、日本政府が憲法9条を無に帰したと主張し、日本が敗戦し、占領されるまで戦うだろう。
もちろん、フィリピンと協定を結ぶよう、日本の背中を一番後押しているのは米国だが、そうであっても日本には自国の利益が第一でなければならない。米国は、中国との戦いに失敗した場合、太平洋を渡ってさっさと逃げることができる。だが、日本には逃げ場がない。

何倍も優位に立つ中国

計画されている日比協定の純然たる軍事的目的は疑わしい。中国海軍の保有する艦船は、空母からミサイル艇まで、さまざまなクラスで350隻。中国の艦隊の規模は米海軍よりも大きく、293隻(2021年時点)。それに比べ、日本の海上自衛隊は154隻。仮に海上自衛隊の艦隊がフィリピンを守るために揃って出動したとしても、成功する可能性はわずかだ。中国の保有数は、駆逐艦は1.4倍(日本36隻対中国51隻)、フリゲート艦はほぼ5倍(日本10隻対中国49隻)、潜水艦は3.5倍(日本22隻対中国79隻)と数で勝っている。
中国海軍の量的優位は、南シナ海の完全な制空権を容易に掌握する中国空軍の量的優位と相まって、たとえ海上自衛隊が全力を挙げて行動したとしても、勝算の見込みはない。
仮に海上自衛隊が2隻や3隻の艦艇をフィリピンに派遣したとしても、大規模な攻撃を受けた場合にはどうすることもできない。射撃場の標的同様にただ撃たれて沈められるのがオチだ。だとすると、このデモンストレーションの意味は何か。果たして日本の防衛省は、巨大な軍事力を築き上げた中国が、フィリピン海域に日本の駆逐艦が2、3隻現れたところで、これを恐れると本気で信じているのだろうか。
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