「緊急事態法制をつくっても何もできないのは目に見えている」=日本人法学者

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日本国会  - Sputnik 日本, 1920, 17.08.2024
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国民を保護する上で緊急事態法制は果たして本当に必要なのか。これについて、法学者で朝鮮大学校法律学科の講師を務める前田朗氏がスプートニクの取材に応じた中でコメントした。
スプートニク:最近、ネットで話題となっているのが、例えば大震災などの際に、政権が緊急事態宣言を発した結果、日本の皆さんの人権が侵害されるという話です。これをどう受け止められていますか。
前田朗氏:緊急事態において具体的に問題になっているのは2点です。一つは、国会が機能停止すると困るということ。何らかの理由で衆議院が解散した、閉会中で開会できない、または、衆議院議員に所在不明が多数出た場合に困るから、緊急事態法制が必要だという。実際に自民党案で議論されているのはまさにここなんです。
しかし、もう一つは国民向けの話で、緊急事態では政府が内閣や緊急事態対策本部を立ち上げ、国民保護の施策を速やかに取らないといけないから必要だという。この2つがいつもごっちゃになって出てくるんです。でも、2つ目を言わないと、国民に説得力がない。だから「国が国民を守ろうとしてるんだ。緊急事態では憲法がどうこう言ってられない。内閣の判断で速やかに動かなきゃいけない場合があるじゃないか」と主張する。その緊急事態が戦争だったり大地震だったりするわけです。
もちろん震災はありえる。でも、国民を守るために何が一番必要なのか。答えは簡単。戦争しないことです。それが一番大事であり、そのための日本国憲法でしょう。それでもなおかつ武力紛争が起きる、あるいは何らかの軍事行動が行われる。その時にどうやって国民を守るか。その部分については、もう十数年前に国民保護法という法律をつくっているんです。これは住民保護の観点から、国と地方自治体がいかに連携して住民を避難させるかというもので、武力紛争、地震、原発事故を想定し、当時は各地で何度も住民を動員し、住民保護計画に従った避難の演習をやっていたんですが、それが近年やってない。なんでやらなくなったか? 答えは簡単です。地方自治体の主導で逃げるのは無理というのがわかっちゃったからです。既存の行政機関、地方自治体では、そういうレベルの避難は事実上不可能という答えは、2000年代に出た。だから、国民保護法をつくったけれど、その後、訓練、演習全部やめちゃった。このことから、緊急事態法制をつくっても何もできないってのは目に見えています。「家にいなさい」というレベルの話になってしまうんですね。
国内でやった結果、不可能とわかったのに、あたかも「できる」、「そのための緊急事態法制です」、「そのための憲法改正です」と言い続けている。政府としてはそう言わざるを得ないことは、国民保護計画の経験から、今の政治家も官僚も皆わかっている。だから、そこでの本当の改憲は具体的なテーマにならないだろうというのが私の見立てです。
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