【視点】レベルアップする日本の対マレーシア、対インドネシア関係

© AP Photo / Mohd Rasfan石破首相
石破首相 - Sputnik 日本, 1920, 15.01.2025
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石破首相は4日間のマレーシアとインドネシア訪問を終えた。どうやら、首相としての初の個別外遊先としてこれらの国が選ばれたのは偶然ではなかったようだ。マレーシアは2025年1月1日からASEAN議長国であり、インドネシアはレアアースを含む豊富な天然資源を持つ地域最大の経済大国。日本にとってマレーシアは液化天然ガス(LNG)の、インドネシアは石炭の主要な供給国である。日本は両国と長きにわたり、良好な関係を築いてきた。日本企業とって、これらの国は、中国が米国から厳しい制裁を受けた場合に備え、中国以外の代替生産拠点の候補として関心があるのかもしれない。 加えて、マレーシアとインドネシアの両国には、日本のOSA(政府安全保障能力強化支援)の下で防衛装備品が提供されている。
まず1月9日、マレーシアのアンワル・イブラヒム首相との会談が開始。両首相は、自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)へのコミットメントと、二国間の安全保障協力強化の重要性を確認した。日本とマレーシアの国交は1957年に樹立され、2010年には強化されたパートナーシップを締結、2015年には戦略的パートナーシップへとランクアップし、2023年12月には包括的戦略的パートナーシップへとさらなる格上げが発表された。今回、両首脳は、二国間関係を包括的戦略的パートナーシップに引き上げる方法について協議したほか、安全保障と防災、エネルギーと貿易、投資と安定したサプライチェーンの構築、教育分野での協力についても話し合った。日本のプログラムにより、数千人のマレーシアの若者がマレーシア日本国際工科院や筑波大学マレーシア校で学んでいる。また会談では、昨2024年に行われた自衛隊とマレーシア軍との初の合同演習に言及し、両国間の戦略的対話を継続する意向を再確認した。石破首相はまた、マレーシアの国防力と海上安全保障を強化するため、日本政府が引き続き防衛装備品を提供することを約束した。
石破首相とインドネシアのプラボウォ・スビアント大統領との会談もほぼ同様の経過をたどり、協力分野を拡大する意向が確認された。2023年12月、日本とインドネシアは、水産加工品の関税撤廃を含む追加的な貿易障壁撤廃について合意した。日本はまた、インドネシア産の製品に対してもより開放的になってきている。今回、プラボウォ大統領は、インドネシアの鉱物資源などの加工業を含め、同国の将来の経済発展への日本企業の参加を歓迎すると述べた。これに対し石破首相は、エネルギー安全保障を維持し、脱炭素化への取り組みを進めるため、資源開発やインフラ整備で協力を進めていく意向を表明。2019年から2023年にかけて、日本のインドネシアへの投資額は合計183億米ドル(約2兆8000億円)となった。さらに、石破首相はインドネシア軍の発展を支援すると述べ、高速警備艇2隻の無償提供を合意した。両首脳はまた、2025年中に外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開催することでも合意した。2021年の前回会合では、両国は防衛装備品・技術移転に関する協定に合意している。
日本は歴史的に東南アジアを常に国益の視点から重視してきた。世界経済国際関係研究所、アジア太平洋研究センターの上級研究員レオニード・ガムザ氏はこう指摘し、次のように語っている。

「戦後、日本とこの地域の国々との関係は容易いものではなかったが、活発に発展してきた。そして、それは経済的利益に基づいたものだった。1960年代から1980年代にかけて、日本は経済発展のピークに達し、東アジア地域への政府開発援助を提供した。日本はこれらの国々の発展のための 『スポンサー』だったとも言える。

インドネシアとマレーシアはASEANの経済発展のリーダー国だ。だから、石破氏が初の個別外遊にこれらの国々を選んだのは、全く偶然ではない。安倍氏も岸田氏も、近年の日本の首相は、ほとんど皆、年明けに東南アジアを訪問している。現在、東南アジアには約1万5000社の日本企業が進出している。つまり日本がこれらの国々の経済に積極的に参入していることを意味している。

もちろん経済的な利益が優先されているが、背後には安全保障上の戦略的な利益も存在する。両国はインド洋と太平洋の間に位置し、日本は米国の太平洋戦略の実施に関与している。そして日本は経済協力に重点を置きつつ、戦略的、つまり軍事的な協力も確立しようとしている。2022年以降、ODA(政府開発援助)に加えて、同志国に防衛装備品等の支援を供与するOSA(政府安全保障能力強化支援)が実施されているのは、偶然ではない。石破政権もこの方針に従っている。また、日本がマレーシアやインドネシアとの関係を、フィリピンとの関係と同レベルにまで高めたいと考えている可能性もある。

さらに、両国は、最近日本が注目をしている、グローバルサウスに非常に積極的で、先駆的な参加国だ。今年1月には、インドネシアはBRICSに正式に加盟したし、昨年10月からマレーシアはBRICSのパートナー国となっている。このことは、国際舞台におけるこれらの国々の影響力の高まりが、日本にとって重要であることを意味している。

トランプ氏の大統領就任を目前に控えた今、日本はトランプ氏が主に中国製品に対して関税を導入した場合に備えてリスクを回避したいと考えている。そして、日本の経済界が東南アジア諸国に方向転換することは、この状況へのひとつの解決策になり得る。だが、東南アジアにおける中国の地位も非常に強く、中国企業も東南アジアに生産拠点を移転している。だから、これらの国々での日本と中国の競争はほぼ避けられない」

東洋学研究所の専門家ドミトリー・ミレエフ氏はこの関係を互恵的と指摘し、次のように語っている。
「日本にとって、これは植民地支配の過去を乗り越え、この地域の国々と新しい形の関係を築くことを意味している。これは自由で開かれたインド太平洋地域における国際秩序の強化の必要性に基づいた、日本の外交政策構想の実現の柱の一つであり、対立ではなく協力を追及するグローバルな関係を構築するというASEANの原則と一致する。これらの国々にとって重要なのは、中心的な力による地域の陣営化を回避すること、つまりあちら側か、こちら側かの陣営に分かれざるを得ない状況を避けることだ。ASEAN加盟国自身も、地域の政治情勢に影響を与える集団的調停者としての役割を主張している。そして日本は米国の同盟国であり、ASEAN諸国への影響力をめぐり中国と目に見えないところで競争しているが、もちろんこれらの国々自身は日米中の道具になることは望んでいない。要するに、日本との関係では、いくつかの組み合わさった戦略的な方針がある。一つは持続可能な経済成長の維持のため、もう一方は地域の安全保障の確保のために重要であること。同時に強調すべきことは、こうした関係はそれぞれの国家の主権的意思に基づいているということだ」
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