【視点】レベルアップする日本の対マレーシア、対インドネシア関係
「戦後、日本とこの地域の国々との関係は容易いものではなかったが、活発に発展してきた。そして、それは経済的利益に基づいたものだった。1960年代から1980年代にかけて、日本は経済発展のピークに達し、東アジア地域への政府開発援助を提供した。日本はこれらの国々の発展のための 『スポンサー』だったとも言える。
インドネシアとマレーシアはASEANの経済発展のリーダー国だ。だから、石破氏が初の個別外遊にこれらの国々を選んだのは、全く偶然ではない。安倍氏も岸田氏も、近年の日本の首相は、ほとんど皆、年明けに東南アジアを訪問している。現在、東南アジアには約1万5000社の日本企業が進出している。つまり日本がこれらの国々の経済に積極的に参入していることを意味している。
もちろん経済的な利益が優先されているが、背後には安全保障上の戦略的な利益も存在する。両国はインド洋と太平洋の間に位置し、日本は米国の太平洋戦略の実施に関与している。そして日本は経済協力に重点を置きつつ、戦略的、つまり軍事的な協力も確立しようとしている。2022年以降、ODA(政府開発援助)に加えて、同志国に防衛装備品等の支援を供与するOSA(政府安全保障能力強化支援)が実施されているのは、偶然ではない。石破政権もこの方針に従っている。また、日本がマレーシアやインドネシアとの関係を、フィリピンとの関係と同レベルにまで高めたいと考えている可能性もある。
さらに、両国は、最近日本が注目をしている、グローバルサウスに非常に積極的で、先駆的な参加国だ。今年1月には、インドネシアはBRICSに正式に加盟したし、昨年10月からマレーシアはBRICSのパートナー国となっている。このことは、国際舞台におけるこれらの国々の影響力の高まりが、日本にとって重要であることを意味している。
トランプ氏の大統領就任を目前に控えた今、日本はトランプ氏が主に中国製品に対して関税を導入した場合に備えてリスクを回避したいと考えている。そして、日本の経済界が東南アジア諸国に方向転換することは、この状況へのひとつの解決策になり得る。だが、東南アジアにおける中国の地位も非常に強く、中国企業も東南アジアに生産拠点を移転している。だから、これらの国々での日本と中国の競争はほぼ避けられない」