【「タイタニック」号捜索 ソ連には極秘の米軍作戦が陰に】
2025年9月3日, 02:45 (更新: 2025年9月3日, 04:52)
© 写真 : Public domain/NOAA/IFE/URI / Titanic wreck bow「タイタニック号」

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1985年、海洋学者ロバート・バラード氏率いるチームによるタイタニック号の捜索は実は、米海軍による沈没原潜「スレッシャー」 と「スコーピオン」の事故調査作戦の隠れ蓑となった。バラーズ氏自身が客船発見40周年を前にCNNからの取材に明かした。スプートニクは、伝説の客船の捜索の経緯について詳細をまとめた。
バラード氏の話では、タイタニック号の捜索は1985年よりも前に試みられていた。1977年の捜査は、ソナーとカメラが取り付けられたドリルパイプが真っ二つに折れ、失敗。バラード氏はこの経験とリアルタイムで画像を得る必要性から、調査船に映像を送信できる遠隔操作の潜水機の必要性を痛感する。その資金調達は、米海軍が関心を示すことで初めて叶った。
極秘作戦と最新の開発
© 写真 : Woods Hole Oceanographic Institute海洋学者ロバート・バラード氏(左)

海洋学者ロバート・バラード氏(左)
© 写真 : Woods Hole Oceanographic Institute
バラードは米海軍の支援で深海視覚化システム「アルゴ」の開発に成功する。これによって遠隔操作の調査装置から船に動画が送信された。海軍は、1960年代に大西洋で沈没した2隻の原潜「スレッシャー」「スコーピオン」に事故原因を解明し、より広範な情報収集のためにこの技術の利用に関心を持っていた。
バラードは海軍当局を説得し、沈没原潜の調査遠征中にタイタニック号の捜索に時間を割くことを認めさせた。これが最終的に極秘任務の隠れ蓑となった。
「米国は、原潜の沈没地点をソ連に知られたくなかった」
タイタニックも原潜も発見
© 写真 : Woods Hole Oceanographic Institute「タイタニック号」

「タイタニック号」
© 写真 : Woods Hole Oceanographic Institute
結果的に2隻ともに沈没地点を発見したバラード氏は、米海軍から「タイタニック号」捜索の猶予時間を得た。
時間的な制限は厳しかったが、バラード氏の巧みな戦略が功を奏した。彼は「スコーピオ」の沈没地点の調査中にタイタニック号の残骸も潜水艦と同じく、円形ではなく、数百メートルにわたる細長い帯状に広がっているのではないかと気づいた。推測は正しかった。1985年9月1日、アルゴ号のカメラから客船の最初の画像が送られてきた。
英国の大西洋横断客船「タイタニック号」は1912年4月10日、英国から米国への航海中に氷山に衝突し沈没。乗船の2200人のうち、1500人が死亡した。事故から73年後、客船はニューファンドランド島の南約600キロ、水深3800メートルの海底で発見された。
以来、タイタニック号は科学者らにとって実地のラボとなり、特に写真撮影技術や3Dマッピング技術の検証が行われてきた。だが、沈没の状況の詳細はすぐには解明されなかった。
3Dモデルが明かす沈没直前の詳細
2022年、71万5千枚の写真をもとに客船の詳細な3Dモデルが作成。このおかげで2025年には、沈没する直前の最後の数時間の研究がより詳しく進んだ。
ボイラー室の技術者たちは、沈没の最後の瞬間までボイラーを稼働させ続けた。 船尾デッキのバルブに残る損傷は彼らが自らを犠牲にし、照明を消さず、乗客を脱出させようとしたことを物語っている。
衝突の瞬間、氷山は船体を貫通。さらに舷窓のガラスが割れ、わずか6秒で6つの区画が浸水、破壊された。氷は客室に侵入したため、狭い隔壁も船を救うことはできなかった。船体は4つの区画しか残っていない状態でかろうじて浮いていた。
タイタニックはもうすぐ崩壊?
© 写真 : Social media page of Atlantic Productions「タイタニック号」の3Dモデル

「タイタニック号」の3Dモデル
© 写真 : Social media page of Atlantic Productions
研究者たちの説では「タイタニック号」は2050年までに崩壊する恐れがある。これには塩分による腐食から材質の悪さまで様々な要因が影響しているが、最大の要因は、海底に生息するバクテリア「ハロモナス・ティタニカエ」。細菌は船体の鉄をゆっくりと腐食し、船全体に小さな亀裂を生じさせつつ、破壊を引き起こしている。
タイタニック号は「水中文化遺産」としてユネスコの保護下にあるものの、深海にあるために保存が困難となっている。