【10式戦車の暴発 高速発射が呼んだ惨事】

© AP Photo / Koji Sasahara10式戦車(アーカイブ写真)
10式戦車(アーカイブ写真) - Sputnik 日本, 1920, 26.04.2026
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4月21日午前8時39分頃、大分県の陸上自衛隊日出生台演習場で射撃訓練中に10式戦車が暴発した。砲塔内にいた隊員3人は死亡、操縦手1人は命はとりとめたが、重傷を負った。事故は自衛隊統合作戦司令部を震撼させた。事故当日に開かれた記者会見で荒井正芳陸上幕僚長は、自身の経験では、砲塔内で弾薬が破裂したというのは聞いたことはないと述べている。この、普通では考えられない事故の捜査は開始されたが、正解例のパターンはここではそう多くないと思われる。
© 写真 : 陸上自衛隊広報チャンネルより。2026年4月21日に荒井陸幕長が行った臨時記者会見のスクリーンショット(陸上自衛隊広報チャンネルより)
2026年4月21日に荒井陸幕長が行った臨時記者会見のスクリーンショット(陸上自衛隊広報チャンネルより) - Sputnik 日本, 1920, 26.04.2026
2026年4月21日に荒井陸幕長が行った臨時記者会見のスクリーンショット(陸上自衛隊広報チャンネルより)

砲尾の構造上、ありえない

この戦車砲は構造上、砲身が閉じる前に弾薬が発射されたり、砲身から火薬ガスが漏れ出すことはあり得ない。
戦車砲「10式」は日本製鉄によって開発されたものの、砲尾部に関しては、米国のM1A1エイブラムス、独レオパルド2、韓国のK1A1、イタリアのC-1アリエテ、日本の90式戦車など、多くの戦車に搭載されている、ラインメタル120mm L44砲と同一の構造を採用している。この設計は、旧型戦車用の弾薬だけでなく、米国やその同盟国から供給される弾薬も使用できるようにするという要件に基づいていた。
この戦車砲では、発射は電気撃発式で、装填アームは後部スリーブの中央に配置されている。電気信号を薬莢に伝えるための電極は、砲のウェッジ型閉鎖機の中に、完全に閉鎖された状態でのみ薬莢の接続点に接触するように設置されている。さらに、砲身が開くと、電極は駆動装置によって自動的に砲身内部に収納される。つまり、砲身が閉じる前に発射されることはあり得ない。
欧米の戦車とは異なり、10式では装填手の役割をロボット、すなわち自動装填装置が担っている。しかし、自動装填装置と砲弾を押し込む構造上、発射前の誤発射そのものが起こり得ないようになっている。ラマーが砲弾を砲身へ押し込むと、即座に後退し、その直後に砲身は閉鎖される。これら一連の動作は極めて迅速に行われ、1秒もかからない。
つまり、戦車砲の砲身内で砲弾が爆発したのは、砲身の不具合によるものではない。

この砲身では腔発は起きない

もちろん、砲弾が砲身に詰まる、腔発が起きたと考えることもできる。しかし、10式は滑腔砲であり、砲弾が引っかかるような箇所はない。例えば、装甲貫通弾の場合、硬質合金で作られた芯は、サイズが砲身の口径よりも小さい。この芯はアルミニウム製の下皿に設えられている。この下皿がピストンの役割を果たし、砲身の火薬ガスを押し出す。10kgの強力な火薬を装填した場合、このアルミニウム製ケースはいずれにせよ砲身から押し出されることになり、仮に内部で何かに引っかかったとしても、単に潰される。
さらに、大砲の砲尾部は万が一の異常発射に備えて、特殊加工で強化された鋼材を用い、厚く作られている。したがって、砲弾が詰まること自体ほぼあり得ないことだが、仮にそうなったとしても、砲塔の外で砲身が膨張または破裂することになる。
このため、荒井陸上幕僚長の驚愕は理解できる。
© AP Photo / Shinji Hasuo10式戦車(アーカイブ写真)
Танк Type-10, Япония - Sputnik 日本, 1920, 26.04.2026
10式戦車(アーカイブ写真)

高速発射が呼ぶ害

一体何が問題なのか?
被害を受けた戦車の写真を見ると、爆発で乗員3名が死亡したものの、戦車自体の損傷は最小限に留まっていることがわかる。砲塔上部の12.7mm機関銃は吹き飛ばされ、他の弾薬が積まれていた砲塔後部の弾薬室の防弾パネルが破損しただけだ。これらのパネルは、砲塔後部弾薬庫に被弾した際に戦車の全損を防ぐための特殊設計で、火薬装薬の燃焼による圧力は、まずこれらのパネルを吹き飛ばし、外部へ逃がす仕組みになっている。砲塔後部室と砲塔内の乗員の座る戦闘室は、砲弾を取り出すためのハッチがついた20mmの装甲隔壁で仕切られている。
戦車の全体的な外観から判断すると、爆発の威力は比較的小さく、砲弾の火薬装薬の全てが爆発したとは考えにくい。もし火薬が砲塔内で完全に爆発していたならば、まず戦車は炎上し、第二に他の砲弾も起爆し、砲塔が空中に吹き飛ぶ事態は避けられなかったはずだ。
となると、爆発が起きたというよりは、砲身から砲塔へと火薬ガスが噴出したと表現すべきだろう。だが、そんなことはあり得ない! 通常であれば、断じてあり得ない。
それでも想定外のシナリオはある。この砲の砲弾には非常にコンパクトな鋼製の薬莢が使われている。文字通り小さな下皿のようなもので、発射時に閉鎖された砲尾を密閉する。薬莢の中に電気式雷管が設置されている。薬莢の残りの部分は可燃性で、ニトロセルロース火薬の一種であるコロキシリンで作られている。本質的には同じ火薬だが、固形の白いプラスチックのような外観をしており、燃焼速度は若干遅い。
これらの可燃性薬莢は保護ラッカーでコーティングされているものの、急速に熱が加わると、ニトロセルロースの引火温度はわずか160~170度であることを忘れてはならない。
© 写真 : SNSより。10式戦車(アーカイブ写真)
10式戦車(アーカイブ写真) - Sputnik 日本, 1920, 26.04.2026
10式戦車(アーカイブ写真)
日本の戦車兵たちは自動装填装置を手に入れてから、速射に夢中になった。実際、この装置ではリロードは約3.5秒で済み、素早い射撃が可能になる。その際、もちろん砲身は過熱する。最小限の間隔で4~5発の速射を行うと、砲身はかなり高熱になり、発射前の次の砲弾は熱で引火してしまうほどになる。
おそらく、それが起こったのだろう。数発発射した後、砲身が真っ赤になるほど熱くなり、発射される砲弾の可燃性薬莢が燃えた。通常の火薬点火のように後ろからではなく、前から点火が起こった。薬莢と火薬が前から後へ燃えるほんの一瞬の間に、自動装填装置の押し棒が下がり、ボルト(遊底)が閉まり始めた。だが、完全には閉じず、わずかな空間が残った。その瞬間、砲身内の火薬ガスの圧力が上昇、ガスはボルトの頑丈な金属に支えられていない薄い薬莢受けを容易に押し出し、砲塔へ噴出した。
命をとりとめた操縦手にとって幸いだったのは、装甲隔壁のハッチが閉じられており、火薬の燃焼ガスが他の砲弾に引火しなかったことだ。また、指揮をする戦車長がハッチをロックせずにただ閉めたのは明らかだろう。火薬ガスによってハッチが開き、戦車内の圧力が急激に低下したため、他の砲弾の爆発が阻止された。
10式戦車の搭乗員たちは、過熱した砲身によって薬莢が自然発火する危険性を十分に認識せず、許容範囲ぎりぎりのところでほぼ連射という状態で頻繁に射撃していたと思われる。信頼性の高いボルトであれば、これはうまくいっただろう。しかし、ここでは、要素のわずかな変化で十分だった。砲身の過熱がわずかに高まったり、倉庫で保管されいた古い砲弾の薬莢に用いられているコロキシリンがわずかに不安定になって発火しやすくなったり、ボルトの汚れで閉鎖速度がわずかに遅くなったりするなどして、普通では考えられない事故が起こったと考えられる。
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