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袴田氏「プーチン氏は、今回の選挙でかなりの危機意識を持ち、投票率が低くなるのを危惧して、これまでにないほど、若者世代に熱心に投票を呼びかけ、各地の行政府にも投票率を上げるようプレッシャーをかけていました。結果がわかっている選挙にわざわざ行く人は多くありませんから。地方都市では、投票に行かせるために、食べ物やイベントを用意したりして、投票所がまるで歓迎会のようになっていました。私がかつてソ連に住んでいた頃、これとまったく同じことが行なわれていました。選挙の日には普段の商店では買えないような品物が売りに出されていたのです。そういった光景は欧米や日本では見られません。ここまでやる選挙とは果たして何なのか…疑問に感じます」
ロシア国民が何よりも期待しているのは、経済状態の好転だ。プーチン氏が1日に行なった年次教書演説では、今後6年かけて貧困率を半分まで減らすと述べ、国民の生活水準を上げると強調していた。
また、袴田氏は、「プーチン氏やラブロフ外相のメンタリティそのものにも懸念を抱いています」と明かした。昨年11月18日、プーチン大統領はクリミア半島のヤルタで行なわれた、アレクサンドル三世(ロマノフ王朝13代皇帝)の記念像オープニング式典に出席し、アレクサンドル三世の偉業を褒め称えた。アレクサンドル三世は、農奴解放で有名な自由主義者の父・アレクサンドル二世と違って、「同盟国も裏切る。ロシアには2人の同盟者しかいない。それはロシアの陸軍と海軍だけだ」というフレーズを残したことで知られている。このフレーズは、銅像の台座の正面にしっかりと刻まれている。袴田氏は、「外の世界はすべて敵とみなし、自国の軍事力しか信じないという考え方は尋常ではありません」と話す。
ラブロフ外相は21日、日本を訪れて河野太郎外相と会談する。訪日を前に15日に行なわれたインタビューでは、米国が主導するミサイル防衛システムについて「イランや北朝鮮の脅威に対処するためではなく、ロシアを完全に包囲するために構築されている」と述べた。
袴田氏「日本人からすれば北朝鮮の核・ミサイルは極めて深刻な問題であり、真剣に脅威を感じています。しかしラブロフ氏は、日本が米韓と協力してミサイル防衛をすることに関して、北朝鮮の脅威は単なる口実にすぎない、本当のターゲットはロシアだと言っているのです。日本人は全くそう思っていないにもかかわらずです。ロシアがそうやって被害者意識を強めれば、相互理解はどんどん難しくなるでしょう」
安倍・プーチン両政権は、これまで安定した日露関係を築いてきた。プーチン氏の再選によって、この路線は踏襲されるのだろうか。
袴田氏「私は、安倍首相の、領土問題を解決し平和条約を締結して真に日露関係を正常化したいという熱意を高く評価しています。しかしロシア側に領土問題を解決しようという意図がないことが問題です。8項目の経済協力プランについて言えば、日本政府が公的資金(税金)を使い大型プロジェクトを実施するのなら、平和条約交渉と経済協力のバランスをとりながら、並行して進めるべきです。それでなければ国民が納得しないでしょう。いっぽう、アジアの国々には日本企業が投資したくなるような諸条件づくりに努力し、日本政府の後押しがなくても民間企業がリスクをとって進出しています。ロシアも、日本企業が自らのリスクで多く進出するように、もっと真剣に投資環境を改善すべきです」
袴田氏は、日露間の人的交流や文化交流が他の国に比べてあまりにも少ないとし、「今年は日露交流年でもありますから、日露の民間レベルでの交流を発展させていくことについては大賛成です。私自身も、ロシアにとって耳の痛いことでも、率直に意見交換していきたいし、わが耳に痛いことも謙虚に聞くつもりです」と話している。