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ロシア高等経済学校の世界経済・政治学部准教授で日本専門家のアンドレイ・フェシュン氏は、トランプ大統領との会談では、安倍首相には一枚の切り札があるとの見方を示し、次のように語っている。
「関税引き上げの問題で、トランプ大統領が日本政府との関係を方向転換すると可能性は少ない。しかし、安倍首相は、米国と中国の間で生じた貿易戦争に乗じたカードを切ることができる。2つの大きな経済圏間での貿易戦争により、米政府は同盟国の支援を求めることになるからだ。米国と中国との地政学的な対立の中、日本は2国間で、ある意味で緩衝剤となっている。
日本は毎年、米国に対し200万トンの鉄鋼を輸出している。トランプ大統領が安倍首相の示唆する内容を受け入れないとするならば、日本政府の回答は厳しいものになりかねない。世耕弘成・経済産業大臣は以前、WTO(世界貿易機構)の訴訟手続も辞さないと指摘している。
しかし、実際には日本政府は米国政府に対峙するような行動はとらないだろうとアンドレイ・フェシュン氏は推測する。
「理論的には、もちろん、日本政府はWTOに訴訟を起こすことができる。しかし、それはうまくいかないだろう。WTOは米国が指導的な立場にある機関で、そのため日本の利益となる結果が出されるかどうかは疑わしい。しかも日本は米国に異議を唱えたりはしない。これはTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの米国の離脱を思い返せばすぐわかる。米国の離脱は日本には手痛い不意打ちとなった。なぜならTPPの枠内での日米協力は、トランプ大統領のまったくバランスのとれていない政策にあっさり『犠牲』にされたからだ。WTOへの訴訟の代わりに日本は、日本製品への関税引き上げ状況から脱却するため、他の市場開拓など、別の方策を考えるのではないか。」
おそらく日本は、トランプ大統領との日本製品への関税撤廃交渉に成功せずとも、自国の金属製品のための新たな市場開拓においても、こうしたセオリーに則うだろう。