日本初の氷を砕くLNG船、ロシアの最果てから輸送を開始:北極海航路の大きな可能性

ロシアが国の威信をかけて進めている「ヤマルLNGプロジェクト」の一翼を担っているのが、日本の大手海運会社「商船三井」が所有・運行する新造の砕氷LNG船「ウラジーミル・ルサノフ」だ。ロシア北部のヤマル半島にあるLNG基地から、北極海航路を活用し、世界中に輸送する。同船の初就航は3月29日で、ヤマル半島のサベッタ港を出港し、LNG輸送を開始した。
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「ウラジーミル・ルサノフ」は、2014年に発注され、昨年12月に完成披露と命名式が行なわれたばかり。その後、3週間にも及ぶアイストライアル(砕氷性能試験)を実施した。この試験航行で同船の単独砕氷能力が確認され、ヤマルLNGプロジェクトに正式投入されることとなった。

商船三井は「ウラジーミル・ルサノフ」以外にも2隻の砕氷LNG船を発注済で、順調に建造が進んでいる。第二船は今年9月、第三船は来年9月にプロジェクトへ投入される予定だ。

商船三井、北極海の氷を砕いて進むLNG船をお披露目
ヤマルLNGプロジェクトは北極海航路における過去に例のない大型プロジェクトだ。商船三井の橋本剛(はしもと・たけし)取締役専務執行役員(エネルギー輸送営業本部長)は、「ウラジーミル・ルサノフ」がサベッタに初入港した喜びについて次のように話している。

橋本氏「2014年に参画を決めたヤマルLNGプロジェクトも、これまでのところ大きなトラブルもなく、この初入港まで計画通り進めてくることができて、感慨無量です。いよいよこれから本船のオペレーションが開始されることになりますが、ここまでのプロセスで形成してきたチームワークを生かしながら、チャレンジングなプロジェクトを遂行していきたいと考えています。ヤマルLNGプロジェクトは計画通り開始されましたが、周辺地域では、『Arctic LNG 2』等の大規模LNGプロジェクトの投資も予定されており、多くの天然ガス資源が眠る北極圏へのアクセスの重要性は増しています。ヤマルLNGプロジェクトでの経験・ノウハウを生かしながら、今後も北極海のLNG輸送に積極的に取り組んでいきたいと考えています」

サベッタ港にあるLNG貯蔵タンク

北極海航路の利用は、文字通りアジアと欧州との距離を縮めるだけでなく、航行時間の短縮によるCO2排出削減にもつながる。また、従来は不可能と思われた航路の開拓は、ロシアだけではなくカナダなど、北極海の他地域に眠る膨大なエネルギー資源を輸送できる技術があるという証明にもなる。今後、日本を始めとするエネルギー輸入国は、エネルギー調達の選択肢が増え、LNG輸送のニーズはますます伸びそうだ。

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