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米誌ナショナル・インタレストに寄稿した米国のロバート・ファリー氏は、全世界で史上最悪の空母を5隻選び、「アドミラル・クズネツォフ」をそこに加えた。
この評価がどれほど正当で、ロシアの空母はそれほど最悪なのか?ロシアの軍事専門家ワシリー・カシン氏がスプートニクのインタビューに答えた。
事実のみを見れば、「アドミラル・クズネツォフ」を史上最悪の空母に並べる根拠はない。この空母によりロシアは厳しい1990年代と2000年代初頭に甲板から離陸するパイロットの育成システムを自国で作ることができた、有益な艦船だ。「アドミラル・クズネツォフ」の運用実績により、ロシアは空母用技術と装備を輸出できたため、経済的にもプラスとなっている。
2000年代と10年代初頭、ロシアはインド海軍のため、古いソ連製航空巡洋艦「アドミラル・ゴルシコフ」をベースに空母「ヴィクラマーディティヤ」へと改修した。艦船だけでロシアは50億ドル以上を得た。さらに、インドはロシアから艦載機「MiG-29K」「MiG-29KUB」や、インド国内でもう1隻の空母を建造するためのサービスと装備を購入した。
「アドミラル・クズネツォフ」は西側の空母に比べ、海外の介入には全く適していない。なぜなら異なるコンセプトで建造されたからだ。この空母の課題は原子力ミサイル潜水艦の巡回海域の防衛と、その潜水艦に対する先制攻撃を防ぐことにあった。空母はつまり、ソ連海軍の核戦力の防御要素だったのだ。「アドミラル・クズネツォフ」は艦上戦闘機「Su-33」を搭載可能で、強力なミサイル防衛(MD)システムを持ち、射程550キロの超音速対艦ミサイル「グラニート」12発を装備している。こうした装備の空母が守る領域を突破することは、どんな相手でも難しくなる。
「アドミラル・クズネツォフ」を、タイの空母「チャクリ・ナルエベト」のように華々しい成果を持たない空母とともに史上最悪の空母のリストに入れることは奇妙なことだ。また、技術的問題の数はフランスの空母「シャルル・ド・ゴール」のようにより高額な空母と似たようなものだ。一定の設計上の欠陥はあるものの、「アドミラル・クズネツォフ」は戦闘の観点から有益で効果的な艦船であり、さらなる勤務と成功が運命づけられている。ロシア海軍はこうした船や、1990年代の厳しい経済状況の中でこの空母を支えてきた人びとの英雄的な努力を十分に誇ってもよい。
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