米、領土紛争の公正な仲裁人としてアジア太平洋を武装

第7回モスクワ国際安全保障カンファレンス「MCIS-2018」が終了した。協議されたテーマに、朝鮮半島危機の要因としてのアジア太平洋地域の不安定性があった。
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国際的リーダーシップを保つため、米国はアジア太平洋地域でも武力権の適用を放棄しそうにない。同地域では米国、ロシア、中国という核兵器を所有した軍事政治大国の国益が絡み合っている。このため、米国は同地域での同盟国の武装を進め、軍拡競争を加速させている。

こうした見方を、ロシア連邦軍参謀本部情報総局のイーゴリ・コスチュコフ第一副長官が示し、これを支持する複数の論拠を出した。中国抑制とロシアへの対抗のため、米国は同地域で日本、韓国、オーストラリアとのコントロール下にある軍事・政治的同盟を強化しているという。

「米国第一」は世界にとって危険なことであもり、チャンスでもある
「現在、アジア太平洋地域では大型軍事基地が50箇所以上あり、中には200以上の米国の軍事施設がある。空母打撃群もそこに含まれる。うち1つは日本に常時配備されている。同地域のあらゆる地点で迅速に展開するため、米国は40万人以上の兵士からなる部隊をつくった。今日の段階で、米国防総省は韓国や日本でミサイル防衛(MD)システムを活発に配備している。これは米国がグローバルに配備するMDシステムの一部になる。MDシステムのもとでこれらの国の国家偵察兵器や戦闘兵器が統合される。アジア諸国は活発に米空軍との共同訓練に参加しており、訓練は年を追うごとに拡大している。この1年半でアジア太平洋地域では30を超える米国との共同訓練が行われた。テロや海賊対策訓練の名目で、訓練では局地的ないし地域的紛争における米国とその同盟国の共同軍事力行使がしばしば訓練されている。」

米国の説明によると、こうした力による行動は外交努力を効果的に補完し、将来的に交渉を成功させる環境を作る助けになる。その1つに、朝鮮半島危機の解決がある。

5月までに予定される米朝首脳会談の肯定的な結果として、トランプ米大統領は「世界にとって最も素晴らしい取引ができるかもしれない」と述べた。しかしトランプ氏の多義的な発言は、首脳会談終了後にのみ評価できるとコスチュコフ氏は指摘する。

米太平洋軍司令官、中国との戦争に備えるよう呼びかけ
「今まで米国は口先だけで北朝鮮との会談の用意があると述べ、実際にはあらゆる方法でこれを潰してきた。米国による経済制裁は真っ直ぐに金正恩体制の活力を弱め、北朝鮮幹部を武力行使によって排除する用意を誇示してきた。米国のこうした戦術は、核ミサイル計画の続行という冒険的で非常に危険な措置へと北朝鮮の背中を押すだけだった。だが、この事実さえ米国は自らの国益にのみ利用し、国際的に展開するMDシステムの一部としてアジア太平洋地域でのMDシステム配備へ進んだ。北朝鮮の脅威により、ホワイトハウスは同盟国が軍事費を増大させ、米国製の兵器を購入するよう促進することができた。結果、朝鮮半島情勢は何年もの間、地域戦争の境界線上でバランスをとっている。米国のこの危険な政策の結果は、ミサイル核戦力の増大における北朝鮮の目覚ましい進歩となった。ホワイトハウスが北朝鮮からの首脳会談への合意を制裁の成果としてのみ認識していることは驚くべきことだ。」

朝鮮半島危機に加え、アジア太平洋地域では地域的な係争が続いており、時に加熱する。状況によって、これらの係争は軍事的緊張の高まりにつながりかねないとコスチュコフ氏は述べる。

「例として、南シナ海で常に起きる事件や航路の管理をめぐる争いが挙げられる。米国は日中間やベトナムとフィリピンの領土を巡る対立を国際化しようとしている。米国は公平な仲裁人として振る舞うと同時に、同盟国やパートナー国を米国とのより緊密な連携へと促している。」

2017年、米国で制裁によって米国の敵に対抗する法が成立した。米国が愛する原則「強さによって平和を保つ」(preserving peace through strength) の結果は中東や北アフリカのホットスポットに見られる。太平洋地域の歴史にもまた、米国が直接介入した結果始まった血濡れた戦争や衝突の例が多くある。朝鮮半島やベトナムでの戦争の結果は今に至るまで人びとの記憶から拭い去られていないとコスチュコフ氏は指摘する。

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