また英国とEUの骨の折れる交渉は、果てしなく続く欧州の移民問題を背景に行われており、EUの古い加盟国とポーランド、ハンガリーといった新たな加盟国間の意見の相違の高まりや、ロシアというよりはむしろ米国の新孤立主義によって引き起こされた安全保障問題もある。スクリパリ事件をめぐる運動は、これらの問題解決に役立つのだろうか?あるいは世論の関心をしばらくの間別の話題に向ける必要があるのだろうか?いずれにせよ、スキャンダルに対する世界の指導者らの反応は、現代世界における政治的勢力配列について結論を出すのを可能とする。
- 勢力配列
欧州諸国はロシア外交官1~3人の追放に限ったのに対し、米国はロシア外交官60人を国外追放、在シアトル・ロシア総領事館も閉鎖し、最も大規模な措置を講じた。このようにして米国は、自国は西側諸国の集団連帯を示すことにおける主要な受益者であり、英国はこの政治的芝居における司会者にすぎないことをデモンストレーションした。
なお露米関係悪化の新段階は、開催される可能性のあるプーチン大統領とトランプ大統領の2国間会談に向けた準備には影響を与えていない。これは米高官による外国人ジャーナリスト向けのブリーフィングで強調された。米高官は「首脳会談に関する3つ目の質問への答えだが、これはその準備には影響していない」と述べた。
ロシアの戦略的同盟国である中国はロシアへの攻撃を批判した。もちろんBRICSや上海協力機構の他の加盟国による外交的措置も一切ない。EUとNATOを除く世界は、この件に関して米国とその大西洋の同盟国に加わってはいない。別の言い方をするならば、米国が指導的地位にある範囲は、EU、カナダ、オーストラリアと今や一新されたということだ。この範囲はオバマ政権下と比べると大幅に縮小した。
- 新構成における日本の位置とは?
この問題は日本の政治家らを1カ月以上にわたって悩ませているようだ。トランプ大統領は世界における米国の新たな役割について十分明確に語った。北朝鮮情勢の急速な展開は、米国にとって自国の利益は日本に対する同盟国としての責任よりも優先であることをはっきり示している。
スクリパリ事件に対する日本の静かな反応と、外交官追放運動には加わらずに無視するという日本の態度は、これと関係しているのかもしれない。今年5月の安倍首相のサンクトペテルブルク訪問に向けた準備も進められている。結局のところ、政治的計算に加えて、常識があるのだ。