日中経済の前進は期間限定?「日本と中国では求めるレベルが違いすぎる」

9日、第7回日中韓サミットが東京で開催され、あわせて日中首脳会談も行なわれた。日本は、韓国とは経済分野の進展が見られなかったものの、中国とは「一帯一路」に関する委員会設立、スワップ協定再開、福島県産食品の輸入規制撤廃交渉、トキのつがい贈呈、共同映画制作など、様々な分野で協力が確認された。中国の李克強首相は「両国関係は正常な軌道に戻った」と発言したが、冷え切っていた日中関係は本当に復活したのだろうか。両国の思惑について、日本と中国の専門家にそれぞれ話を聞いた。
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中国経済に詳しいニッセイ基礎研究所の三尾 幸吉郎(みお・こうきちろう)上席研究員は、ようやく明るい見通しが感じられたと話す。

三尾氏「昨年の春ごろから、安倍首相は中国に対して前向きな姿勢を見せ、中国側もそれに応える形で、雪解けムードができていました。今回、雪解けから協力関係へと移行するための、一歩前進ができたと思います。中国が推進する『一帯一路』については、安倍首相の訪中に合わせて第一回目の協議が行われる予定です。今まで言葉の上では協力する、と言っていましたが、具体的な動きはありませんでした。

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また今回、協定が結ばれた日本企業への「人民元適格海外機関投資家」(RQFII)の資格付与などは、日中関係が正常であれば何年も前に実現できていたはずです。しかし、そういった懸案が一つ一つ片付いていることは評価できます。全体的に言って、遅れていたものを取り戻してきており、明るい兆しが見えてきました。」

中国は今年4月、鉄鋼製品等に高額の輸入関税を課した米国への対抗措置として、米国からの主要な輸入品に報復関税をかけた。さらに日韓に対し、サミット前から「米国の保護主義に対抗しよう」という強いメッセージを送り続けてきた。日中韓はサミットにおいて東アジア地域包括的経済連携(RCEP)や日中韓FTAの交渉を加速することで一致したが、日中の間には温度差が感じられる。山西財経大学の李凱(リー・カイ)准教授は、日中韓の自由貿易は中国よりも日本や韓国にメリットがあると強調する。

李氏「日中韓の自由貿易が実現すれば、EUやNAFTAに対抗できる、非常に魅力的なものになります。15億人の人口を抱える3国には、人もいれば、お金もあるのです。中国の優越点とは、市場の大規模性であり、中国の役割と責任は明らかです。日本の経済成長は何年も停滞したままですし、近年の韓国の財閥系企業の状況も芳しくありません。しかし中国は日本と韓国を活性化させ、両国が困難な経済状態から抜け出すのを助けることができます。日韓は、ハイペースで成長を続けている中国よりも、3国の自由貿易によって多くの恩恵を受けるでしょう。すでに韓国は、中国との自由貿易のおかげで、台湾を上回る経済成長をしています。」

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しかし三尾氏は、日中が足並みを揃えられるのは今だけで、米国の出方次第でひびが入るだろうと指摘している。

三尾氏「日本と中国では、求めている自由貿易の度合いが違います。中国は、1人あたりGDPが9000ドル程度と、日本の約5分の1で、WTOの枠組みの中では発展途上国として優遇を受けている立場です。日本はより高いレベルの自由化を求めており、知的財産権の保護などの領域に重点を置いています。関税の領域で優遇を受けている中国とは、立場が異なります。

日中は、米国が保護主義をとり二国間交渉を重視している現段階では共同歩調をとれますが、トランプ氏が大統領でなくなり、米国の新しいリーダーが方針転換したとき、日中間には溝ができるかもしれません。知的財産権の問題で日米は共同歩調をとるでしょう。米国は本来、自由化度合いのレベルが高く、自由化の体制も整っている国です。いずれにしても日本は、米国、中国といった両大国のわがままにふりまわされずに、毅然として対応していくべきです。」

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