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女子フィギュアにおける難易度の急上昇は五輪金メダルの保持者エフゲニア・メドベージェワ(ロシア)によって引き起こされた。メドベージェワはプログラム後半で披露する難度の高いジャンプで有名になり、技術点に10%の加点を受けていた。彼女の例に倣ったのが、アリーナ・ザギトワだ。しかしアシュリー・ワグナー(米)は、ザギトワが前半に時間をつぶし、後半にジャンプを詰め込む混沌とした得点重視のスタイルだと非難。
疲れが出てくるプログラム終盤にジャンプを組み込まない選手も多い。だがザギトワは飛び切り、平昌五輪で金メダルを手に入れた。各ジャンプごとに加点が入った。ザギトワとメドベージェワのプログラムの脅威的な複雑さにより、両選手は他選手の手の届かない結果を手にした。
ショートとフリーの結果、ザギトワは239.57点を取り1位になった。メドベージェワは238.26点で2位となった。銅メダルを手に入れたのはケイトリン・オズモンド(カナダ)で、7点離された231.02点だった。
ISUによると、新ルールは「複雑なジャンプ競争」から選手を守り、プログラムをよりテクニックと芸術性の間でバランスの取れたものにする。
「複雑な要素はスポーツマンにとって最も確かなモチベーションだ。これこそがフィギュアスケートの進化を保障している。私の活発なコーチ人生が、際限なくプログラムを複雑に出来た時代にあったことは嬉しく思う。これはロシアのフィギュアスケートが完全に近づき、前に進み、複雑さに対して選手が受取るべき追加点を受取る助けになった。ISUの決定は、自らの唯一無二な性質によりこうした複雑なプログラムを演じることができるフィギュアスケート選手にとって十分公平であるとは思えない。」
今の世代の選手を専門家たちは「ウルトラC世代」と呼ぶ。ウルトラCとは、実行するには多大な労力を要する極めて複雑な技を指す。それにはトリプルアクセルやまだ誰にも達成されていない4回転ジャンプ、ペア競技の4回転ツイストリフトが含まれる。
複雑な要素は怪我を負う危険性があまりに高いため、専門家の中からは連盟の出した新ルールは選手の健康を慮ってのものと指摘する声もある。ところがタラソワ監督はこれとは異なる論拠を提示した。
「フィギュアスケートは体育ではない、これはスポーツなのだ。このためいかなるスポーツも最高レベルに達したものは怪我なしにはすませられない。この他私がはっきり言えるのは、正しいアプローチを行えば複雑な要素は芸術的な要素を損ねることは決してないことだ。このことは先日の平昌五輪で金、銀のメダルに輝いたアリーナ・ザギトワとエフゲニア・メドベージェワの2人の演技が私たちに証明してくれた。芸術性と非常に複雑な技術は2人の演技のなかでは見事に融合していたではないか。これに対しては点数を引くのではなく、補足せねばならない。今回の連盟の決定でフィギュアの発展は10年も前の状態に引き戻されてしまう。」
五輪の2度の金メダリストで世界選手権の2度の優勝者である日本の羽生結弦選手はこのルール改正に対し、自分たちは試合をしていくのみであり、規則が変わればこれをチャレンジと受け止め、戦っていくという考えを示している。
国際スケート連盟のセビリア会議は国際競技への参加年齢の引き上げ問題を検討することを退けた。このことから非常に近いうちに、次のどこかの世界選手権で世界はロシアのアレクサンドラ・トルソワの姿を見ることになる。トルソワに道を開いたのは彼女の才能だけではない。彼女が行う複雑な「ウルトラC」の要素もこれに手を貸したのだ。