米の対露制裁 本当の脅威?中間選挙前の政治ゲーム?

米上院議員らが、対露制裁を強める法案を策定した。草稿はロシアソブリン債の取引禁止に加え、ロシアのエネルギー・金融分野への制裁強化を求めている。スプートニクは専門家らに、法案が採択された場合のロシア経済へのリスクを評価してもらった。
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今、法案はまだ草案であり、採択されない可能性もある。ロシア高等経済学院の専門家で日本研究家、そしてNHKやTBSモスクワ支部の元職員でもあるアンドレイ・フェシュン氏はそう述べた。

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ロシア経済への悪影響は当然あるだろう。まず、ロシア国債の価格が下落し、ルーブル需要が落ち込み、インフレが起きる。つまり、痛みを伴う打撃になる。しかし、ロシア経済を灰燼に帰すものではない。大惨事は起きない。その代わり、信頼できる経済メディア、ブルームバーグは2月はじめ、新たな対露制裁のマイナスの影響が国際金融市場も不安定にする可能性があると複数の記事で警告していた。 «Treasury Warns of Upheaval If U.S. Sanctions Russian Debt»(財務省、ロシア国債への制裁発動なら激震と警鐘)との見出しの記事すら配信した。

だが、ロシアに対する米議員のレトリックは、米露が新冷戦時代に突入したという証拠をより多く提出する。冷戦は何より経済的なものだが、米国が勝者になるとは限らないとフェシュン氏は見る。

現在の露米対立は多くの点で、1989年に天安門広場で起きた悲劇的な事件のあとの対中制裁の歴史を思い出させる。中国は世界で実質的に孤立し、膨大な圧力が加えられた。中国経済の崩壊が見込まれていた。だが、そのときに中国の地方で大きな成長が始まり、それだけでは終わらなかった。中国は制裁をうまく乗り越え、より強くなって抜け出した。今日のロシアも同じ道を進んでいると言うことができる。

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最悪のシナリオが起き、対露制裁が発効した場合、ロシア側は当然のことながら、米国債に報復措置を取るだろう。対露レトリックを背景に、ロシア政府はすでに米国債保有量を10分の1に激減させたとフェシュン氏は締めくくる。

現在、米議員らの草案は宣言的で国内向けだと、ロシア経済誌『エクスペルト』のアナリスト、アンナ・コロレワ氏は指摘する。

11月、米議会で選挙が行われる。このため、次の数カ月は米国内の対露レトリックは強まる一方だろう。対露制裁のテーマは米国で言語的な投機の対象だ。議員は今、PR競争でこのテーマを誇大広告している。

だが、選挙前の政治的ヒステリーの拡大には、市場という要因を無視できないとコロレワ氏は見る。この市場の要因に基づいてブルームバーグは、新たな制裁の影響は予想が難しく、その効果はロシアだけでなく、米国の投資家や企業にも影響する可能性があると指摘した。

劣らず重要なほかの市場要因もあるとコロレワ氏は述べる。

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当然、世界金融市場へのドルの影響は大きい。ドルはすべての人にとっての世界的な準備通貨だからだ。ルーブルは稼ぐことも損失も出せるリスクが高い通貨だと考えられている。しかし、ロシア財務省はルーブルで国債を発行している。だがルーブル国債へはちょうど外国人が投資している。ドルという流動資産をルーブルに変換して、価格差で儲ける人びとだ。このため、対露制裁は何より、投資家の資産プールであるヘッジファンドに打撃を与える。

海外の投機家・投資家の金の無秩序な出入流は避けられないルーブルの弱体化を招く。だが致命的にはならない。また、制裁は、法案への署名以降に作られる新たな国債だけに関係する可能性もあるとコロレワ氏はまとめる。

ロシア国債への制裁発動の可能性に対するロシア財務省の反応はまだかなり懐疑的なものだ。同省は、こうした提案は以前も出されていたが、結局実現しなかったと指摘する。

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