極東と日本をつなぐ鉄道は、ロシアに新たな収入をもたらす

今週ウラジオストクで開催の東方経済フォーラムに参加する日本のシンクタンク「野村総合研究所」の中島久雄氏が、通信社スプートニクに、シベリア鉄道を日本まで延伸する見通し、投資先としてのロシアの魅力を高めるために必要なことなどについて語ってくださった。
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スプートニク日本

輸送分野・鉄道開発分野での日露協力の見通しをどのように思いますか?

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輸送分野・鉄道開発分野での日露協力としては2012年から国土交通省とロシア運輸省による「日露運輸作業部会(次官級)」をはじめとした様々な政策対話を日本とロシアとの間で交互に開催しており、詳細な議論を行うための専門家会合を設置するとともに、各課題の解決に向けた進捗状況について、両国議長間で定期的にフォローアップを行っています。

具体的なテーマとしては、「シベリア鉄道、極東港湾の利用促進」、「北極海航路の発展」、「物流情報システムの連携による物流高度化」、「空港ターミナルの建設・運営」、「航海士又は機関士の資格である海技資格の相互承認」などが議論され、実現に向けて民間企業の参画によるパイロット事業が既に始まっています。

シベリア鉄道

このような輸送分野・鉄道開発分野での日露協力は今後も益々活発・進化して行くと思います。

日本とロシアの極東を鉄道でつなぐことの見通し、実現の可能性をどう思いますか?実現できたら、両国の経済にとってどのような効果が考えられますか?

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現在、様々な場で日本とロシアの極東を鉄道でつなぐプロジェクト構想が議論されています。これが実現すれば例えば日本からロシア・欧州への輸送時間・コストの削減に繋がります。また、シベリア鉄道に日本の先進的なコールドチェーンインフラを導入することによって、東から西には、極東の水産資源をモスクワをはじめとするロシアの需要地域へ、西から東にはユーラシア経済圏の新鮮な野菜・果実を極東・日本経由でAPEC地域への輸出が促進され、ロシアの外貨の節約と新たな獲得にも貢献すると期待されます。

一方でシベリア鉄道の日本への延伸に伴う様々な負担の正確な把握・理解は現在進行形で進められています。

私はこのような日本とロシアの極東を鉄道でつなぐことによるロシア側のメリット、日本側のメリットを定量的に明確にすると同時に、その実現に向けて何が課題であるのか、その課題を解決するために日露双方は何をすべきであるのかをしっかりと議論することが重要だと考えます。

ロシアは投資先としての魅力をアップさせるために何が必要だと思いますか?アドバイスをお願いいたします。

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投資家は投資判断の材料となる正確な情報開示を求めます。投資先への魅力をアピールするためには、何よりも投資対象としての事業が産み出すCash Flow情報を明らかにすることだと思います。どんなに美しい絵(完成予想図)を描いても、Cash Flow情報が提示されないような投資説明会では、投資家は見向きもしないのです。そのためには事業に対する需要と供給(競合)の現状と将来のしっかりとした見通し(マーケット分析)とそれに基づくビジネス・モデルの構築、初期投資額(CAPEX:Capital Expenditure)や運用コスト(OPEX:Operating Expense)の正確な見積りに基づく生涯コスト(LCC:Life cycle cos)の最小化を実現する資金調達・運用スキームの構築が必須です。

さらなる発展のためには何が不可欠でしょうか?促進にブレーキをかけているものは何だと思いますか?

輸送分野・鉄道開発分野での日露協力は様々な分野で行われておりますが、未だパイロット事業の段階です。私は更なる発展としてこれがビジネスとして定着することが必要だと思います。

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そのためには日露双方によるWIN-WINの仕組み(国際標準化・規格化、簡素化など)作りが必要不可欠です。

国際標準化・規格化の具体例としては、輸送分野・鉄道開発分野での国際規格(ISO:International Organization for Standardization、IEC:International Electrotechnical Commission、ITU:International Telecommunication Unionなど)適用に向けた取組みなどが挙げられます。
また、簡素化の具体例としては、日露二国間での船舶設計エンジニアリング会社の共同設立によりロシアでの認証手続きの簡素化が実現しています。
私はこのような輸送分野・鉄道開発分野でのWIN-WINの仕組み(国際標準化・規格化、簡素化など)作りが、今後益々活発化し発展していくことを期待します。

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