スプートニク日本
ロシアで初のパペットアニメが作られたのは帝政時代の1906年。マリインスキー劇場のバレエ振付師アレクサンドル・シリャエフが12体の人形を踊らせて制作したものだった。その6年後の1912年にはロシア初の長編アニメーション映画『麗しのリュカニーダ』が世に出る。これは生物学者のヴラジスラフ・スタレヴィチが制作した昆虫の報われない愛の物語で、当時、一大センセーションを巻き起こした。画面を見つめる人達は映し出されているのは作られたフィギュアではなく、本物の自然を撮影したものと信じて疑わなかったと言われている。
「だいたいこのフェスティバルでは特定の国に焦点を当てることは今まではありませんでした。でも今回は故意に日本のプログラムを別枠にしました。もちろんロシア、日本相互交流年にちなんでの決定です。これは素晴らしいことです。フェスでは伝説のスタジオ・ジブリ、長編の新作、若手の特集が上映されます。この他スペシャルゲストとしてロシア人アニメ作家のユーリー・ノルシュテインが日本のアニメについての講演を行います。ノルシュテインにとっては日本というテーマはとても近いもので、日本のアニメを愛し、よく通じていますし、芭蕉の俳句をテーマに作品も作っています。」
「日本のアニメが人気なのはロシアに限りません。世界中が日本アニメの虜です。これはもうサブカルチャーでれっきとしたスタイルを作り上げており、独特のカノン、トラディションがあります。日本のアニメは日本文化と切っても切り離せません。日本の美的感覚、哲学、世界観、人道的な伝統が密接に関係しています。商業的な側面は群を抜く技術パフォーマンスに裏付けされています。スーパーグラフィック、カラーソリューション、ダイナミズム、あらすじの表現、そして実に魅力的な主人公たち。これをなんとか真似したいと思う気持ちから生まれたコスプレは、今やロシアで大きな人気を博しています。」
ボリショイ・アニメフェスの用意したプログラムは豪華版だ。監督を囲む会からマスタークラス、展覧会、学生用ラボ、アニメ資料、音楽の夕べまでアニメ好きなら垂涎のイベントが目白押し。それだけではない。好評につき今年も夜23時に上映開始で夜明けまで続く「アニメーション・ミッドナイト」がリピートされている。