日露首脳会談「極めて重要な進展あった」日本は妥協のシグナルを送ったのか?

14日、シンガポールでプーチン露大統領との通算23回目の日露首脳会談を終えた安倍晋三首相は、「平和条約締結問題について相当突っ込んだ議論を行った」と明かした。会談で両首脳は、1956年の日ソ共同宣言を基礎として、平和条約交渉を加速させることで合意した。この合意は何を意味するのか、ロシア政治に詳しい上智大学の上野俊彦教授に話を聞いた。
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上野氏は、プーチン大統領が繰り返し述べてきた「1956年の日ソ共同宣言を基礎にして平和条約を締結する」という主張に安倍首相が合意したことは、極めて重要な進展だと指摘している。

上野氏「1956年の日ソ共同宣言は、平和条約締結後に歯舞諸島と色丹島を日本に引き渡すと述べているだけで、国後島と択捉島について言及していません。そのため、日本政府・外務省は、『1956年の日ソ共同宣言を基礎に』というプーチン大統領の持論に合意してしまうと、国後島と択捉島の帰属の問題が棚上げされてしまい、事実上、国後島と択捉島については交渉できなくなると考え、強い警戒心を持ってきました。

露日首脳、1956年の共同宣言に基づいて交渉を活性化することで合意 - ペスコフ露大統領報道官
しかし今回、安倍総理が一歩踏み込んで、日ソ共同宣言を基礎に、というプーチン大統領の考えに合意したことは、少なくとも、日本側がこれまでの立場に必ずしも固執しない、という妥協の可能性を示すシグナルである、と見ることができると思います」

また上野氏は、日本政府がいわゆる「二段階返還論」の方向に舵を切り始めた可能性もあると指摘する。二段階返還論とは、「歯舞諸島と色丹島の返還」と「国後島と択捉島の帰属についての協議の継続」という二点を条件に、平和条約を締結するという考え方だ。日本側が繰り返し主張している「北方四島の帰属の問題の解決」は、「四島の返還」と同じ意味ではないところが、ポイントだ。

上野氏は、もし日本政府が「二段階返還論」の方向に舵を切ったとすれば、第一段階では、四島返還には必ずしも固執しないので、日露が互いに歩み寄り、平和条約締結交渉が実る可能性が大きくなると見ている。

しかしこの歯舞諸島と色丹島の返還を優先するというやり方は、日本国内の反発が予想される。「四島をあきらめたのか」という批判が出て、安倍首相に対する風当たりが強くなるだろう。

安倍首相、年明けにもロシアを訪問
上野氏「こうした批判に対して、安倍総理が「『1956年の共同宣言を基礎に』というのは、歯舞諸島と色丹島の二島だけで交渉を終わりにし、国後島と択捉島の帰属の問題を棚上げにするというものではない」と、保守派や強硬派を説得できるかどうかが、今後の交渉の進展にかかっていると思います」

安倍首相は、今月30日からアルゼンチンで開かれるG20に参加し、再びプーチン大統領と会談する。また、年明けにもロシアを訪問し、日露首脳会談を行う。「今回の合意の上に、私とプーチン大統領のリーダーシップの下、平和条約交渉を仕上げていく」と決意を述べた安倍首相は、自分の任期内に領土問題に終止符を打つという姿勢を強調している。

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