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上野氏は、プーチン大統領が繰り返し述べてきた「1956年の日ソ共同宣言を基礎にして平和条約を締結する」という主張に安倍首相が合意したことは、極めて重要な進展だと指摘している。
上野氏「1956年の日ソ共同宣言は、平和条約締結後に歯舞諸島と色丹島を日本に引き渡すと述べているだけで、国後島と択捉島について言及していません。そのため、日本政府・外務省は、『1956年の日ソ共同宣言を基礎に』というプーチン大統領の持論に合意してしまうと、国後島と択捉島の帰属の問題が棚上げされてしまい、事実上、国後島と択捉島については交渉できなくなると考え、強い警戒心を持ってきました。
また上野氏は、日本政府がいわゆる「二段階返還論」の方向に舵を切り始めた可能性もあると指摘する。二段階返還論とは、「歯舞諸島と色丹島の返還」と「国後島と択捉島の帰属についての協議の継続」という二点を条件に、平和条約を締結するという考え方だ。日本側が繰り返し主張している「北方四島の帰属の問題の解決」は、「四島の返還」と同じ意味ではないところが、ポイントだ。
上野氏は、もし日本政府が「二段階返還論」の方向に舵を切ったとすれば、第一段階では、四島返還には必ずしも固執しないので、日露が互いに歩み寄り、平和条約締結交渉が実る可能性が大きくなると見ている。
しかしこの歯舞諸島と色丹島の返還を優先するというやり方は、日本国内の反発が予想される。「四島をあきらめたのか」という批判が出て、安倍首相に対する風当たりが強くなるだろう。
安倍首相は、今月30日からアルゼンチンで開かれるG20に参加し、再びプーチン大統領と会談する。また、年明けにもロシアを訪問し、日露首脳会談を行う。「今回の合意の上に、私とプーチン大統領のリーダーシップの下、平和条約交渉を仕上げていく」と決意を述べた安倍首相は、自分の任期内に領土問題に終止符を打つという姿勢を強調している。