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村上さんの作品は50カ国以上に翻訳され、日本国内及び海外でもベストセラーとなっており、外国の読者にとっては現代日本人の世界への窓口となった。
ロシアでは1998年にドミートリー・ コヴァレニン氏の翻訳で『羊をめぐる冒険』が出版された後、村上さんはすぐに人気を博した。翻訳は見事な出来栄えであることが認められ、その後も村上氏のほとんどの作品がロシア語に翻訳され、出版された。村上さんはロシアの読者たちからこれほどの人気を獲得した理由について、ガーディアン紙のインタビューで、次のように語っている(ロシア語からの翻訳)-
「私はソ連が崩壊した1990年代にロシアで非常に人気がありました。人々は大きな混乱を抱えていました。混乱の中にいる人々は、私の作品を好むのです… ドイツでも同じようなことが起こりました。ベルリンの壁が崩壊して混乱があったときも、私の作品が好まれました」
ロシアにおける「村上ブーム」は、何千人ものファンたちを結び付けた。ファンたちは、村上さんのロシア語サイトを作成し、新刊が出るのを今か今かと待っている。近いうちにも村上さんの最新刊『騎士団長殺し』のロシア語翻訳版が発売される見込み。モスクワに拠点を置く出版社「エクスモ」は、2019年初頭に発売することを約束した。
「エクスモ」は村上さんを、芥川龍之介、夏目金之助、森鷗外、谷崎潤一郎、太宰治、三島由紀夫、川端康成、大江健三郎などの日本の文学界の巨匠たちと同列に扱っている。村上さんはもう何年も前からノーベル文学賞候補として名前が挙がっているが、村上さん本人はあまり関心がないように思われる。村上さんが関心を持っているのは、あらゆる偉大な作家と同じように、人間の心の片隅にある闇の部分の研究だ。世界中にいる村上さんのファンたちが、同氏の新刊を心待ちにしており、その需要は保証されている。もし村上氏さんが電話帳を書いたとしても、それは文学の傑作となるであろうと考えられているのには理由がある。