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生前退位は例外事項なのか
直近100年間で、世界のいくつかの王家において、王が自身の意思により退位している。その最も早い有名な例が、1936年の英国のエドワード8世の退位である。彼は、離婚経験のある米国のウォリス・シンプソン夫人と結婚するために、英国王の座を捨てた。1964年11月、ルクセンブルクのシャルロット大公は、長男のジャンに大公位を譲って退位している。そしてこのジャン大公も、2000年長男のアンリに譲位した。アジアでは、カンボジアのノロドム・シアヌーク国王が二回、1941年から1955 и年そして1993年から2004年の間、王位を譲っている。21世紀に入ってからも、そうした例は枚挙に暇がない。2013年には、ベルギーのアルベール2世が、国民に退位を伝える緊急メッセージをテレビで流した。日本の天皇陛下がが退位の「お気持ち」を示された理由は、御高齢となり「象徴としての公的な活動を続けることが困難となることを深く案じておられる事」である。
これまで挙げた例からも分かるとおり、自身の意思での退位は世界の君主のの中でもよく見られる。日本の天皇家でさえ、かつてそうした例があった。先例のうち最初の一つが、200年前、1817年に譲位した光格天皇である。ではなぜ、今上天皇の退位が、前例のないものとして受け止められているのだろうか。
「日本において、新しい天皇が即位する時は、前の天皇が亡くなられた時だという伝統が壊されようとしている。時が進めば、似たような状況が繰り返されるかもしれないという考えもある。それゆえ、多くの白熱した議論が生じている。ある議員らは、今上天皇に限った法律が不可欠だと考え、別の議員らは、将来、別の天皇が同様の状況になったときに適応できる普遍的な法律が必要だと強く主張している。」
結局、今上天皇の退位に向けては、皇室典範特例法が制定された。これはあくまで例外措置であり、今上天皇の退位を法的に可能にするものである。
国民の生前退位への賛否
一般国民はどう受け止めているのだろうか。朝日新聞が4月18日に発表した世論調査の結果では、もし将来の天皇が退位の意向を示した場合「お気持ちを尊重して退位を認めるべきだ」が61%、「状況に応じて慎重に判断すべきだ」が35%となった。なお、今上天皇の退位については、各種の世論調査で大多数の国民が賛意を示している。
新時代と変化
今上天皇の退位と皇太子さまの即位によって、何か新しいことが起こるだろうか。第二次世界大戦の歴史と日露関係に詳しい歴史学者のアナトーリー・コーシキン氏は、もしかすると天皇の権限は今後拡大するのではないかと考えている。
ロシア科学アカデミー極東研究所日本研究センター上級研究員のヴィクトル・クジミンコフ氏も、新時代到来による社会の変化を予想する。
「もし昭和天皇からイメージされるものが第二次世界大戦だったとすれば、今の天皇陛下は、それとは違う。今上陛下は、戦争で受けた傷を癒し、日本人の心にも、かつて敵対していた国の国民の心にも、平和と静寂をもたらすために、やれることを全てやってきた。サイパン、パラオ、フィリピンなど、先の大戦で大量の血が流された場所を幾度となく訪問し、犠牲となった全ての人のために祈りを捧げてきた。明仁天皇は平和のための戦いのシンボルだ。今、時代は変わっている。新しい天皇とともに新時代がやってくる。このことは、日本社会に新しい思想、アイデアをもたらす契機となるかもしれない」
一つ明らかなのは、天皇家を敬う伝統は、進化と共存するということだ。悠仁さまが誕生してから女性天皇即位の話は下火になったが、男性皇族は今上陛下をいれてわずか4人。女性皇族が結婚後も皇室にとどまれる「女性宮家」の創設是非など、天皇家でさえも、新時代の改革と変化から例外でいることはできないだろう。