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そもそものインスタの始まりは、シルバーテツヤさんに服を着せたお孫さん、東京でCMプランナーとして働く元クドウナオヤさん(CV:花澤香菜)さんが世間に投げつけた挑戦状から始まった。
「おしゃれとは全く無縁の秋田の祖父にハイブランド着せて写真撮って、ど田舎でのファッションの無意味さを示そうと思ったら、想像以上にエモカッコよくなって、結果ファッションてすげえなってなった笑」
秋田在住、教師と書いてあるが、ある日のインスタに元教え子が「今朝、新聞を見てビックリ‼ 中学時代の理科の先生、哲ちゃんではないですか‼」と書きこんでいるところを拝見すると、「てっちゃん」という気さくなアダナで子どもたちに親しまれていた様子がうかがえる。教壇に立っておられた時から子どもへのウケを狙う、フレンドリーな先生でらしたのかな。
自己紹介欄に「孫のために洋服着てます」とある。なんと付き合いの良いおじいちゃんなのだろうか。1枚だけだが、奥様とみられる女性が「生チヅコ」(84)と題して隣に立っておられる。これってただの老夫婦の写真じゃない。おふたりの視線の行く先が、たどられた人生を仰ぐようで胸に迫る。
元クドウナオヤさん(CV:花澤香菜)さんは奇抜な発想でファッションに浮かれる世間に石を投げたのだが、石を投げられた世間のほうが、元クドウナオヤさん(CV:花澤香菜)さんの予測をはるかに上回る反応を見せた。分速100人ほどのペースでフォロワーが増え続けたからだ。その誰もが、シルバーテツヤさんに「格好いい」と賛辞を贈っている。
たしかにシルバーテツヤさんは格好がいい。ポーズこそとっておられるが、気取っていない。普通にご老人にブランド服を着ていただいて、果たしてここまでクールな写真がとれるのだろうか? いや。フォロワーの目は曇ってはいない。「服に負けないだけのものをお祖父様が内包しているのだと思います」という鋭いコメントから、皆が感嘆しているのは服に着せられていないシルバーテツヤさんの迫力の根源であることがわかる。
シルバーテツヤさんはおしゃれに敏感なロシア人にも直ちに知られるところになった。メディアリークス・ルは「元学校の先生だったじいちゃんがヒップスターになり、インスタを魅了。このおしゃれ人間は孫のためにスターとなった」と題して、シルバーテツヤさんを絶賛して紹介し、「ハイブランドに最高にマッチするのは彼の農具なのであった」と驚きを隠していない。ロシア人にとって日本はもともとがミラクルワールドなのだが、シルバーテツヤさんのおかげで「ありとあらゆるメタモルフォーゼがありうる国」とお墨付きをいただいた。もちろん、ジョーク大好きなロシア人はお孫さんの絶妙なコメントを自国文化のアネクドート(一口小話)と比較し、こちらのほうも手放しでほめちぎっている。