政府の中には、「理屈で言えば控訴。(賠償を)家族にまで広げると前例になる」(高官)として控訴が妥当との見方もあったが、家族への人権侵害を考慮し、最終的に首相が判決を受け入れる「異例」の判断を下した。
首相は9日午前の閣議に先立ち、根本厚生労働相と山下司法相と協議、控訴しないことを指示した。首相は記者団に対し、「判決内容の一部に受け入れがたい点があるのは事実。しかし筆舌に尽くしがたい経験をした家族のご苦労をこれ以上長引かせてはいけない」とし、控訴しないというの判断に至ったと語った。
訴訟は、元患者の家族561人がハンセン病患者に対する国の隔離政策で差別を受けて家族の離散などを強いられたとして、国に損害賠償と謝罪を求めたもの。熊本地裁は6月28日、国の責任を認め、計約3億7千万円の支払いを命じていた。元患者家族の被害に国の賠償を命じる司法判断は初めて。