米国が新戦術打ち出す 太平洋での空中戦を想定

アメリカの空軍司令部は、人民解放軍の空軍に対抗する新しい方法を模索している。近年、中国空軍機の数は著しく増加し、質も向上している。いまや中国の空軍機が西太平洋の上空を支配している状態だ。
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アメリカ太平洋空軍司令官のチャールズ・ブラウン将軍(U.S. Pacific Air Forces, Gen. Charles Brown)は、アメリカ空軍には「第5世代のマインドセット」が必要とのテーゼを打ち出した。

ブラウン将軍は、バージニア州アーリントンのMitchell Instituteでのスピーチで、次のように語った。「私は空軍の第5世代のマインドセットというビジョンを打ち出している。Agile Combat Employmentに近い概念に基づいたものだ。」新世代のマインドセットが新しい戦術の導入を意味するのは明らかだ。ブラウン将軍は新たなコンセプトについて非常に簡潔にしか語らなかったが、新たなマインドセットを導入する目標のひとつは空軍機同士の無線通信を減らすことにあると述べている。実際、これは重要な課題だ。というもの、無線通信は、たとえ暗号化されていたとしても、敵によって傍受され、航空機の位置を知らせてしまうことになるからだ。 空軍機が無線通信を使用しなければ、効果的な急襲が可能になる。

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さらに、2019年7月末にオーストラリアの珊瑚海で行われた演習Talisman Sabre 2019についても興味深い事実がある。オーストラリア空軍の空中給油機KC-30Aが米軍戦闘機F-22に空中給油を行ったのだ。アメリカの第13航空遠征群司令官のバーリー・ボールドウィン大佐(Colonel Barley Baldwin)によると、こうした給油の例は初めてだという。この経験により、F-22をインド洋と太平洋および隣接する海で使える可能性が広がることになる。

これについては個別に言及する必要があるだろう。KC-30Aは、基地から1800キロメートルの距離で65トンの給油を行うこと(基地に戻ることを含めて)ができる。この給油機は空中で8機のF-22に給油することで、760キロメートルだった戦闘機の飛行距離を1800キロメートルにまで伸ばすことができる。つまり、2倍以上に伸ばすことができるのだ。しかも、この給油機は他の給油機からの給油を受けることもできる。複数のKC-30Aを数珠つなぎにすることで、基地から3000~4000キロメートル離れた場所でのF-22の活動が可能になるのだ。

このことから、米国空軍が第5世代のマインドセットでどのような新戦術をとるのかを推測することができる。南シナ海での仮想対立を例にとろう。この地域にはアメリカの陸軍飛行場がなく、空母の航空機も十分でない可能性がある。その場合、新戦術は次のようなものとなるだろう。

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まず、F-22は遠隔地の空軍基地(普天間やグアムなど)を離陸し、飛行中に敵の空軍機が発見されたエリアの座標を受信する。次に、そのエリアに入ったF-22は、最新の戦闘機搭載レーダーAN/ APG-77(探知距離は500キロメートルに達する可能性がある)を使用して、目標を探し、ミサイルで攻撃する。攻撃後はすぐに外洋に逃げる。敵機は燃料が限られているため追いかけることができないが、F-22の方は、事前に一定のエリアに飛び立った空中給油機が待機して、待ち構えているのだ。必要に応じて、F-22はアメリカ領内の空軍基地からでも発進させることができる。

無線通信は最小限に抑えられる。パイロットに必要なのは、目標がいるエリアの座標と、給油機の座標だけだからだ。

これは、第二次世界大戦時のドイツ軍パイロット、エーリヒ・ハルトマン(352機を撃墜)の例でよく知られている「一撃離脱戦法」であり、それを現代の技術力に合わせて改良したものである。 前述の対立におけるアメリカの仮想敵は中国かもしれない。戦争が発生した場合、アメリカの空軍司令部は、このような攻撃で人民解放軍の最新の空軍機を撃墜し、その後は、空母の航空機が海上の空域を維持できると考えているのではないだろうか。

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