「日本では、女子柔道はなかなか発展しなかった」しかし、変化はある
松田基子 全日本柔道連盟女子柔道振興委員長 は、現在の日本の女子柔道チームには強い選手がたくさんいるものの、こうした選手を育成するのは簡単ではなく、時間もかかったと語った。
松田基子委員長はその理由をいくつか挙げたが、その中のひとつが次のようなものである。「子どもの世話と選手としてのキャリアを両立することが難しく、女性を支援するためのしっかりとした体制がなく、コーチや連盟のメンバーにもロールモデルとなる女性が不足しています。これは柔道だけでなく、他のスポーツでも同様です。」
全日本柔道連盟はこの問題に注目し、徐々に女性を幹部ポストに就けるようになった。2013年に初めて女性が理事会のメンバーに加わり、2019年には初めての女性副会長が誕生した。このほか、2015年に設立された女子柔道振興委員会は、選手だけでなく、幹部の間でも女性のプレゼンスを高めるべく、環境作りに取り組み、特別な活動を行っている。その結果、47都道府県の柔道連盟のうち、40の連盟が女性を理事に任命した。
ヨーロッパや他の国の状況はどうなのか?日本より良いのか?
ヨーロッパや他の国でも、状況は同じように厳しく、大会に出場する女性選手の割合と公式の役職に就いたり、コーチや審判になる女性の割合に大きな開きがある。その最たる例としてSanda Corak氏(IJF ジェンダー・エクイティー委員会委員兼クロアチア柔道連盟会長)が挙げたのが、現在、ヨーロッパで国家柔道連盟の会長を務めている女性がCorak氏を含め、3人しかいないという事実である。ヨーロッパに国家柔道連盟は全部で52ある。しかも、今のところ、女性支援のための具体的措置を講じた国家連盟はわずかしかない。
キューバ柔道選手のイダリス・オルティスはこう語った。「キューバでは、世界的エリートレベルに上りつめることができた女性は皆、始めたばかりの頃に両親や社会全体からの強い不理解に直面したことを覚えています。しかし、柔道は障壁を壊し、価値観を作り出すスポーツであり、私たちにより大きな自由を感じさせてくれる、心身ともにより健康にしてくれるスポーツです。」
また、Salima Souakri 氏(IIJF ジェンダー・エクイティー委員会委員兼アルジェリアスポーツ庁アドバイザー兼 UNICEF親善大使)もまた、自分自身の大変な運命を語った。彼女は小さい頃から柔道をする権利を求めて差別と戦ってきた。あらゆる不理解と偏見と常に戦い続け、命を狙われて、その結果、弟が命を落とすことになった後でさえも、彼女は力と野心を失わなかった。これが今に至るまで、多くのアルジェリア女性の素晴らしい手本となっている。
「柔道は私の人生のすべてです。柔道はまさに人生の学校です。このスポーツが私の性格を形成し、今の私を作ってくれたのです。それは、私の中でいつも燃え続けている情熱です。何でもできるのだということを、私は女性や若い女の子たちに伝えたい。集まれば力になるのだ!ということを。」
柔道界で女性のためにできることとは?
会議の最後にSanda Corak 氏が柔道でのジェンダー問題を改善するための提言を行った。
「広く教育活動を展開し、女性のための社会団体を作ることができるでしょう。古くからの問題も一緒になればもっと効果的に解決することができます。活動を進め、スポンサーから資金援助を勝ち取り、パートナーシップを形成してください。こうした活動のサクセスストーリーの例は、IJFのサイトにすでに掲載されています。」
Lisa Allan 氏(IJF ジェンダー・エクイティー委員会委員長)も閉会挨拶で次のように述べた。
「男性と女性は違った形で夢を見るかもしれませんが、どちらも畳を使って夢を実現することができます。この会議は、柔道の未来は十分に明るいことを示してくれました。」