シベリア鉄道の実力を証明!「欧州向けルート確立でビジネスチャンス拡大」東洋トランス高橋社長

ロシア極東・ウラジオストクで4日から6日まで開催された第5回東方経済フォーラムに参加した東洋トランスの高橋勲(たかはし・いさお)社長はスプートニクのインタビューに応じ、物流の大動脈として再注目されているシベリア鉄道の新たな可能性について話した。高橋氏は、モスクワを経由して欧州につながる物流ルートが確立されれば、海上、航空に続く第3の輸送手段として日本企業の選択肢が広がり、ビジネスチャンスが拡大すると指摘している。
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ソ連時代、シベリア鉄道は、日本からヨーロッパへの貨物輸送の手段として一般的だったが、シベリア鉄道を使う魅力といえば安さだけだった。トータルの輸送時間が不透明だったり、貨物の保存状態が悪かったりと、様々な問題のために顧客が離れていき、日本発の貨物量はピークの10分の1以下にまで落ち込んだ。しかし近年、シベリア鉄道は「安かろう悪かろう」から脱するべく問題点を改善し、汚名返上に成功。これと連携して日本でも、信頼のおける東西の物流ルートとしてシベリア鉄道を再構築する試みが積極的になされている。

国交省、2年連続パイロット事業を実施

昨年、国土交通省は、ロシア鉄道と協力し、初めてシベリア鉄道による貨物輸送パイロット事業を行なった。結果、日本の各港からモスクワまで海上なら2か月かかるルートを、15日から30日程度で運べ、品質にも影響がないことが実証された。詳細は国交省の事業結果報告でわかりやすくまとめられている。この結果は広く知られることとなり、高橋氏のもとにも、鉄道のメリットに気付いた荷主企業から、多数の問い合わせが相次いだ。

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高橋氏は昨年のパイロット事業を振り返り「国交省がパイロット事業を実施したことで、日露両政府がシベリア鉄道の改善に取り組んでいることが広く伝わり、民間企業だけでアピールするよりも、安心感を与えることができました。少し時間がかかったケースについては改善点が明らかになったので、パイロット事業としては大成功だったと思います」と話す。

昨年の成功例を受け、今年は現在進行形で欧州向け貨物のパイロット事業が行なわれている。対象案件は3件で、東洋トランスはそのうち1件を手がける。8月29日、富山港で出発式が行なわれ、9月5日には貨物が富山港を出発した。貨物はウラジオストク、モスクワを経由し、ベラルーシを抜けて、ポーランドに送られる。

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危険品も運べる鉄道のメリット

昨年のパイロット事業で東洋トランスが手がけた貨物の中身は精米や電子ピアノ、電動工具といったものだったが、今年はリチウムイオンバッテリーを含む電気電子部品などだ。リチウムイオンバッテリーは、航空貨物では「危険品」と見なされている。

高橋氏は「危険品輸送の需要は間違いなくあるので、鉄道で大量に運べるということが実証されれば、またひとつ大きなチャンスとなり、お客様にもメリットとなるでしょう。富山からポーランドへの試験輸送については、線路の幅の関係で、ベラルーシとポーランドの国境で、台車から台車にコンテナを移し変える作業が必要になりますが、それも入れてトータル25日くらいで輸送できると考えています。このルートが確立すればビジネスチャンスは拡大するので、ぜひ期待を持っていただければ」と話す。

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少ない貨物でも輸送可能、「MOSCOW EXPRESS」開始

昨年のパイロット実験の成功を受けて、東洋トランスが今年6月に開始したのが、モスクワ向け混載サービス「MOSCOW EXPRESS」だ。これまで貨物量が少ない場合は、航空機を使うという選択肢しかなかったが、「MOSCOW EXPRESS」を使えば、日本からモスクワまで小口の貨物を運ぶことができる。混載コンテナは、現在のところ、月に2回日本を出発する。この試みもまた、シベリア鉄道の新たな可能性を提供するものである。

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当のロシア鉄道自身も日本へのPRに本腰を入れ始め、幹部が自ら出向いてシベリア鉄道の利用価値をアピールしている。今年5月24日には、経団連会館で初のセミナーを開催。ロシア鉄道のアレクサンドル・ミシャリン第一副社長は、「今年中にロシア鉄道の事務所を日本に構えたい」と話している。

高橋氏は、将来的には料金面でも競争力を増していきたいと考えている。

高橋氏「物流ルートが確立すれば、次のステップとして、マーケットに合った、より魅力的な料金設定になるようロシア鉄道と交渉をスタートしたいと考えています。ロシア側も色々なルートを考えているので、私たちも新しいサービスを作っていきたいと思います。」

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