県内企業の海外展開を後押しするため宮城県から参加したのは、国際経済・観光局の古谷野義之局長だ。東日本大震災後、ロシア側の輸入規制のためにロシアビジネスは停滞していたが、昨年輸入規制が解除されたことで、ふたたび販路拡大のチャンスが到来した。宮城県はロシアのニジェゴロド州と9年前から協定を締結し、経済、文化などの分野で協力を進めているが、巨大なモスクワ商圏にまでビジネスを拡大したいと考えている。
宮城県からは水産加工品を扱う2社が出店。八葉水産・常務取締役の清水勝之氏は、ロシア市場における海藻販売の可能性を探る目的で参加を決めた。
三陸コーポレーションのフィッシュソーセージは、ロシアではあまり見かけない食品だ。もとはムスリム向けに開発されたもので、ハラル認証を取得しているが、ムスリムに限らずヘルシー志向の高い人に人気があるとわかり、非イスラム圏にも販売を拡大している。
同社取締役の盛岡忠司氏によれば、ロシアではソーセージと言えば肉しかない、というイメージが強いため、「味は好き嫌いが分かれる」とのことだ。こちらもすでに商談が進んでおり、健康食材の需要の高い大都市圏で伸びそうだ。
昼前になって人出が増えてきたタイミングで、コメのPRブースでは、五つ星お米マイスターの片山真一さんが来場者に美味しいお米の炊き方を伝授。甘みのある炊き立てご飯の試食が行なわれた。
コメPRブースのもうひとつの目玉となったのは、モスクワの人気和食レストラン「いちばんぼし」の岸本秀樹シェフによる「寿司作りマスタークラス」と寿司の試食だ。岸本シェフは、日本米を使い、自宅でも簡単に作れる手巻き寿司や飾り寿司を紹介。ブースは人であふれ、熱心に動画を撮っている人もいた。
マスタークラスを見学していた、日本のドラマが好きだというムスリムの女性は「日本食が大好きで、レストランにも行きますし、寿司やロールのデリバリーをよく頼みます。シェフのパフォーマンスが素晴らしく、面白かった」と大満足の様子だった。
全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会(全米輸)は、世界各国の食品展示会で、日本のお米やその関連食品の美味しさを知ってもらう催しを行なっている。今回、ロシアで初めてブースを設けた理由について、松永将義理事は、次のように話している。
松永氏「モスクワでも寿司を中心とした和食が広まっており、日本のお米や、日本酒や米菓といったものの美味しさを伝えたくて、やって来ました。日本からのロシアへのお米、日本酒の輸出が近年急激に増えており、今が最適なタイミングだと判断しました。来場者の皆さんの関心は高く、日本のお米の味は違うな、と実感してもらえたのではないかと思います。」
ジャパンパビリオンでは、ロシアでも日本食レストランの拡大とともに普及してきた味噌汁や日本酒、コーヒー、わさびやサプリメントなどの商品が紹介され、輸入業者レストラン関係者、一般来場者などでにぎわっていた。
少し離れた場所にある魚と肉専門のパビリオンでは、鹿児島で魚加工を手がける「奈良」によるブリの刺身と握り寿司の試食が行なわれていた。同社は、日本の中でも最大のブリ生産地である鹿児島で、脂ののった、一番おいしい時期にとれたブリを特別な技術で冷凍し、世界へと輸出している。
奈良大介専務は「今日もたくさんの方が来てくれて、試食の評価も好評です。これを機に多くの方にブリを食べてもらい、ロシアでメジャーな魚にしたい」と意気込む。
ロシアの飛び地・カリーニングラードで魚の卸売を営む男性は「ブリのことは全く知らず、今日初めて食べましたが、実に美味しい魚です」と話した。
魚と肉のパビリオンを出ようとしたとき目に入ったのが、「生おろしわさび」の文字。ここにも日本企業のブースが?と思いきや、なんと中国のわさびだった。モスクワにはまったく辛味や刺激のないわさびもあるが、おそらく中国産であろう。
「ワールドフード・モスクワ」には、4日間で3万768人が来場した。参加企業は今後、ロシア側パートナーとの商談を進め、ロシアへの輸出拡大を目指していく。