セミナーではまず、政府債務商品の市場、ロシア大手企業のポートフォリオ投資の可能性、ロシアの極東地域の投資魅力と日本企業のビジネスチャンスが示された。その上で、ロシアのビジネスに参入する際に重要な視点、想定される困難が説明され、これへの解決策と、戦略的なパートナーとしてロシアの銀行が果たす機能が紹介された。
開会の辞に立ったソリッド銀行のウラジミール・セメルニン理事会長は、ロシアの金融や経済、暮らしの紹介を目的に、10年間、継続的にこうした会合を開催しているとして、次のように語っている。
「25年を越えるわが国の改革によって、経済でも政治でも巨大な変化が生じました。そのプロセスは厳しく、変化は大きな痛みを伴いましたが、ロシアは強固に、着実に前進を続けています。今日の会合が今ある偏見を解消する一助となるよう期待します。私たちは協力に前向きです。」
セミナーには、70年代からロシアに造詣が深い、キャノングローバル戦略研究所の研究主幹の小手川大助氏も参加し、「ロシア経済の最新動向 ‐日本人の目から見たロシア経済」と題した報告を行った。現在、国立モスクワ大学の客員教授を務める小手川氏は、ロシア経済が2014年の危機とその後の余波に向き合い、どう対応したか、地政学的な観点からの推察を交えた考察を発表した。
小手川氏は日本のロシアに対する理解について、過去の負のイメージやメディアの偏った報道などが邪魔して、現実とかけ離れている像が出来上がっていると指摘し、ロシアに対する誤解を取り除く必要性を強調した。
また、ソリッド金融投資株式会社の海外市場ビジネス展開局長であるミハイル・コロリュック氏も発言を行い、日本の投資家にロシアが何を提供できるのかについて詳細な報告を行った。
コロリュック氏が「この分野の変化を示す計測器」として例に引いたのは、よく知られる、世界銀行の「Doing Business」。このデータの2019年版ランキングではロシアは、フランス(32位)やオランダ(36位)、スイス(38位)、さらに日本(39位)に勝り、名誉ある31位を占めている。2012年にロシアはこランキングで120位(日本は20位)を占めていたことを考えれば、31位という今回のロシアのランキングがいかに強い印象を与えるかがわかる。
また、ロシアの経済・金融状況がいかに肯定的であるかを示した次のようなデータも紹介された。
- 大規模経済(世界第10位)
- 低公債(国内総生産の14,2%)
- 黒字予算(2019年つき国内総生産の約3%)
- 大きい金・外貨準備(世界第4位)
- 国債の投資格付
- 慎重な金融・予算政策の伝統を長い間守ってきていること
- 過去1年半つき、ルーブル為替相場の石油依存度は非常に低下
セミナーでの報告はこちらをご覧ください。
ソリッド銀行は1991年に開設。現在は、ロシアと日本の澤田ホールディングス(株式の約40%)の共同出資の形態をとり、イルクーツクから極東のペトロパブロフスク・カムチャツキーまでの領域で個人、法人向けに金融サービスを提供している。