これらの戦艦は最新の兵装を備えている:ノルウェーの対艦ミサイル「ナーヴァル・ストライク・ミサイル(NSM)」と無人ヘリコプターMQ-8Cである。いずれの型も沿海域での海上戦のために作られたものだ。NSMは内蔵コンピューターに登録された写真を元に目標を探して認識するため、ブリッジや機関室など、戦艦の特定部位を攻撃することが可能だ。LSC型戦闘艦はこのミサイルを18基搭載することができる。また、無人ヘリコプターは先進精密誘導ロケット弾WPKWS-Ⅱを最大7基搭載できる。これは、速い動きで島嶼の影に隠れ、通常の対艦ミサイルに対して脆弱性の小さい敵船を極めて正確に攻撃するロケット弾である。
また、2019年8月には、米軍のチャールズ・ブラウン太平洋空軍司令官とデイヴィッド・ゴールドフェイン空軍参謀総長が、軍事協力を議論するため、オーストラリア、フィリピン、ベトナムを訪れている。少なくとも、フィリピンとは、米軍の陸海空軍が使用できる基地の拡大を話し合った。
こうした出来事や行動は、個別では大きな意味をなさないものの、重ね合わせると、軍事衝突に備え、中国を牽制しようとする米軍司令部の計画がモザイクのように浮かび上がってくる。2隻の沿海域戦闘艦をこの地域に派遣したことは、こうした行動の中心としてスプラトリー諸島が想定されていることを示している。
南シナ海にあるスプラトリー諸島は真に戦略的な意味を持っている。というのは、この諸島の近くを商船の航路が通っており、その航路を使って原料、石油、石油製品などの貨物が中国に輸送されているのだ。大陸棚には大量の石油ガスも眠っている。
また、2019年9月13日には、アメリカの駆逐艦ウェイン・E・マイヤー(DDG-108)が中国の占有する島の近くを航行した。これは南シナ海の航行の自由作戦の一環だった。中国はこれまでに、「不測の事態」が発生しうるとして深刻な警告を述べてきた。
どうやら、中国の警告はかなり重みがあったようで、アメリカはこの地域の軍事力を強化させている。今後はおそらく、最新の米軍戦艦の戦闘能力を示す行動があるだろう。それはマレーシアが支配する諸島地域での演習になる可能性がある。マレーシアは今のところ、中国海軍に挑戦状を突きつけられる状態にはない。というのも、現在、最新のLSC型戦闘艦を建造中であり、マレーシア海軍司令部によると、1隻目のMohd Reza Mohd Sanyが就役するのは2021年の予定だからだ。そのため、今は米国の支援なしではやっていけない。アメリカとマレーシアの軍事協力の発展はこの1年に始まったことではない。2019年8月には、マレーシア海軍の戦艦がグアム(アメリカ)で行われたアメリカの軍事演習に参加している。
このほか、別の形での軍事力の誇示もあり得る。それは係争の島々の付近での海上演習、無人ヘリコプターの出動など、中国のスプラトリー諸島での地歩の弱さを見せつける行動である。優位性を誇示すること、これこそがこの地域に派遣された米戦艦に課されたミッションなのかもしれない。