日露初の民間投資ファンド誕生へ:日本代表団、ロシア最大のイノベーションフォーラムを訪問

21日から23日にかけて、ロシア・モスクワ郊外にある学術研究都市スコルコヴォで「オープンイノベーションフォーラム」が開催され、約90か国からおよそ2万人が来場した。ロシアは近年デジタルエコノミー政策に力を入れており、メドベージェフ首相をはじめ多数の政府関係者が訪れた。日本は、ロシアNIS貿易会(ROTOBO)による日本ブースを設置し、リバースピッチを行なった。また、日露初の民間投資ファンドとなる「Japan Russia New Frontier Fund」(JRNFF)の設立が発表され、タームシートの調印式が行われた。
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JRNFFは、みずほ証券グループの投資会社「ニュー・フロンティア・キャピタル・マネジメント」(NFCM)および、ロシアの大手ファンド運用会社ダヴィンチ・キャピタルによって共同運用される。ロシア政府系テクノロジーファンド「ロシアベンチャーカンパニー」からも出資を得る。

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NFCMの臼杵繁樹(うすき・しげき)副社長は、日露初の民間投資ファンド誕生によって、ファンド本体にも、ロシアのスタートアップにも、日本企業にも、大きなメリットがあると話す。

臼杵氏「ロシアのスタートアップで、日本の大規模な事業会社と戦略的な関係を築きたいというニーズは非常に高く、日本の大企業としても、世界中で新しいイノベーションの芽を探しています。ロシア発のイノベーションに取り組むことは日本企業の発展につながります。しかし自社だけの力で探すことはそう簡単ではありません。こういったファンドを通して、ロシアのスタートアップの優れた技術を日本側に紹介することができれば、双方にとって大変なメリットがあります。もちろんファンドとしても、ロシア企業に投資し、その企業が日本の大企業と提携して事業が拡大すれば、リターンも大きくなります。」

また、NFCMは、スコルコヴォ・イノベーションセンターとも協力覚書を交わした。これにより、さらなる情報収集を進めていく。

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22日には、日本の専門家がメインで登壇するビジネス・セッションが2回行われた。「Society 5.0.日本におけるデジタルフォーメーションと新ビジネス」では、電通国際情報サービスや川崎重工業など、日本企業の代表者らが自社の取組みについてプレゼンテーションを行なった。

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テラドローン株式会社の永井悠平氏は、ドローンを活用した点検サービスについて活用事例を紹介した。例えば、ドローンでパイプラインを点検することにより、オイル漏れやガス漏れを検知し、企業の資産の損失を防ぐことができるほか、今までの手法では発見できなかったような不具合も検知することができる。すでに点検分野でテラドローンのシェアは世界一になっており、ロシア進出に向けて、パートナーの選定を進めている。

永井氏「ドローンを使ったビジネスで、ロシアは世界最先端です。宇宙・航空産業の基盤があるロシアはハードの開発に強く、優れたエンジニアがいます。弊社のソフトと組み合わせれば、シナジーが生まれるでしょう。ロシアは広大な大地をもつ資源大国ですから、オイル・ガス、電力線、鉱山などの定期点検が必須です。マーケットとしてのポテンシャルは非常に大きいです。」

また、大阪大学産業化学研究所副所長の黒田俊一教授は、ロシア訪問の目的のひとつは、情報技術分野の優秀な人材を確保することだと明かした。現在、ヒトの嗅覚システムをAIを使ってデジタル化することで、どんな臭いも感じなくさせる究極の消臭剤の開発など、新しいビジネスの創出に取り組んでいる。AIを用いてデジタル化するにあたっては、情報技術分野の専門家が必要だが、日本における人材不足は深刻だという。

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また、セッション「日本とロシア:テクノロジー投資の可能性」では、JRNFFの設立に向けた準備状況について報告があったほか、日本の投資家から、ロシア企業への投資を進める上で、ベンチャー企業を探しやすくするデータベースの構築や、会社の買収や投資家保護に関わる法律についての情報提供の必要性が指摘された。

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