米民主党にとっては罠 トランプ大統領の弾劾訴追

専門家の大半は、共和党員が大多数を占める米上院がトランプ大統領の弾劾訴追決議案を承認するはずがないと考えている。スプートニクは、民主党が上院で成就する見込みのないままに弾劾訴追を推し進める目的について専門家らに見解をたずねた。
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米国研究を行う、高等経済学院欧州および国際研究センターの副所長ドミートリー・スースロフ氏は共和党員が大多数を占める上院が弾劾訴追決議案を承認する確率は実際のところゼロだと断言している。スースロフ氏は、民主党はこれをよく分かった上で、将来の目的を追求するためにこれを行っているとして、次のように語っている。

「第1の目的は、来年の大統領選挙に影響を及ぼすこと。大統領の弾劾訴追によって中立層や浮動票の層にトランプ氏に票を投じさせず、その対立候補に投票させるよう働きかけること。トランプ氏は前の選挙でまさに、ヒラリー・クリントン氏に投票するかどうかを迷っていた多くの選挙民を取り込んで勝利した。民主党はこのシナリオの蒸し返しを望んでいない。

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第2の目的は民主党員が大統領としてトランプ氏を絶対に認めていないことを表現すること。つまり、米国は分裂状態のままであり続け、2つの党の対立は、次の大統領選挙後も、その結果がどう終わろうともそのまま続くということだ。共和党と民主党の協力は弾劾訴追を試した後、皆無も同然になり、予算案は採択されず、新たなシャットダウンが起き、米国の政治システムが麻痺することを意味する。

第3の理由は国際的なオーディエンスへ働きかけだ。これで民主党は米国の同盟国、パートナー国らに向かって、トランプ政権は米国にとっては一時的な阻害なんです、正しい米国は健在でトランプ政権の後、カムバックしますからね、というシグナルを送っているのだ。」

ロシア政府付属財政大学政治学部のゲヴォルグ・ミルザヤン准教授も、弾劾訴追は民主党自身にとって罠となり、トランプ氏に利することになるとして、次のように語っている。

「トランプ氏が自分に対する弾劾訴追を民主党の自殺行為と呼んだのはちゃんと訳がある。民主党はなんとしても選挙前にトランプ氏の弾劾訴追プロセスを始動させたかった。それは彼の支持率を最大限下げるためだ。これを要求したのは民主党の中でも急進派で、大統領に対し、正真正銘の十字軍遠征を宣言したことになる。実際の話、弾劾訴追はトランプ氏と共和党議員に利する。共和党議員らはこの問題を一刻も早く上院の審議に付そうと決議案票決を急いでいる。上院は共和党で占められている。このため弾劾訴追が承認されることはない。その代わり捜査はありえる。問題となる事項の捜査を開始し、証人喚問を行うすべての権利を上院は有している。 その最初にやり玉に挙げられるのはバイデン氏とその息子、そしてバイデン氏の取り巻きだ。彼らは宣誓をした上で、ウクライナのショキン検事総長の辞職がバイデン氏の息子が勤務していた、ウクライナ最大の天然ガス企業ブリスマに対する汚職捜査を行ったことに関連していたかどうか、語らねばならなくなる。これはバイデン氏にとっては殺人行為だ。嘘の証言を行えば、大犯罪になる。バイデン氏は息子の汚職構図を隠蔽するために自分の職務上の地位を利用した事実を否定はできないだろう。」

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スースロフ氏はこうした一方でトランプ氏が当初から弾劾訴追プロセスを望んでいたという説には同意していない。それは大統領の弾劾訴追は米国史上稀有なことであり、誇らしいこととは全く言えないからだ。

「米国史上、大統領が弾劾訴追された事態は今までわずか3例。これでトランプ氏も自国の歴史に永遠に名を刻むことになってしまう。しかも、今、再選を狙おうとしている大統領に対して弾劾が訴追された例など一度もない。弾劾訴追のために米国内の決定は麻痺状態となっている。なぜなら決定するには議会が機能していなければならないからだ。弾劾訴追によってこの他、トランプ政権は対外政策で動きが制限されてしまっている。トランプ氏はホワイトハウスに陣取っているにもかかわらず、国際舞台における権威に穴が開いてしまっているからだ。だがトランプ大統領自身はもちろんのことながらこの状況を自分の都合のいいように利用しようと躍起になっている。」

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