女性大統領
2021年の主要な出来事のひとつになると約束されているのが11月に行われる米国大統領選挙だ。デンマークのサクソバンクの専門家はここにサプライズが起こる素地があるという。
ウォーレン氏に味方するのは、彼女に明確なプログラムがあるということだ。昨年の議会の中間選挙で民主党に最も足りなかったものだ。中間選挙での民主党の主要な論拠はトランプへの嫌悪だったと、ヤコブセン氏は指摘する。ところが、医療無償化やアメリカ人の多くにとって手の届かない保険の廃止などを訴えるウォーレン氏は、多くのミレニアル世代(千年紀の変わり目に社会人になった人々)や主婦層に指示されている。この人たちはトランプ大統領支持者に、特にウォールストリートの銀行員に対抗する人たちである。
ドルに代わるアジア通貨
アジアでも波乱が起こるだろう。貿易戦争に疲れた中国が地域各国を集めて、「アジア借用権(Asian Draw Right もしくはADR)」と呼ばれる新しい準備通貨を作る。常に欧米の制裁下に置かれているイラン、ロシア、アジアの消費者への依存が増しているOPEC(石油輸出国機構)各国が迅速にこの通貨での決済に移行するだろう。
このように、外貨準備をこれまで信頼性の基準のような存在だった米国債で保有する国は大幅に減る。わずか数ヶ月でドルは金に対して30%弱くなるとサクソバンクは予言する。
石油とシェール
ヤコブセンらによると、来年は、OPECとロシアがアメリカのシェールオイル生産鈍化を受けてさらなる大幅減産を発表すれば、ロシアにとってラッキーな年となりうるという。その場合、ブレント価格は1バレル90米ドルまで回復し、Urals価格49米ドルをベースにしているロシアの政府予算は膨大な歳入を得ることになる。そうなればロシア石油会社「ロスネフチ」の株価は50%急上昇する可能性がある。
こうした状況になると、世界ではグリーン経済への長期的関心が高まり、ここでもロシアが得をすることになる。というのも、ロシアは、自動車産業で有害物の排出を減らすための触媒として使われるパラジウムの世界最大の供給国だからだ。ニッケル価格の高騰も、電気自動車用のバッテリーがコバルトからニッケルに移行した場合、ロシアに味方する。
このような状況からもう一つの予測を立てることができる。石油減産の場合、利益の出ないシェール企業の成長が鈍化し、アジアでの需要が活性化する。2020年は石油ガス産業が思いがけずリーダーとなり、クリーンエネルギー産業ではそれと並行して警鐘が鳴るだろう。
EUを離脱するのはどの国か?
ヤコブセン氏の予測を鵜呑みにすべきではない、このことは本人も述べている。ヤコブセン氏は1年前には、Teslaが影響力と製品ラインナップの拡大を必要とするAppleの傘下に入ること、FRBのジェローム・パウエル議長が彼の政策に怒り狂ったトランプ大統領に罷免されること、野党のジェレミー・コーベン氏が首相に選出されることでイギリスのポンドが暴落すること、テレビ大手Netflixがあまりにも多額の債務を抱えて崩壊すること、一般的なGDP算出方法からの脱却が起こることを予測していた。さらにデンマークのヤコブセン氏らは、太陽で巨大なフレアが発生し、多くの電子機器が故障すること、それによる世界経済の損失額は2兆ドルを超える可能性があるとも、世界に警告している。これらは全て(少なくとも、今のところは)現実のものとはなっていない。唯一、現実になったのはドイツ経済の不況に関する予言だけである。