タイム誌はスウェーデン人高校生で環境活動家のグレタ・トゥンベリさんを今年を代表する人である「パーソン・オブ・ザ・イヤー2019」に選んだ。このタイトルの誕生から92年の歴史の中でグレタさんは一番騒がれる、人気の人物となった。
タイム誌はグレタさんを、ティーンエイジャーでありながら国連の気候変動サミットで演説をぶち、世界の指導者らを相手に真実をずばりと言う勇気を自分の中に見つけ、1年間で世代のシンボル、環境というテーマで最も影響力の高いスピーカーとなったと評価している。グレタさんは環境に対する活動で感動だけでなく、激しい批判も呼んだがそれでも歴史に名を遺すのは間違いない。
2019年、数か国でほぼ同時に女性の大統領、女性の首相が誕生した。6月、スロバキアで大統領兼軍の最高司令官に選ばれたズザナ・チャプトバさん(46)もそのひとりだ。弁護士で市民活動家、汚職摘発に燃えるスザナさんだったが2019年までは国民の大多数は彼女の名前を知らなかった。スザナさんの現象をジャーナリストらは社会変革、正義を希求し、政界に新たな人間を求める気持ちに呼応したものと論じた。
デンマークでも 6月、女性が政府の頂点に立った。最年少の首相に就任したのはメッテ・フレデリクセンさんだ。
10月、ベルギーでも同国の歴史始まって以来初めての女性首相にソフィー・ウィルメスさんが就任した。
12月、今度はフィンランドで34歳の女性、サンナ・ミレッラ・マリンさんが首相となった。サンナさんは世界で、そしてフィンランドで最年少の首相だ。
欧州中央銀行も歴史始まって以来、女性が総裁に就任した。新総裁となったクリスティーヌ・ラガルドさんは国際通貨機関(IMF)の専務理事、仏の経済財政産業大臣を務めた経歴の持ち主。実は、ラガルトさんは人生のキャリアをスポーツマンとしてスタートしていたことは興味深い。ラガルトさんはアーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)の選手として仏ナショナルチームに所属していた。今年2019年フォーブス誌はこのラガルトさんを世界で2番目に影響力の強い女性に選んだ(1位はドイツのアンゲラ・メルケル氏)。
ノーベル賞にも女性が入った。ノーベル経済学賞を受賞した3人のひとりに選ばれた仏のエスター・デュフロ氏はフィールドワークを通じて、世界の貧困対策の効果度を評価するメソッドを開発したことが評価された。
もうひとり、偉大な人物となった女性がいる。マラウィ中央区の長を務めるテレザ・カチンダモトさんだ。カチンダモトさんは意志に反して不法に結婚させられそうになっていた、夥しい数の子どもを救った。
国連の調べによれば、マラウィは法で禁止されているにもかかわらず、子どもの婚姻率が極めて高い。特に農村部では7歳の女児が嫁に出されてしまう。2019年、カチンダモトさんのおかげで3500組の子どもの婚姻が破棄され、女児らは教育を受けるために学校に送られた。
今年、日本の海上自衛隊史上初めて、イージス艦「みょうこう」の艦長に大谷三穂1等海佐(48)が着任した。「みょうこう」はコンピューターシステムで弾道ミサイルの迎撃を行う多目的護衛艦で日本の海域を監視する。
宇宙で初めて女性だけのメンバー構成で船外活動が行われた。これに参加したのは エレクトロエンジニアのアン・マクレイン宇宙飛行士と生物学者のクリスティーナ・クック宇宙飛行士だ。
女性宇宙飛行士らは国際宇宙ステーションの不具合が生じたバッテリーモジュールを交換した。この2人が宇宙空間に出る前は女性宇宙飛行士は混成チームのメンバーとして船内の活動に終始していた。
2019年フィギュアスケート女性シングルも宇宙的なレベルまでハードルを上げた。ロシアのアリョーナ・コストルナヤ、アンナ・シェルバコワ、アレクサンドラ・トルソワの3選手は仰天の高得点をマークし、新記録を更新し続け、伊トリノのグランプリシリーズ ファイナルでは表彰台を総なめにした。
仏女性のサッカー審判、ステファニ・フラッパー氏も今年、目立つ活躍を遂げた。ステファニさんは男性の戦うUEFAスーパーカップの決勝戦で、英国のリバプールVSチェルシーの試合で女性としてはじめて主審を務めた。このイスタンブールの試合はサッカー史上初めて女性の審判チームが試合全体のジャッジを担当した。
ロシア人女性レーサーのアナスタシア・ニフォントワさん(40)はダカールラリー始まって以来、女性オートバイレーサーとしては初めてシングルクラス踏破し、世界新記録を達成した。ニフォントワさんはエンジニアの助けを借りず、自力でバイクのメンテナンスを行わねばならない最難関のコースを見事に突破した。