報道によれば、大統領は国防相、内務相、軍司令部、治安維持部隊幹部と電話会談を行い、デモ活動における暴力行為の阻止や公共・民間施設の保全、および治安維持に向けて対処するよう命令した。
デモ活動の首謀者らは「怒りの土曜日」というスローガンを掲げ、ベイルートの国会議事堂前で反政府活動への参加を呼びかけた。この呼びかけに応じる形で、主要都市からは参加者が続々と都心に駆けつけた。その後、デモの参加者らは暴徒と化し、警官隊に爆竹を投げつけるなど、トラブルへと発展していった。都心の殉教者広場は激しい衝突現場となり、警官隊がデモ隊に催涙弾を発砲するケースも見られた。現時点では治安部隊が暴徒を駆逐し、現場は制圧されたとの情報が入っている。
レバノン赤十字によれば、この暴動により、65人が負傷して病院に搬送されたほか、およそ100人に対してデモの現場で医療行為が行われた。負傷者はデモ参加者、警官隊の双方に発生している。
また、病院に搬送された警官隊は、病院で医療行為を受けている最中にも暴徒に襲撃され、殴打されるなどの状況が生じている模様。
同国の経済状況は悪化の一歩をたどっており、体制に対する国民の不満が高まっている。アウン大統領は19年10月、経済封鎖と制裁によって同国の経済は疲弊していると発言していた。この状況は為替にも影響を落としている。現在、レバノンでは外国口座への送金が停止されているほか、ドルへの換金は一週間当たり1,000ドルに制限されている。さらに、外貨に換金する際の手数料が大幅に引き上げられるなどの措置が取られている。
こうした国内状況を踏まえ、19年10月からレバノンでは反政府活動が活発化した。デモの参加者らは経済改革と汚職の撲滅、および汚職に関与した政治家に対する法的追及を要求している。
この批判を受けて10月29日にはサード・ハリーリー首相が辞任に追い込まれた。しかし、その後も反政府活動は続いている。アウン大統領はハッサン・ディアブ氏を新首相に任命したものの、野党からの批判も強いことから組閣には至らず、およそ2か月にわたって政治的空白状況が続いている。
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