南極に川が流れ、ペンギンが泥塗れ 待ったなしの地球温暖化問題

2月9日、南極半島北端沖のシーモア島で観測史上初の20.75度が記録された。2日前の7日もアルゼンチンの南極観測基地で18.3度が観測されている。1~2月の平均気温が10度の南極大陸で、これは明らかに異常な高温状態だ。
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世界気象機関(WMO)によると、南極の気温は過去50年で約3度上昇し、南極の氷が溶けるスピードは1992~2017年の間にほぼ5倍も速まった。

温暖化は南極大陸の氷だけではなく、動物相にも影響を与えている。過去50年間で南極に生息するペンギンの個体数は半数以上減少した。これは、ペンギンは海氷に棲むオキアミを主食とするが、その住処である氷が消失していることと関係する。このように他の動物の生息環境も変わり始めていることが、ペンギンの生活習慣を乱すことにつながっている。

オランダの写真家フランス・ランティング氏は先日、自身のインスタグラムのアカウントで、雪や氷が解け、地面が現れた南極大陸に立つ泥だらけのペンギンの赤ちゃんの写真を投稿した。映像撮影家のクリス・エックストローム氏も泥水の中で震えるペンギンの赤ちゃんの動画をインスタグラムで公開している。

「見たことないものをどうやって心配できる?」

南極では、溶けた氷からすでに川が形成され始めている。1月末、その川で泳いだのが、過酷な環境での水泳にチャレンジする英国のルイス・ピュー氏。同氏はツイッターで「この地域での氷が急速に溶けているのを目の当たりにし、私は、私たちが今、気候変動の非常事態に直面していることを確信した」と自身が泳いた写真とともにツイートした。

ピュー氏はモスクワで行われた記者会見で、この問題への関心を引くためには印象的な水泳チャレンジが必要だったと説明した。

「氷から流れ出た水が、何世紀もかけて形成した氷河を両断し、大きな川になっていくのをみると、問題の大きさに気づくだろう。私は南極の環境を守ると固く決意しているが、ツイートするだけではうまくいかない。南極が適切に守られなかった原因の一つは、世界の指導者たちが実際に南極に行かなかったからだ。今まで見たことないものをどうやって心配できるだろうか? 私たちがせねばらないことは、彼らが南極に行き、その目で確認するように仕向けることだ。もし指導者たちが南極の現状を目の当たりにすれば、心配して夜も眠れなくなるだろう。私たちが各地で水泳に挑戦しているのはまさにこのアクションを起こさせるためだ」

氷が溶けているのは南極だけではない

ロシア地理研究所、雪氷学部門の主任研究員アンドレイ・グラゾフスキー氏によると、世界の海面水位は年間で2~3ミリ上昇しているが、これは南極だけではなく、世界すべての氷河が溶けていることに起因する。グラゾフスキー氏は、スプートニクの取材に対し以下のように述べている。

「2019年9月に発表された国連の気候変動に関する政府間パネルの報告書によると、2006~2015年の10年間で、グリーンランドでは毎年約2800億トンの氷が溶けだした。南極では1500億トン、その他の氷河では2200億トンの氷が消失している。

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研究者らは南極の棚氷が全てなくなってしまうかどうかを判断するための十分なデータをまだ手にしていない。しかしそれが現実になる恐れはある。南極大陸の西側では融解はすでに始まっている。一方、東側では今のところ氷と雪の量は消失量より上回っている。

氷の融解プロセスは逆戻りできるのか、もはや後戻りできない段階に来てしまったのか、これを見極めるための研究はまだ必要だ。あまり言われていないが、実は高地の氷も減ってきており、これが山岳地帯に住む人々の水不足問題につながる恐れもある。」

世界自然保護基金の「気候とエネルギー分野」プログラムの責任者、アレクセイ・ココリン氏は、21世紀初頭から見られている氷河の融解と世界の海洋の温暖化のプロセスが、取り返しのつかない結果に至る恐れがあると推測している。

ココリン氏が指摘するのは海面上昇が人間の生活に及ぼす影響だ。

「海面が1メートル上昇すると、小さな島や沿岸地域に住む人々は大きな問題を抱えることになる。これは低地沿岸部に住む6億8000万人、小さな島に住む6500万人の人間に関わりのある問題だ。現時点では大惨事は起きていないが、22世紀には事態はもっと深刻になるかもしれない。」

世界経済フォーラムは毎年世界で今後起こり得るリスクを発表している。2020年1月に公表された「グローバルリスク報告書2020」で、気候変動と環境問題は、今後十年間人類が取り組むべき主要な課題として指摘されている。

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