このセミナーは、日本センター、ロシア経済発展省の傘下組織である連邦人材センター、日本大使館の共催で行われた。
日本からの特別ゲストとして雪国観光圏ブランドマネージャーのフジノ ケン氏が招かれ、「雪国観光圏が進めた地域連携DMOによるブランド戦略」と題した講座が行われた。フジノ氏は、日本の3県7市町村が連携し観光地としてのブランドを確立した成功例を挙げ、観光と文化の連携や、情報をターゲットに適切に届ける重要性について述べた。参加者は熱心に耳を傾けていた。
ロシア側からは、モスクワの北に位置するトヴェリ州から、レクリエーション施設の発展や、起業家や中小企業のための一元化窓口「マイ・ビジネス」のサービス拡充について、地方創生の事例が報告された。
タタルスタン共和国・カザンで私立病院のマネジメントを行なっているレギナ・ガブサビロワさんは、2018年12月、カイゼン(サービス業)の訪日研修に参加した。診察室にある消耗品の購入や補充、混雑時に振替可能な仕事を他部署に回す仕組み、予約システムなど、様々な分野でカイゼンを実施している。
ガブザビロワさんが研修で最も役に立ったと話すのは、東京の老舗バッグメーカー、ヤマト屋の訪問だ。生産のプロセス管理、品質の維持、製造現場の組織方法など、細かいところまで直接、納得いくまで質問することができた。
サマーラ州で警備会社「エリート・セキュリティ」を経営しているエドアルド・ニコラエフさんは、昨年9月にカイゼンをテーマにした訪日研修に参加した。警備会社の主要クライアントであるGMアフトワズなどの自動車工場や、ロシアに進出しているアメリカのメーカーでは、カイゼンが当たり前に行われている。警備会社は、クライアントの求めるサービスレベルに応え続ける必要があるのだ。
ニコラエフさんは「カイゼンとは仕事のシステムではなく、人生、生活のシステムだ」と結論づけた。そう思ったのは、オフィス家具や設備を扱う「イトーキ」を訪問したためだ。ニコラエフさんは、空間の使い方や、人はどのように働くべきかというアプローチ、今日はどんな仕事をするのか、それによって働く場所が選べ、完全にその人にとって快適な環境で仕事ができるようにする工夫に、大いに感銘を受けた。
ニコラエフさん「イトーキに行けたことは、警備の仕事と直接関係はなくても、意気を奮い立たせてくれるものでした。研修で最も大事なのは、何かの課題に対して、具体的な知識や答えを得ることではないと思います。日本の経験をそのままコピーして、適用するということはできないからです。しかしカイゼンがどのように働くものか基本的な原則がわかるようになれば、それをロシアで応用して、結果を得ることができるはずです。」
フォローアップセミナーは、ロシア各地に散らばる研修仲間が再会し、それぞれが取り組むビジネスのモチベーションを上げる格好の機会となっている。この日も約100人が集まり、旧交を温めた。