台湾とオーストラリアの研究者らは、世界中から集められた新型コロナウイルスのサンプル106個の遺伝子構造を解析した。このサンプルの内訳は米国のものが54個、中国が35個、スペインが3個、ブラジルが2個、オーストラリア、フィンランド、インド、イタリア、ネパール、韓国、スウェーデンから各1個ずつ。
研究者らは、この106個の新型コロナウイルスと2002〜2003年に流行した39個のSARSコロナウイルスのゲノム配列を比較した。
その結果、新型コロナウイルスはSARSよりもはるかに安定性があり、変異頻度が少ないことが明らかになった。また、気道感染を引き起こすウイルスよりも安定性が高い。
論文の著者らはこの安定性に着目し、新型コロナウイルスのワクチンに効果が持てると期待している。
「新型コロナウイルスのゲノムに比較的安定性があるということは、この流行に対処するための良い指標になる。なぜならは突然変異の種類が少ないということはワクチンや抗ウイルス薬の開発が迅速に進むと期待が持てるからだ。」
研究者らは、発見された変異種は人間にとって危険性が低く、健康な細胞に付着するこのウイルスのタンパク質は変異前後で変化していないと指摘している。まさにこれらのタンパク質が、開発中の多くのワクチンの潜在的なターゲットとなっている。
研究者らはその例として、季節性インフルエンザをあげている。このウイルスにはほぼ毎年、前年の予防接種が効かない変異種が出現する。
論文の著者らは、新型コロナウイルスが世界中で急速に広がり続け、より多くのゲノムデータが蓄積されていく中、このウイルスの進化と突然変異の過程を注意深く観察する必要があると指摘している。研究者らは新型コロナウイルスの変異率が比較的低いことを確認したが、すでに新たな変異種が出現していることも証明している。