スペインの新型コロナウイルス流行は落ち着き始めている。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者数と死者数の曲線はゼロに向かっているのだ。ただひとつ依然として上昇を続けているのが医療関係者の感染者数だ。4月21日、スペイン政府はその原因が医師や看護師を守るための医療資材の不足にあることを認めた。
中国製の不良品マスク
4月21日、El Pais紙は、スペインで1000人以上の医療関係者が隔離されており、さらに数千人が新型コロナウイルスの検査を受けなければならない状況にあると伝えた。病院に不良品の医療用マスクが納品されていたのだ。
スペイン政府は中国メーカーGarry Galaxyから 35万~40万枚(枚数に関する正確なデータはない)のマスクを購入し、4月初めにはこれらのマスクが全国各地に送られた。4月17日にマスクの不良が発覚し、政府はマスク回収の命令を出した。しかし、回収は困難を極めた。
というのは、El Pais紙が伝えたところによると、マスクが病院に納品されたのはイースターの週だったのだ。この週、スペイン人の多くは、医療関係者も含め、休暇に入っていた。そのため、マスクの員数確認が通常のように入念に行われなかったのだ。何人が不良品のマスクを着用したのかを明らかにするのも困難だった。これらのマスクは、不良が発覚するまでの間、10日間も使用されていたからである。スペイン看護師協会のジェネラル・アドバイザーによると、防護機能が10分しか続かないマスクを着用して1日中働いていた人もいるという。
検査キットが使いものにならない?それは自分のせいだ
このマスク事件は、スペインに不良品の医療用品が納入された初めてのケースではない。3月下旬、マスコミは、スペイン政府が中国から購入した迅速検査キットが機能していないと報じ始めた。そのすぐ後、このキットの有効性を調べていた複数の研究所が、SARS-Cov-2ウイルス検出精度が80%と謳っているこの検査キットの精度はわずか30%であると発表した。後に、このことはスペイン保健省でも確認された。
発注された検査キット64万個のうち、最初にスペインに納入されたロットは8000個で、その後さらに5000個が納入された。不良の発覚後、最初のロットは中国に返品され、Bioeasy社は交換を約束した。
4月21日、El Pais紙は、新たに納品された検査キットも不良品だったと伝えた。問題は依然と同様で、検出精度が30%に留まるというものだった。スペイン政府はすべてのロットの受取を拒否し、支払った代金が返金されることを期待している。
人工呼吸器は渡さない
スペインへの医療機器の納入に関する悲惨なストーリーはこれでは終わらない。4月初め、スペインのナバラ州とカスティーリャ・ラ・マンチャ州はトルコのメーカーに数百台の人工呼吸器を発注した。中国製の部品が使われた人工呼吸器だ。ところが、全ロットがトルコ政府に押収されてしまった。トルコで新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者数が2万人を超えて以降、医療機器の輸出には保健省の事前承認が必要になったのだ。インディペンデント紙は、トルコは一度に94ヶ国から注文が入ったことで、国内市場で人工呼吸器の急激な不足を感じたと伝えている。
この問題はほどなくして解決した。スペインのアランチャ・ゴンサレス・ラヤ外務大臣がトルコ政府は人工呼吸器を盗んだと非難すると、ロットは発送された。
同じような状況がイスラエルから購入したロットにも発生した。イスラエルでは先日来、国内で人工呼吸器が不足していることから、人工呼吸器の販売を禁じている。スペインはこの禁止の施行前にすでに代金を支払っているにもかかわらず、ロットは結局発送されず、外務大臣の問合せにも回答はないままだ。
このような状況が発生しているのはスペインだけではない。イタリア、トルコ、イギリスも医療機器の「窃盗」を訴えている。検査キットやマスクの不良品はジョージア、チェコ、アメリカ、オランダ、ベルギーなど、多くの国で発覚している。