「植物状態」か「精力的な公務」か 金正恩氏をめぐる不確実な状況の中で日本を待つものとは?

世界中のメディアは、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の指導者、金正恩朝鮮労働党委員長の健康状態が悪化した、または死亡したとするニュースで溢れている。しかし、金氏は「植物状態」という報道に対し、北朝鮮メディアは金氏の「精力的な公務」について報じている。この不確実状況は日本にどのような影響を与えるのか、また、北朝鮮で政権交代が生じた場合、西側への方向転換は起こるのかどうか、通信社「スプートニク」が専門家に意見を聞いた。
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国際関係の専門家で日本研究者であるモスクワ国立国際関係大学のドミトリー・ストレリツォフ教授によれば、金正恩氏が死亡したとしても、北朝鮮情勢に影響を与えることができないことを日本政府はよく理解している。ストレリツォフ氏は「日本政府が持っているのは、基本的には観測的な関心だ。もし指導者の交代に関連して混乱が始まるとしても、北朝鮮の問題に干渉するようなことはない。いずれにせよ、北朝鮮から生じる危険性により、北朝鮮の状況に圧力を加えることは、日本政府が最も望まないことである」。

ストレリツォフ氏は、日本は最近まで北朝鮮のミサイル・核計画の交渉プロセスから除外されていると感じていたと指摘する。

安倍首相と金正恩氏の会談実施に向けた日本指導部独自の試みは今のところ成功していない。そのため日本は、北朝鮮に対する影響力がないことから、北朝鮮との問題解決については第3国、特に米国と中国を頼りにしている。 

ロシア科学アカデミー東洋学研究所朝鮮・モンゴル部門のアレクサンドル・ボロンツォフ部門長は、事態のあらゆる進展に際して、北朝鮮の政治方針の早急な変更を期待することはあまりに楽観的な予想だとの考えを示し、次のように語っている―

北朝鮮国内で金正恩氏の「死亡映像」拡散
「私は西側への方向転換が急激に生じることはないと考えている。北朝鮮のエリートは自分たちの将来に対していかなる幻想も抱いてはいない。米国とその同盟国の共通の方針は、もっぱら体制の一掃または完全な降伏に向けられているからだ。ドイツのシナリオに沿った2つの朝鮮の統合、つまり南による北の吸収がまさにそれだ。金正恩氏の側近は刑事訴訟を非常に恐れている。これが金氏が突然去った場合に彼らが単純にパニックに陥ることができない理由の一つだ。北朝鮮のエリートは、その反対に結束し、これまでの国の方針を維持するために新たな指導者を選出した。後継者となる可能性のある金氏の妹の金与正氏が、最近多くの重要な行事に関わり、政治局の役員候補に加わったのは偶然ではない。これは北朝鮮にとっては十分に論理的なことだ。なぜなら権力を掌握しているのは今も金一族だからだ」。 

なお、世界経済国際関係研究所、日本経済政治セクターを率いるヴィターリー・シュヴィコ氏は、現在の状況におけるこのような継承性は日本政府にとってはもっぱら好都合だとの考えを示し、次のように語っている―

「北朝鮮体制の自由化は、現在、日本にとって切迫した問題ではない。不確実な時期には、以前と同じようになるのか、または悪化するのかという他のことの方が日本にとってははるかに重要だ。日本の指導部にとって最悪のシナリオは、北朝鮮における権力闘争だ。日本はミサイル・核計画をさらに積極的に行う北朝鮮の将軍が同国で権力の座につく可能性を懸念している。金正恩氏は、もちろん時折、感情の起伏が激しい人間のような振る舞いを見せたが、全体的には合理的に考えていた」。

以前、米国の情報分析サイト「38ノース」は、北朝鮮の高級リゾート近郊で金委員長の列車を発見した。

また、韓国の国民大学校の職員でコリア学研究者のアンドレイ・ラニコフ氏は、2014年に金正恩氏は40日にわたって公の場に姿を現さなかったことがあると指摘した。


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