日本 新型戦闘機を国内メーカー限定で自力製造へ 米国との共同開発は何が不都合なのか

日本の防衛省は新型戦闘機(Х-3 または F-Xと表記されることが多い)のプロジェクト実現に国内のメーカー1社を選ぶという決め、周囲を驚かせた。新型機は2030年代初頭に工場生産開始予定だが、胴体を製造するメーカー選びは2021年1月にも行われるという情報もある。
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戦闘機の開発、製造では日本はこれまでは米国と協力して行っていた。今回、米国の参加に走り寄らない決定がとられた理由は3つある。2つは政治的理由で、1つは技術上の理由だ。

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第1の政治上の理由の背景には一連の出来事がある。一例として挙げられるのがF-35プログラムからのトルコの撤退。その代わりトルコはロシアから対空防衛システムS-400を購入した。そしてトランプ米大統領は日本に思いやり予算(米軍駐留経費)の増額を要求。この事実を突きつけられた日本政府は一番の同盟国との関係もいつ何時どう変わるかわからないことを思い知らされた。関係の急変の可能性はそう高くはないが、起きた時の危険性は極めて大きく、防衛システムの主要な要素を失いかねない。そうした要素の中でも軍用機は最重要の位置を占める。

最新機のF-35 の供給には制限がある。ユニット、部材の一部は機密で、日本の専門家には踏み入ることができない。こうした部分に問題が生じた場合は修理には米国に送らねばならない。今の時点では両国関係は良好で特に問題は生じていないが、対米関係が突如悪化した場合は大変だ。

そうなると日本は旧弊したF-2 戦闘機だけで中国人民解放軍と面と向かい合うという事態になる。こうしたカタストロフィー的事態はそれが起きる確率がいくら低いとはいえ、なんとしても回避せねばならない。つまり自前の戦闘機をそれまでに間に合わせ、製造しておく必要性があるというわけだ。

もうひとつの政治的理由は日本は昨今、同盟国米国のアジア太平洋地域における諸国陣営の中心になりつつあるということだ。日本に最大の期待をかけているのはオーストラリアだが、地域軍事陣営を率いる立場になるには、自国の軍備も強化し、同盟国の軍備にも当たらねばならない。軍事機器の生産を外国のライセンスや輸入部材に頼っていてはあまりに制限が大きい。生産台数も制限される。F-2は40%が米国製部材で構成されているために生産はサプライヤーの間の供給合意に制限されてしまう。輸出、リニューアルも制限を受ける。日本が自国、同盟国のニーズで軍用機を生産、またはグレードアップするには、開発も生産も自前でやる必要があるのだ。

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さて技術上の理由だが、多方面が加わる形の協力は通常、なかなか進展しない。F-2製造は1987年10月に開始され、初飛行が行われたのは実に1995年10月。1996年に組み立て開始で第1機の軍への供給が叶ったのは2000年で、最後の供給は2011年だった。開発開始から第1機目が軍に装備されるまでになんと13年もかかり、プログラム自体は24年を経た。共同開発に4か国が参加したユーロファイター タイフーンなどは1983年から2003年と、その上をいく。つまり工場生産に至るまでに20年の歳月がかかっており、生産期間は17年の長きにわたっている。単一でプロジェクトを組織したほうが作業はずっと速く進む。

防衛省が胴体のメーカーを2021年にも選ぼうとしていることから考えると、少しでも早く工場生産を開始するため、飛行機の開発、試験期間を最短に抑えることに主眼を置いていることがうかがえる。胴体製造を担当するメーカーは空気力学試験用、耐久性の統計的、力学的試験用の模型を作り、工場生産に入る前の試験機用の胴体製造に取り掛かれることができる。また前もって工場生産用の部品の予備を作る可能性もある。これにより開発から生産までのプロセスは短縮化できる。時間は大きくものを言う。中国もまた自国製の航空機のパワー、技術レベルを拡大しているからだ。

米国がいかに日本に米軍駐留経費の負担を拡大しているかについてのスプートニクの記事はここからお読みいただけます。

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