キスタノフ氏は次のように語る。
「『自由で開かれたインド太平洋地域』の実現に向けて中核となるのは中国に積極的に対抗する米国、日本、豪、インドの4カ国同盟になるはずだ。しかしインドはよりバランスの取れた立場をとっている。インドが米国、日本との3カ国海上合同演習「マラバル」に参加する一方、日本も中国と経済的に密接に関係しており、中国に対する日本の立場は極めて慎重だ。日本は南シナ海と東シナ海における中国の進出を危惧しているが、同時に中国が強力な軍備をもつ隣国というだけでなく、世界2位の経済であることも考慮しないわけにはいかない。」
安倍前首相は中国を抑えつつ、中国との関係改善を図りバランスをとろうとした。日中関係は新たな時代を迎えたと宣言したほどだ。安倍氏の後継者である菅首相も、ほぼ確実にこのバランス路線を継続するだろう。それと同時に今日の日米経済関係は互恵的であるとは言えないとキスタノフ氏は語る。
「トランプ大統領は依然として米日貿易の赤字に不満を抱いており、東京に対して解消する措置を求めている。安倍氏は環太平洋パートナーシップ(TPP)を通じて日本経済を後押しすることを期待していたが、トランプ氏政権の米国は同協定を脱退し、日米関係を二国間フォーマットにシフトさせた。その際、東京は経済面で米国に大きく譲歩したが、日本車に対する関税の引き下げは果たせなかった。」
そのほか、トランプ大統領は在日米軍の駐留経費の大幅な引き上げを引き続き求めるだろう。この問題は安倍政権で発生したが、解決は菅首相の手に委ねられた。菅首相が「トランプの教え」を踏まえ、同大統領にうまく対抗できるかどうかは大きな疑問だとキスタノフ氏は考えている。
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