バイデン氏に投票するのではなく、トランプ氏に反対:トランプ大統領の再選を妨げるものは何か

ドナルド・トランプ米大統領の1期目は、弾劾、新型コロナウイルスの大流行、そして経済危機の始まりや「ブラック・ライヴズ・マター(Black Lives Matter、BLM)」運動など、一般の米国人の生活を揺り動かし、大統領の地位を揺るがした多くの出来事が起こった。この間、トランプ大統領の支持率は一度ならず過去最低を記録した。そして11月の米大統領選挙の数週間前に実施された世論調査の支持率で、トランプ氏はライバルにリードを許している。トランプ氏は低い支持率に反して選挙で勝てるのだろうか?
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神聖な数字

米国人にとって大統領の支持率は単なる数字ではない。大統領のすべての成功と失敗が支持率に反映されている。支持率に基づいて選挙結果が予想され、大統領の仕事ぶりが評価され、前任者と比較される。

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米国の歴代大統領の中で信じられないほど高い支持率を得た人物が2人いる。第43代米国大統領のジョージ・W・ブッシュ氏は2001年9月11日の米国同時多発テロ事件の後、不屈の姿勢を発揮し、90%の支持率を獲得した。第41代米国大統領のジョージ・H・W・ブッシュ氏は、米軍がサダム・フセイン率いるイラク軍から最短期間かつ最小限の損失でクウェートを解放した「砂漠の嵐作戦 」が成功裏に終了した後、89%の支持率を得た。

一方、ジョージ・W・ブッシュ氏は、トランプ大統領の最低支持率からもほど遠い最低の支持率を記録した。経済危機の勃発と米軍のイラク駐留に対する不満により、2期目が終了する直前の2008年10月に支持率は25%まで低下した。

しかし、トランプ大統領は、就任直後から歴代大統領の記録を更新した。トランプ氏の就任100日の支持率は、1945年以来の最低を記録した。支持率は42%、不支持率は53%だった。なお、前任者のバラク・オバマ氏の就任後の支持率は約67%だった。

その後数年間で、トランプ大統領の支持率は一度ならず最低を更新した。トランプ氏の支持率が過去最低の33%を記録したのは2017年10月。そして2018年6月、シンガポールで実施された北朝鮮の金正恩委員長との会談を背景に、支持率は45%まで上昇した。トランプ氏が45%の支持率を獲得したのは、2017年1月に就任直後の支持率として歴代最低の45%を記録した後、2回目。

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2020年春、トランプ氏の支持率は2017年と同じ低水準(42%)まで低下した。トランプ大統領にとって顕著な問題となったのは、新型コロナウイルスの流行だ。新型コロナは特に米国で深刻な状況となった。ライバルだけでなく多くの有権者も、猛威を振るった新型コロナの責任は国民の健康を犠牲にして経済開放を急いだ大統領にあると考えていることがわかった。

ナビゲーター・リサーチ(Navigator Research)の世論調査によると、トランプ大統領の新型コロナ対策について、回答者の54%が不十分だと考えており、成功と考えているのはわずか33%だった。人種差別への抗議をめぐっても良い結果は出ていない。抗議活動へのトランプ氏の反応を否定的にみている人は60%、肯定的にみている人は37%だった。世論調査は別の傾向も示している。未来に確信を持っている米国人の数が減少している。回答者の75%が、米国は間違った方向に進んでいると考えている。状況に満足している人の割合は、4月の31%から過去数週間で3分の1の12%まで減少した。


前回の米大統領選挙が実施された2016年の世論調査でも、トランプ氏はライバルだったヒラリー・クリントン氏にリードされていたが、いずれにせよ、トランプ氏が勝利した。しかし、なぜ今回はあらゆることが前回の選挙とは異なっているのか?

世論調査によると、トランプ大統領は主要ライバルのジョー・バイデン氏にリードを許している。前回の選挙でトランプ氏が公約に掲げた経済再生や雇用創出は、新型コロナによる規制によって打ち砕かれた。トランプ氏は1月から3月中旬まで新型コロナウイルス感染症に懐疑的な立場を示し、民主党が問題の規模を大きくしていると主張した。

新型コロナに関するトランプ氏の考えに明確な変化があったものの、国民の多くは悲劇を防ぐ対策があまりにも不十分だったと考えている。トランプ氏は10月、「米国はコロナとともに生きることを学ばなければならない」と述べた。

このフレーズを10月23日の討論会でライバルのバイデン氏が利用し、「コロナで米国は死ぬことを学んでいる」と指摘した。バイデン氏は、トランプ氏の新型コロナの流行に対するあまりにも軽薄な態度を繰り返し非難し、これは有名人を含む米国人の間でバイデン氏が人気を集めているもう一つの理由となった。

映画『アベンジャーズ』シリーズでハルクを演じたマーク・ラファロ、テレビドラマ『チャームド~魔女3姉妹~』のスター、アリッサ・ミラノ、ラッパーのカーディ・B、米国のコメディアン、ジム・キャリー、若者たちの代弁者、ビリー・アイリッシュ、女優シャロン・ストーンなどがバイデン氏に投票するよう呼び掛けている。

ただ例外もある。アーティストたちの間ではトランプ氏を批判して民主党候補を支持するのが一般的だが、一部のスターはトランプ大統領を支持している。女優アンジェリーナ・ジョリーの父親で俳優のジョン・ヴォイトは、米大統領選候補者討論会の直前に米国人へのビデオメッセージを録画し、民主党が嘘の噂と宣伝を広めたと非難した。ヴォイト氏は、米国の偉大さを維持できるのは神(祈らなければならないことを意味している)とトランプ氏(同氏に投票しなければならない)だけだとの確信を示している。

一方、前回の大統領選挙でもそうだったように、世論調査には弱点がある。トランプ氏の支持者は、そのライバルとは異なり、自分の立場を常に公に表明する用意があるわけではない。

USAトゥデイの世論調査によると、バイデン氏側に立つ有権者は、バイデン氏を害悪がより少ない選択肢としてみなす傾向がある。つまり、有権者はバイデン氏に投票するのではなく、トランプ氏の対抗馬に投票するということだ。

バイデン氏に投票するつもりで同氏を熱狂的に支持している人の割合はわずか27%。一方、トランプ氏を熱狂的に支持する有権者はその2倍。トランプ氏の支持者の2人に1人は、政治家としてのトランプ氏を極めて高く評価しており、このような人たちは必ず投票所を訪れて投票する。


ネット選挙と郵便投票のトレンド

2019年夏、トランプ大統領は「Keep America Great(米国を偉大なままに)」をスローガンとし、再選に向けた選挙運動の開始を正式に宣言、受け入れ移民を削減し、米国経済を支援する政策を継続すると約束した。当時トランプ氏は、「米国を壊滅」することを望んでいるとして民主党を批判し、ロシアおよび中国との関係における厳しさを自身の手柄とした。

一方、2020年、これらの問題は重要性が低下しただけでなく、米国内の新型コロナウイルスによる20万人以上の死者および経済危機の始まりと並んで一段と解決が難しくなったように思われる。米国は今も新型コロナの感染者数および死者数が世界で最も多い。

トランプ大統領自身もコロナに感染したが、新型コロナを恐れるなと呼びかけた

トランプ大統領のコロナ感染は大統領選にどう影響するのか?
先日トランプ大統領は、米国製の新型コロナウイルスに対するワクチン供給について発言した。トランプ氏は、これによって国民からさらなる支持を得ることを期待していたのかもしれない。一方、今回の選挙の違いは、豊富な議題に加えて、国民の大多数(約4700万人の米国人)がすでに期日前投票を済ませたことだ。これは4年前の選挙の投票者の3分の1に値する。したがって、最後の瞬間に意見が変わる可能性のある有権者の数はより少なくなっている。

これまでオンライン投票が使用されるのは、例えば、外国にいる米国人のためなど稀なケースだったが、現在は新型コロナウイルスの流行や安全対策としてその役割が大きく高まっている。一方、これは公正な選挙にとって有益なのだろうか?

ビジネスインサイダーによると、サイバーセキュリティの研究者らは、米国のオンライン投票システムに一連の脆弱性を発見した。選挙委員会にできるだけ気づかれないようにして国民の投票が偽造される可能性があるという。また、別の新しい投票方法もある。カリフォルニア州などの複数の州で安全対策のために採用された郵便投票だ。なお、トランプ大統領は郵便投票について、不正につながると考えている。トランプ氏はツイッターで、郵便投票を「いかさま」と呼び、メールボックスを開いて投票用紙を偽造できると指摘した。

米大統領選挙は11月3日に実施され、米国の大統領と副大統領、下院議員435人全員と上院議員の3分の1、13の州および準州の知事が選出される。

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