トランプVSツイッター 史上最大の対決は何をもたらすか

© AP Photo / Evan Vucciトランプ大統領
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米国大統領の任期4年間で、ドナルド・トランプ氏は、メキシコからの移民や人種差別、フェミニズム、ジャーナリスト、そしてソーシャルネットと、実に多くの問題で否定的な発言を繰り返してきた。 驚いたことに、トランプ大統領のもっとも「嫌いな」SNSは彼のフォロワーがもっとも多いツイッターだという。SNSに対するトランプ大統領の態度がどう変わっていったか、そして、SNSに対しどのような措置を取ろうとしているのか、通信社「スプートニク」が解説を試みた。

何が起こったのか

5月末、トランプ大統領は、SNSが「保守主義者たちの意見を抑え込もう」とし続けるのであれば、米国のSNSの運営により厳しい規制を行うと怒りを露わに発表した。同大統領がこうした発表を行ったのは、ツイッターに投稿した彼のいくつかの発言に特別なマークが付けられた後のことだった。このマークは、コメントの中に不確実な情報が含まれている恐れ があることから、事実確認するよう読者に警告したものだった。

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ドナルド・トランプ大統領は報復的な行動に着手し、「オンラインの検閲を予防」する大統領令に署名。これは通信品位法第230条の改正にむけたものだ。同法230条は、インターネットプラットフォームにユーザーのコンテンツに対する責任を免責する一方で、プラットフォームがコンテンツを規制することを認めている。

署名後すぐにトランプ大統領は、SNSのツイッターを閉鎖するつもりであると記者らに明らかにした。

トランプ大統領は、「私は、これを(編集注:ツイッター)を閉鎖することもできる。しかし、そのためには法的な手続きを経る必要がある。法的に閉鎖が可能なのであれば、私はそうする」と語った。

SNSが有す「コントロールを逸脱した権力」

トランプ大統領は、SNSには「管理不能な権力」が存在するとしてこれを非難。米国の言論の自由の理想を引用し、「私たちは、米国人がインターネット上で共有することができる意見を、特定のインターネットプラットフォームがその手で選択することを許すわけにはいかない」と表明した。「こうした実践は、本質的に反米、そして反民主主義だ。影響力のある大手SNS企業が自分の見解に反した意見の検閲を行うなら、それは危険な力の行使だ。彼らは意見表明の場として機能することを止め、コンテンツを制作者として捉えられねばならない」と指摘した。

世界的な大手SNSの代表らは、大統領令に否定的な反応を示した。Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグCEOは、SNSに対する米国の管理の厳格化に反対を表明した。ザッカーバーグ氏はFOXニュースのインタビューで、「何がなされようとしてるのか理解する必要がある。大体において、当局の決定はなんらかのプラットフォームを検閲することにある。(略)私には正しい対応だとは思えない」と語っている。

ツイッターの創業者ジャック・ドーシーCEOは、ツイッターは不確実な情報を含むおそれがある発信に対し特別なマーキングを続けていくと表明。しかし、同氏は、ツイッターは真実の判定者ではなりえないが、当面、サイトはランダムにツイートを選択し、それに対してマーキングを行っていくと語っている。

​ツイッターは2020年2月、フェイク情報対策の新たな方法を試験的に始めた。それはツィッターが不確実と判断したツィート情報に警告を表示するという方法だった。

2020年3月、ツイッターははじめて、政治的動画を「操作」と指摘した。動画は、米大統領への支援を公に表明したとされる民主党員が監修を行ったものだった。

現在、ツイッターはグーグルやFacebookと一緒に、言論の自由に関する米国憲法の第1修正を基盤としたトランプ氏の大統領令に対し、集団訴訟を検討している。

トランプ大統領は何を決定し、大統領令はSNSにどう影響するか

大統領令は、米国の通信品位法第230条を失効させることになりかねない。SNSと技術系企業は同条にもとづき、ユーザーらが創作したコンテンツに対する責任を免除されてきた。同条は、中傷および名誉と尊厳の保護に関する訴訟から企業を保護し、また、自社の規定にもとづきコンテンツをモデレートすることを可能にしていたのだ。

大統領令にしたがい、60日間、連邦通信委員会は第230条の応用について再審議を行う。取引委員会は、SNSが政治的中立に違反している場合、SNSへの起訴を検討する。そのための特別会議も設けられる。

中立性が欠けていると判断され、検閲で起訴された場合、SNSは連邦との間に広告やマーケティングの契約を結ぶ権利を失う。

第230条は、ProdigyのSNSプラットフォームでのスキャンダルの後に制定された。1990年代中頃にProdigy は法廷の場で裁かれ、ユーザーの発信に対して法的責任が負うとの判決がでた。放送局CNBCは、同条が法的責任からSNS企業を保護し、フェイスブックやツイッターが発展する力となったと指摘する。

この法律は、インターネット企業に不適切な投稿(たとえばテロやポルノに関するコンテンツ)のモデレートを行う権利を保証し、しかも、ユーザーが書きこんだ各メッセージに対する責任を免除する。

さもなくば企業はSNSへの公表前にそれぞれのメッセージや動画、他の資料を確認するはめになっただろう。そうなればモデレートへの支出は増加し、その結果、発表のタイミングが遅れ、瞬時に発表されることはできなくなったはずだ。

有権者の注目争いがツイッターとの対立に転換

2015年、大統領選挙が始まった当初、トランプ大統領はSNSについて好意的な態度を示していた。トランプ氏は、自分との対立の絶えない記者たちとSNSを対比し、仲介なしに有権者らに訴えることができることを喜んだ。米国大統領への就任後、トランプ大統領のフォロワー数は著しく増加した。

米国のピュー研究所の調査で、ツイッターを利用している米国人の約20%がドナルド・トランプ大統領のアカウントをフォローしていることが明るみになった。トランプ大統領のフォロワーを対象としたアンケート調査で、彼らの半数以上(54%)が同大統領の政治方針に賛同していることがわかった。

同時に、トランプ大統領は、大統領に就任はしたが、ネットの世界では国民にとってもっとも人気のある米国大統領とはならなかった。バラク・オバマ前大統領はのフォロワー数はトランプ大統領より、ツイッターで約4000万人、インスタグラムで約900万人上回っている。ツイッターのアカウントを持つ米国国民の成人人口の26%がオバマ氏をフォローしている。

原油価格や証券に影響を与えるツイッター

それでも現職の米国大統領のツイッターは、実質的な影響力を持っている。メディアよりも早く、まずツイッターで大統領の多くの決定が発表されるからだ。

米国の銀行JPモルガン・チェースのアナリストらは、どのような地位がもっとも金融市場に影響を与えているかという調査を行った。その結果、「中国」「10億」「商品」といったワードを含めたドナルド・トランプ大統領のツイートであることが判明した。このため彼らは特別なインデックスを作成し、米国国債の利回りがトランプ大統領のツイート後の5分間でどう変化するか追跡を行った。その結果、米国大統領の約4000件のツイートのうち146件が市場に、なによりも米国国債の利回りに影響を与えたことが明らかとなった。

時には、トランプ大統領のツイートは世界中の市場にまで影響を与えている。2019年8月にトランプ氏の発表した、米国とアジアのインデックスの下落を引き起こした中国製品に対する新たな関税の導入もその一例。2月にはトランプ大統領のツイートが原油価格の3%下落のきっかけとなった。

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